25話 片付けの依頼と走り去る依頼主 化身であろうと驚くこと
「それにしても、アンタらが古代岩石体の核を持ってるなんて驚いた」
酒場で飲料水を追加注文したデムランがそう言った。
「古代岩石体は発見報告が少ない上に、推定ランクはA。俺様とシュシアの2人でも確実に苦戦する。いや、全滅する可能性がある相手だ」
そうなんだ。
「…………ま、俺様からこれ以上野暮なことは言わないさ。それで、アンタらはどうしたんだ?まさかこの俺様にスキルに関する質問だけか?」
「Bランク冒険者である2人に、おすすめの依頼を聞きたいんだ」
「依頼?依頼かぁ……その時々、としか言いようが無いからな。シュシアはどうだ?」
「……いや、その……金欠にならない程度の必要最低限の依頼しかこなさなかったから……えっと……分かりません」
シュシアは頭を下げた。何故頭を下げるんだろうか……意味が分からない。
「……ちょっと待ってくれ。アンタらはランクが上がってもまだDだろ?なら、確か家事手伝いとかの依頼があるはずだ。金に困るほど散財しないなら、オススメしよう」
「……分かった」
やることは、目的は見つかった。まずは依頼を見つけて……
「ちょっと待て!独断専行する前に何とか言ってくれ!」
私が判断して動いたら、後ろから悪意の化身に大声を浴びせられた。どうしてだろう……?
デムランが勧めた家事手伝いの依頼は、すぐに見つかった。家屋の清掃及び片付け、報酬銅貨10枚。ランクは問わず。
3回目だから依頼の受け方は覚えた。依頼の紙を受付に出して悪意の化身と一緒に指定の場所に向かう。指定の場所……職人街と呼ばれた場所には、依頼主を名乗る人間がいた。
「初めまして、ワイが依頼主のジャバンと言うもんだ」
ジャバンと名乗った人間は衣服作りを生業とする職人と言い、後ろを振り返りその方向に腕を差し伸べた。後ろには様々な物品が乱立し、入ることが難しいほどの家屋がそこにあった。多分これが依頼の家屋の清掃及び片付け……
「ワイは片付けが苦手でな。いつの間にかこうなってた。仕事仲間に頼んでも匙を投げられたから、冒険者ギルドに依頼したけど……ふーむ。君昨日の英雄さんか?一瞬でどっかに行ったから、顔、あんまし覚えてないけど」
ジャバンと名乗った人間は私の顔をジロジロと見つめて、昨日のデムランとシュシアと一緒に英雄扱いされて担ぎ上げられた時の、私についての疑問を噴き上げた。
担ぎ上げられた時に、悪意の化身が私を連れて隠れたから、担ぎ上げの総合時間は2秒。覚え切れて無いのはそう言う理由だと思うけれど……それにしても、何故悪意の化身は私を連れて隠れたんだろうか……意味が分からない。
「うーむ。思い出せん……まぁ良いか。取り敢えず敷地の中に来て、片付け目処を立ててくれ。下手なとこからやると完成品や試作品に傷がつくからな」
そう言いながら入るのすら難しい家屋の敷地に手招きされ、私と悪意の化身はそれに従い入る。
「……」
「あっ」
「ゆ、ユウ様にアクイ様……」
敷地内にリンがいた。
「あっ……もしかして依頼を受けた冒険者と言うのは……」
「想像に任せる」
悪意の化身がそう言った。リンは頭を抱えた。
それにしても、何故リンがここに……?
「リンこそ、どうしてここにいる?」
私の疑問を察した悪意の化身が代わりにリンに聞いた。
「私はグレイ商会に卸す衣服に支障をきたしていると聞いたので、私がグレイ商会の代表として視察に来た次第です。まさかユウ様とアクイ様がここに来られるとは、思いもしませんでした」
私も思ってなかった。
「……あのー、取り敢えずグレイ商会の幹部と知り合いなんだな?なら安心だ。ワイはどっかで時間潰すから。後は頼んだー!」
不意にリンと邂逅したことに驚いた悪意の化身と私に対し、ジャバンと名乗った人間が私達に丸投げしてどっかに走り去ってった。
「……」
「……」
その突然の行動に、この場に意味不明な空気が流れ始めた。




