26話 暴走せし魔道具と山となりしゴミ それと縄に縛られる依頼主
依頼主が何処かに行ったから、ここの片付けと掃除を私と悪意の化身とリンと一緒にやることになった。
ジャバンと名乗った人間が言っていた完成品や試作品を傷つけないようにと言う要望は、リンがその目で判断すると言って、私と悪意の化身はそのことは任せることにした。
私と悪意の化身は取り敢えず、まず家屋の扉周りに乱雑に置かれた物を整理する所から。
持って一箇所に並べて、持って一箇所に並べて……数回繰り返したらすぐに扉の周囲は片付いた。代わりに一箇所に並べた物が軽く山になってる。
「全部……ゴミですね。多分、量的に業者を呼ぶことになりそうです」
ゴミなんだ……それ全部……
そのまま家屋の周囲の物を全部集めて整理したけど、全部リンにゴミと言われた。多くない……?
「ジャバンさんは腕は確かなんですが、よく要らないガラクタを集める趣味がありまして……しかも片付けが苦手で、今まで何度もゴミ屋敷が形成してしまっているんです」
そうなんだ。
取り敢えず、家屋の周りは終わった。
次は中。扉を開いてみると、中には奥に続く人間1人が通るのがやっとの通路と化した物体の壁が構築されていた。
リンの指示で、まずは扉の近くから切り崩す。
「……実用性の無いゴミに、完全に腐ったパンや果物類……ゴミですね」
程なくして、家屋の外にリンにゴミと言われた物体の山が形成された。そして家屋の中は物体が減り空間がかなり広がった。
ある程度広くなったから、家屋のさらに奥に進む。広くなったから悪意の化身とリンも一緒に入って来た。
広くなったけど、まだまだ物体の山は残ってる。だけど、このまま進めて行けば…………鳥?物体の山に突き刺さった鳥の下半身が見えたけど……いや、生命を感じないから鳥の模造品……?
「キィィィ!!」
近付いた瞬間突然大音量の奇声が放たれ、家屋の中で反射し、至近距離で放たれた為か、私の鼓膜が破れた。でもすぐに再生して治った。
私の近くにいたリンは悪意の化身が咄嗟にリンの耳を塞ぎ、奇声の影響は受けていなかった。
代わりに悪意の化身の鼓膜は破れた。すぐに治ったみたいだけど。
鳥の模造品から離れると奇声は止まり、近付くと奇声を発した。
以上のことから、それは一定範囲内に近付くと奇声が発せられる鳥を模した物体であることが分かった。
奇声が発せられる度に悪意の化身によってリンの耳は塞がれ、リンは守られた。
鳥の模造品から奇声を発したのを見たリンは、私達に念の為外に来て下さい、と言いながら家屋の外に出て行った。
私と悪意の化身はそれに従って外に出る。
外に出ると、リンが神妙な面持ちになっていた。
「恐らくですが、あの魔道具は暴走しています。本来魔道具と言うのは、長い長い時間整備しなければ本来の用途から逸脱した不具合を引き起こすのですが……ジャバンさん……魔道具を長時間放置するのは危険だとあれほど……」
あの鳥の模造品についての見解を説明する内にリンが頭を抱えた。聞く限り今回が初めてでは無さそう。
「そうだとして、アレはどうしようか。俺や優は特段問題は無いとして、ただの人間相手だとかなりの被害をもたらす可能性があるが……」
悪意の化身とリンが唸り頭を捻る中、リンが突然何かを閃いたかのように手を叩いた。
「今こそこれを使いましょう。グレイ商会が冒険者ギルドに依頼して手に入れた秘密兵器、無音領域の魔術が施され改良された魔道具。吸音遮断具です!」
あ、この前の大きな生命体が現れた日に受け取ってた依頼の品……
「これは前々から機密の会話を漏らさない為にグレイ商会が注文していた魔道具ですが、エルグさんに頼んで、ユウ様とアクイ様の周囲に化身としての情報を漏らさない為に借りて来ました。今までの言動的に不意に言ってしまいそうで怖かったので……」
そうなの……?
「これさえあれば……本来3mほどの有効範囲を縮小すれば……あの魔道具の声が周囲に漏れることは無いはずです。私は業者と魔道具に詳しい人を呼んできますので、ユウ様とアクイ様は無吸音域具の範囲内にあの魔道具を入れてここまで持って来て下さい」
「……分かった」
「そうだな、もし俺やユウに何かあっても身体の再生はできるから理にかなっている。そこら辺に関しては頼んだ」
「はい!ユウ様とアクイ様も依頼を頑張って下さい!」
取り敢えず悪意の化身に吸音遮断具とやらを持って貰って、私はあの鳥の模造品を引き抜いてみる。案外簡単に引き抜けた。
鳥の模造品に近付いたことで奇声を放たれて何度か鼓膜が破れたけど、悪意の化身が吸音遮断具を私が持つ鳥の模造品に近付けたら、周囲に拡散されていた音が凪いだ。
吸音遮断具を中心に直径40cmくらいの範囲が、中と外でそれぞれ遮断されてる。
その範囲から鳥の模造品を離すと奇声が再び放たれた。戻したら凪いだ。リンに言われた通りに、鳥の模造品を吸音遮断具に近付けて、そのまま扉の外に向かって外に出る。
外に出た。鳥の模造品を吸音遮断具に近付けたまま、リンが来るまで待機する。
数分経つとリンは複数人の人間を連れて戻って来た。
それに少し遅れてリンとは別方向から、中年の人間の集団がリンに向けて親しげに話しかけて来た。
「おお、リンさん。さっきの甲高い耳をつんざく声は何だったのか……知っていますかな。あとさっきゴミ屋敷の野郎が酒場で飲んでいたから強引に連れて来ましたが……そこのお2人さんが持ってる鳥の形をしたのは、少し前に見たことがありましてね、多分コイツと関係ありますでしょう?」
ジャバンと名乗った人間はこの職人街によく見かけた薄汚れた軽装の人間達に縄で縛られ、罪人のように石の地面にあぐらをかいていた。




