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28話 不幸な新領主 石に躓き渇望する品が売り切れる程度の不幸

「助けて頂き感謝する。私はシリス。貴方方の名を伺っても?」


「俺はアクイ。こっちはユウだ。依頼帰りに鉢会えて良かった」


「ははは!その通りだ。王からこの先のシュッダの街の新たな領主に任命されて王都から向かう途中だったのだが、見ての通りあの魔物に襲われてな。改めて感謝する。しかし今は礼を差し上げれる物は無くてな、礼は後で貴方方に差し上げるとしよう」


感謝しているけれど、周りの甲冑を着た人間達から怒りの色が込み上がっている。どうしてだろう……?


私は森にいた甲冑を着た人間以外の人間の損傷を治しているけれど、甲冑を着た人間達の視線が完全にシリスと名乗った人間に向けられている。


「お前達!気を取り直しシュッダの街へ向か――へぶっ!」


あ、足元の石に躓いて盛大に顔から転んだ。


「あいててて……驚かせてすまない。私は生まれつき、少々不運でな。こんな事態に遭遇することもあれば、一時の不注意で今のように転んでしまうことが良くあるのだ」


土煙がこびりつき生傷のついた顔でそう言った。




取り敢えず助けたから私と悪意の化身は放置したスライムの核を回収しに戻る。


あの人間達とは別れ、ここから直線距離の最短距離を森の中進む。


……馬車が動き、進み、人間の……シリスと名乗った人間に対し甲冑を着た人間の怒号が聞こえる。


「シリス様!何故あのようなことをしたのですか!我々が今ここにいるのは貴方様を守る為で、見ず知らずの者を貴方様が守る必要は無いんですよ!」


「お前達が私に馬車から出るなと言ったから出なかっただけで、巻き込まれた者達を見捨てるなとは言われてない。見ず知らずの者を巻き込むわけには行かないだろう?」


「しかし!シリス様が今生きているのは!彼等がオーガを倒すほどの実力者であったからです!今後は何があろうと自らを犠牲にしようとしないで下さい!」


その怒号は幾度もシリスと名乗った人間に放たれたが、甲冑を着た人間が喋り疲れ力尽き、やがて人間の声は聞こえなくなった。




スライムの核を回収して、シュッダの街に戻って、冒険者ギルドに行って、回収したスライムの核を全部渡し、依頼達成して報酬を受け取った。


シュッダの街からは、まだ新領主に関する声は無い。


時刻は昼頃。


化身である私には食事は必要ない。だけれど新たな依頼を探す私と悪意の化身の前にリンが現れて、一緒に昼食を食べに行こう提案し私の承諾を得ぬままリンに引きずられて……店が立ち並ぶ繁華街の飲食店に連れられた。


悪意の化身はリンの一緒に食事に行こうと言う提案を二つ返事で了承。何故私の返事を聞かずに私が行くことが確定したのだろうか……?悪意の化身が二つ返事する時に俺『達』と言っていたのが原因だろうか?


兎に角……どうしよう……料理や特性ドリンク等、品々がかなり多い。絵は無くて文字だけ。量の大小が分からない。


「そろそろ食べたい物は決まりましたか?」


リンが私にそう聞いた。悪意の化身は既に注文を終わらせ、今にも料理が届きそう……届いた。


……どうしよう……どうしよう……何にしよう……


『1番人気で良いんじゃないか?』


……みかねた悪意の化身が私の思考に直接介入して助け舟を出した。


「ご注文は?」


いつの間に……悪意の化身が勝手に飲食店の中年の従業員を呼んだ。


「……1番のオススメで」


「1番人気のゴールデンシープステーキ了解。女将!ゴールデンシープステーキ1つ!」


「はいよ!」


張り上げた声が響き渡り、厨房にいる人間がそれに応え料理の準備を始めた。




4分間の調理を経て、私がいるテーブルに中年の従業員が肉料理を乗せた木皿を持って来た。


「あんた運が良かったな。これが今日最後のゴールデンシープステーキだ!」


私の目の前に肉を焼いた物体が乗った木皿を置くと、これを持って来た人間が声を張り上げた。


「皆んなぁ!今の聞いたな?!今日のゴールデンシープステーキは売り切れだ!」


その声に反響するように、各自それぞれのテーブルに座る人間から了承と理解の声が響き渡った。


それで……どうしよう……化身には食事は要らな――

「この店1番の人気メニューを頼む!」


飲食店の入り口に1人の人間が入って、この場の全員に聞こえるような声を上げた。


その声に、中年の従業員が申し訳無さそうにその人間の前にやって来た。


「……すまんが、1番人気のゴールデンシープステーキはさっき材料が尽きてな。今は無理だ……いや、そう気を落とさなくても。材料は2日後に仕入れるからそん時に来てくれ」


「そ、そうなのか……」


シリスと名乗った人間。先程シュッダの街の外で出会ったシュッダの街の新領主がいた。


そして従業員の言葉に分かりやすく項垂れた。


ゴールデンシープステーキ……今私の目の前にあるのが手付かずのゴールデンシープステーキ。


どうせ味は感じない。どうせ熱いも冷たいも感じない。だから……


「……食べる?私が注文したあれ」


「あ、貴女は!」




ゴールデンシープステーキ。それをあげたらゆっくりと優雅に食べ始めた。


それにしても何でここにいるんだろう……?新領主と言うのが本当なら多分結構偉いはずだけど。


「いやはや。一度ならず二度目も、助けの手を伸ばして下さり感謝します」


「知り合いですか?」


リンが私と悪意の化身にそう聞くと、悪意の化身がリンに事情と説明を始めた。


「ここには何で?」


私がそう聞くと、シリスと名乗った人間が持っていたナフキンを取り出して口を拭いて口を開いた。


「ああ、それはですね。こう言う場所を私自ら視察しなければ、民の心は分からない。父から言われたことです。その言葉に従い、この街を見て回っています。因みにこの店は結構有名で、私が真っ先にこの店に来た理由の一つです」

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