24話 シュッダの新たな門出 1日遅れの依頼報酬
あの祭り騒ぎの熱も冷めて街は一際静まり返り、朝日が昇ると同時にシュッダの街は活気に沸いた。
悪意の化身に蹴り飛ばされた悪魔は、リンによって悪行を暴かれそのことを知った悪魔に対し恨みを持つ人間達によって完全に死んだ。
死んだ体を捨てて魂だけになっても何処かに行こうとしていたけど、怨念に見つかってそのまま喰われた。怨念に食べられたら最後……魂の意思を完全に踏みにじられて、ただの無に帰る。
……あの悪魔の黒に寄せられたのかな。
領主が悪魔だったということが広まって、領主の屋敷からは大量の悪行の証拠が見つかって、このことを王都にいる国王に伝えるために早馬が出た。
さっき知ったけれど、ここはシーズル王国じゃなくて、その隣のプルデント王国という名の大国らしい。
山賊については、屋敷から見つかった文通のやり取りや悪魔の書き取りの紙から、死因不明の死亡と断定。
屋敷の地下にあった幾何学模様の先の空間に封印されていた悪魔は、私と悪意の化身とデムランとシュシアの当事者以外は誰も知らない。
大きな生命体……ドラゴンはシュッダの街の冒険者達によって討伐。逃げた魂は……………………完全消滅。
あんな事態に成ったせいで、もう忘れて消えた疲れが蘇った気がする……いや、忘れよう。今までも、ずっとそうして来たから……
早朝。この街に来てから2度目の朝。今日は昨日有耶無耶になった依頼の達成報告と報酬を受け取りに。
当然デムランも一緒にいる。
色々と確認を終わらせて貰い、そしてやっと依頼達成と報酬の銀の塊20個を渡された。
銀の塊20個は3等分するべきだろうけど、デムランが分前はゼロで良いと言い張り、全て私と悪意の化身に渡して来た。私はほとんど何もしてないけど……
あと案の定、デムランに生の残滓がまだ残存してる。
やることは全部終わったから、また新しい依頼を受けようと受付を離れようとしたら、受付の人間に私と悪意の化身が呼び止められた。どうしたんだろう……?
「お2人のランクをEからDに昇格可能になりました。通常はもう少し依頼をこなさなければなりませんが、デムランさんの報告によればアクイさんは屋敷の依頼でかなり活躍されたとか。そしてユウさんは――――」
受付の言葉を遮るように、2階から階段を降りるギルド長が割り込む。
「救世主だ。あの一言で、打開策を見つけることができた。理由はどうあれ、それほどの観察眼があれば充分Dランクでも通用するだろう」
……救世主なんて、馬鹿馬鹿しい。今ここに、この世界を壊し終わらせかけた張本……人がいるのに。
「昇格というのは、文字通りランクが上がることなのか?」
「はい、その通りです。依頼を一定数こなすか、別個の事案などである程度の活躍をすれば、Cランクまでは上げることが可能です。それ以上のランク昇格には特別な試験がありますが、今は良いでしょう。またその時になれば御説明します」
悪意の化身が二つ返事で了承して、私と悪意の化身のランクはEからDに上がった。
そして受付の人間に勧められるがままに、ステータスを新たに計った。これほどの経験を積めば大抵レベルが上がり、ステータスに変化が生じるそうだ。
……多分何も変わらない。
悪意の化身はレベル6、筋力18、防御21、魔力0、魔力抵抗1、素早さ16、幸運1。
私はレベル3、筋力4、防御5、魔力0、魔力抵抗1、素早さ20、幸運0。
悪意の化身は少し変わったけど、やっぱり私は何も変わらなかった。
終わったから私が新たな依頼を受けに行こうとしたら、悪意の化身が何か思い付いた様子で布製の小さな袋を取り出した。
「そう言えば、これは何に使えるか?2つに割れてしまっているんだが……」
「こ、これは……?」
その袋から取り出された物体に受付の人間が困惑する。
袋から取り出したのは球体の物体。ほぼ真っ二つに割れている……あ、これ私がダンジョンボスを倒した時の……
「古代岩石体の核」
「…………」
「…………」
どうしたんだろう……受付もギルド長も唖然としてる。
「君…………エンシャ……あっ、あの古代岩石体すら倒したと言うのか!あんな低レベルで、どんなスキルを持てば核を入手できるんだ?!」
2階からギルド長が駆け下り、凄まじい形相で悪意の化身の肩を掴んで超至近距離でそう言った。
「あー……倒したのは俺じゃなくて優の方だな」
ギルド長、受付、その他諸々の冒険者ギルドにいる冒険者が一斉に私を見た。
「……いや、しかし…………いや、今は何も言わないで置こう。真にその実力があればすぐに頭角を現すだろう」
ギルド長は軽く頭を抱えて、そう言いながら2階に上がって行った。
「……と、取り敢えず魔物の素材等は換金が可能ですので、古代岩石体の核はこちらの方で換金させていただきますね」
「あぁ、そうしてくれるなら助かる」
2つに割れた土塊の核は、受付が45個の金の塊に変えられ、元々悪意の化身が持ってた袋に金の塊を入れた。全部入った。
見た限りだと物理的に全部入らないけど、多分あの中は空間が外と隔絶してて、袋の中の空間が別個として存在してるだから広い。
悪意の化身が袋を仕舞うと、何処かに視線を向けた。依頼の紙がある方向じゃなくて、酒場。そして酒場にはデムランとシュシアが話し合ってた。
聞く限り一緒にパーティーを組むか組まないかで揉めてる。悪意の化身がそっちに行ったから私も行く。
デムランがまた一緒にパーティーを組もうと提案して、シュシアが拒否。
依頼を分けて別々になってからずっとやってる。
でも、私達が現れた瞬間に揉めるのを止めた。多分私達の前で揉めるのは見苦しいと思ってる。2人同時に。
悪意の化身は座ってどの依頼を受ければ良いのかとか質問を始めた。
そう言えば……
「スキル……って、何?」
「……ん?あー……スキルを知らないのか?アンタらも言ってるだろ?技名。魔法や技術を技として昇華したものを総じてスキルって言うんだ。俺様が良く使う火炎属性付与もスキルだ」
そうなんだ……もしかして悪意の化身、それを見越して……あっ、知らないって顔と色してる。




