23話 憎しみと怒りと共に悪魔すら踏み躙る者達 即ち人間
何度街中で目星付けて追い付いても、ほとんどそれが偽物か罠。悪魔の本体は敵わないと知ってか、私が完全な隙を晒すのを多分伺ってる。
もしくは、昨日の屋敷の地下にあった幾何学模様みたいな場所移動する所まで逃げてる可能性も……
…………
「暗い、暗い、世界の片――「ちょっと待てぇ!!」……もご」
突然現れた悪意の化身に口を塞がれた。どうしてだろう……着実に確実に悪魔を排除しようとしただけなのに。
「街の一角を消し飛ばす気か!何で?って言う顔をしてるが、お前の咒言は大抵やり過ぎるんだよ!」
……否定はしない。
「はぁ……で?さっきから耳を澄まして聞いてた限り、一連の元凶とやらが悪魔で今絶賛逃走中だったな。一瞬見えたが、確かに生と死の化身じゃあ追うのは無理があるだろ。あの体は人間の皮だけの人形で生命力なんて感じないし、何度も振り切る辺りかなりの策士だ」
そう。だから私は聴覚に頼るしか無い。無差別なら早いけど……
「だが悪意は隠せないようだな。あの知り合い連中とは違って、分かり易い心だ」
悪意の化身は私の手を引っ張って世界の外側に移動。そのまま目標地点に私を連れて世界移動した。
移動先の地点は先程みたいな人気の無い路地。悪魔視点、突然出現した私と悪意の化身に反応できず……あっ、悪意の化身が悪魔に拳の一撃入れた。
拳の一撃が入ると、この狭い路地の先……左右に横から道がある地点の先に道の無い壁に激突して膝を突いて……
「〈火炎属性付与・魔法鎖〉」
炎で形成された鎖が出現し悪魔の動きを封じ込めたのと同時に、これの主であろうデムランと怒りを滾らせるシュシアがそこにいた。
「生と……ゴホン。ユウが何かを追い掛けてるのは分かってたからな。聞こえた情報を2人に伝えて指定の場所に待機して貰ってたんだ。丁度この地点に来てくれて助かった。無駄な手間が省けたよ」
ああ、だからか。山賊と繋がっていたことは、間接的にシュシアの母を殺したと同義って感じだろうか……リンみたいな復讐心が沸々と湧き上がってる。
前方には私と悪意の化身。右側にはデムランとシュシア。
2方向から迫る私達に、悪魔がさっきまでの人間の姿から半分くらい悪魔の姿になって、急ぎ早に炎の鎖を引きちぎった。
聞いてた限り、あの悪魔の戦闘能力は高く無い。だからこの場合……
あっ、逃げた。
壁を蹴り走り、デムランとシュシアがいる方向に手や武器が届かないほど上から突破した。何故だろう……悪魔から見て左方向は誰もいないのに。
悪魔の走力にはデムランとシュシアの反応が遅れて悪魔の逃走を許した。
けど、いつの間にか世界移動していた悪意の化身がまた悪魔の目の前に現れて誰もいない左方向に殴り飛ばした。
数度地面を跳ねた瞬間に、悪魔が腕を地面に刺して止まった。何とか形は保ってる……悪意の化身、手加減したみたい。
「ふふふふふ……ははははは!!」
吹っ飛ばされた悪魔が地面に触れると、幾何学模様が模様が現れて光った。多分転移かな。
「我輩の勝ちだ!貴様らは、我輩を逃したことを後悔するが良い!」
今にも何処かに転移しそうな時、デムランとシュシアが冷静に悪魔が飛ばされた所まで来て、さっきの怒りが嘘のように冷静なシュシアが口を開く。
「さっきこの場所に転移魔法陣を見つけて、調べてみたら途方も無いくらい遠くて怪しかった。だから、念の為転移先を変えた」
「き、貴様……!まさか……」
悪魔の顔が絶望に染まり引きつった。
「今、半分悪魔の姿をしているなら、誰もが気付くはず。その転移魔法陣の先は、民衆や冒険者達がどんちゃん騒ぎしてる広場への、一方通行」
「〈火炎属性付与・魔法鎖〉ここまで追い詰めて、逃す訳には行かないんだよ」
幾何学模様から悪魔が離れようとした瞬間、デムランが炎の鎖を放って悪魔を幾何学模様の上に固定した。
「ま、待て!何が欲しい?!我輩なら何でも願いを叶えてやろう!もしくは何だ?!我輩の部下になりたいのか?ならこの鎖を今すぐ外してくれないか?!」
「そこまで取り乱すなら、テメェ自身は冒険者に敵わない雑魚悪魔と言ったところか。願いだの何だの言ってるが、それはもう命乞いだ。もしもこの場にどんな奴も助ける聖人がいれば話は別だ……だが、テメェがこの街で居座り憎しみを募らせた者達を代表して言わせて貰う」
幾何学模様が一際輝いたその瞬間、デムランとシュシアが同時に口を開いた。
「「断る!」」
広場で冒険者や街の人間達が危機を退けたと大袈裟に騒いでる中、一際目立つ広場の中心に地面から幾何学模様の光を放ち半分人間悪魔となった悪魔が出現。
アルコールを飲んでいない冷静な人間が悪魔がいると騒ぎ立て、あらゆる視線が悪魔に集中した。
悪魔がでまかせを言って誤魔化そうとした所に、息を切らし気味にしたデムランとシュシアが広場に接してる家屋の上に現れた。
私と悪意の化身はあの場でデムランとシュシアと別れて世界の外側から観戦中。
2人の言葉に冒険者達が各々武器を取る中、未だに誤魔化しこの場を切り抜けようとする悪魔に、木製の目立つ簡易建築の上にいたリンが、複数枚の書類を持って現れた。
その簡易建築の周囲には、角材を置いた疲れ気味の冒険者とグレイ商会で見かけた人間と中年の人間エルグ・グレイがいた。多分あの簡易建築……簡易拠点を造る為に集めた建築物の残り。
持っていた書類を読む演説染みたリンの言葉に、流石に確信した冒険者達が武器を構え、悪魔に襲い掛かった。
悪魔に襲い掛かるほぼ全員が、全部復讐心とかに染まってる。今ので山賊とかあの生命体とかの件の元凶が目の前の悪魔だと知ったら、そうなるか……
流石の悪魔も黙って攻撃を受けることは無くほとんどの攻撃を間一髪で避けているが、全部避け切れず少しずつ傷が増えダメージが蓄積される。
もう限界だと悟ったのか、悪魔が完全に人間の姿を捨てて、2つの羽を広げて街の遥か上空に逃げ去った。どうしよう……止めた方が……
「……あっ」
いつの間にか世界の外側から中に行っていた悪意の化身が、遥か上空に逃げ去った悪魔の顔に片足を乗せ移動を阻んでいた。流石行動が早い……
「き、貴様は……貴様等は……何者だ、何者なんだ!」
「我は純然で純粋たる悪意の結晶体。永劫より存在せし、悪意の化身。悪意と言っても、自認としてはただの善人とほぼ同義だが、な!」
地上から人影が辛うじて見えるはるか上空から、悪意の化身が悪魔の羽を消し飛ばし地上に向けて蹴り飛ばした。
「堕ちて堕ち過ぎた友人を間近で見た経験から、1つアドバイスしといてやる。世の中、お前が思う以上の絶望がある」
誰のことだろう…….?
「今から味わう絶望すら、生温い」




