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2話 勇者達のステータス確認 落ちこぼれ1人追放

―――同刻、シーズル王国のとある伯爵邸にて―――


「クソ!いつになったら戻るのだあの悪魔は!苦労して召喚したというのに!」


この人間か……


「王国の機密情報さえ分からぬのか!機密情報の全容さえ分かれば、帝国での地位が盤石になるというのに!買った奴隷共の魂を引き換えに契約したのを忘れたのか!早く、早く機密情報を持ってこーい!」


執務室。近くには誰もおらず1人……丁度いい。


「初めまして売国者」


驚きの顔。突然人間の姿をした何かががその場に現れたから当然の反応だろう。何度も見過ぎてつまらくなったな……


「き、貴様何者だ!この屋敷に忍びこむと、どうなるか分かっているのか?!私はシーズル王国のカスメル伯爵であるぞ!」


やはり小物。拳を振る価値も無い。咒言で充分だろう。


「悠久過ぎし悪意の最果て、そこに残るは、骸のみ」


「貴様何を――――『グシャ……!』」


さて、あいつの邪魔になる奴は消したし、久しぶりに声でも拝みに行くか。



◆◇◆◇



悪魔の完全消滅確認。巡回する兵士に見つかる前に部屋に戻らないと。


『珍しいなぁ?生と死の化身が異界に召喚されるとは』


「悪意の化身……相も変わらず見つけるのが早い」


『おいおい、あまり褒めないでくれよ。早速本題に入るが、生と死の化身。その世界をどうする?』


「どうもしない。何かをするという気が起きない限りは」


『そ、う、か。やっぱり受け身だなぁ。なら接続を切ろう。あと42秒で兵士1人がそこに来る』


「忠告どうも」




次の日。国王に呼び出された。


クラスメイト全員と担任教師。誰も欠けてない。


昨夜、兵士が1人消えた。けれど誰も気にしていない。元々サボり癖のある兵士のガワを被っていたせいかもしれない。兵士寮で聞こえた同僚談。


国王に呼び出された場所は玉座の間。無駄に豪華な玉座に無数の兵士。多分信用はされていない。


「勇者達よ、よく眠れたであろうか。まず改めて自己紹介しよう。私はこの国、シーズル王国の国王フリードデリオである」


この男が私達を政治の駒にしようなどと考えているのは誰も知らない。知ったとしても無駄に混乱を起こすだけ。


「まず初めに、1人ずつ前に出てこの水晶に手をかざして欲しい。誰からでも構わないぞ?」


急に小さなテーブルとその上に乗っかる薄水色の水晶が用意された。多分何か仕掛けがある。


男子生徒1人が意を決して前に出た。そのまま水晶に手をかざす。


すると水晶の上に文字の羅列が出現。


「素晴らしい!流石は勇者!」

あの男、国王が喜んだ。何処に喜ぶ要素があるのか、私には分からない。


「あれはまさか……ゲームとかで見るステータス画面……?」

ゲーム好きの男子生徒が1人呟いた。言われてみれば……似てる。


それから順不同でクラスメイト達が前に出て水晶にてをかざし、それを水晶の横にいる人間が出た文字を記録をして行った。


あ……ただただ、その様子を見ていたら担任教師が水晶に手をかざして、最後に私が残ってしまった。


途中でやるつもりだったけれど、まあ大丈夫か。最後になったとしても特に変わるまい。


「す、スキル無しだと……?!しかもステータスは平凡そのもの……!」

水晶から現れた文字の羅列を見た横の人間が落胆と驚愕の声を上げた。


当然だろう。何を調べているかは分からないけれど、そもそも私の存在は理外の外。こうして出たことだけでも奇跡と言える。或いは何者かの干渉の結果か。


「いや待て。何か隠された力があるやも知れん。今はまだ様子を見る他あるまい」


国王がこの場を収めた。けれど、その目は落胆とやり場の無い怒り。クラスメイトと教師は気付いていない。誰も。多分、今夜中に私の処遇を決めることだろう。


始末するとしても、私は不本意ながら死ぬことが無い。そして殺されるのが正直一番困る。




その後1人1人に指輪を渡され、国王はこの指輪を勇者を守る力を持つ指輪だと伝えた。真実かどうかは定かでは無い。


そのまま何処にも行かせず部屋に戻されて、夜になった。この状態を言葉で表すとするのなら、軟禁という言葉が当てはまる。


夜になって分かったことがある。この指輪から、思考誘導と精神汚染の類を感じた。今は微弱だけれど、時間が経つごとに力は肥大化している。


「尾理優様ですね?国王陛下が貴女に会いたいとかで。着いて来て下さい」

現在時間深夜。兵士が扉を叩いて私を呼んだ。


どうせここで暴れても結果は同じ。渡された寝間着のままだけれど、部屋を出て大人しくその兵士に従う。


兵士からは緊張が沸き上がっている。国王の声は聞こえない。昨日の部屋にいることは分かる。けれど何かを書く音だけ。情報漏れを防ぐ為に筆談で会話しているのだと思う。


そう時間は掛らず国王がいると思う部屋の前に到着した。何をするのだろう……?


兵士が扉を叩くと扉が開いた。昼間に呼び出された時と同じ豪華な服装の男。国王。執事服を着た初老の人間。その他には私達を召喚した時にいたローブと杖を携えた人間が複数名。


「よく来てくれた。どうぞ中に入ってくれ」

兵士に物理的に背中を押されて部屋に入らせられた。そしてすぐに扉が閉まった。何かしようとしているのは確実。でもどうしよう……?


「玉座の間では言わなかったが、この世界にはその者の能力を表すレベルとステータス。そして特殊な技能であるスキルが存在する」

突然そんなことを言われても……気でも狂ったのだろうか。


「他の勇者達は優秀であった。高いレベルやステータス。世の中で強いと呼ばれるスキルや我々すら知らないスキル。文献通り凄まじき力を持った救世主だった。だが、貴様は…………」

突然口籠った。そして私を貴様と言った。軽蔑、怒り、その他諸々……濁ってる。


「肉壁にもならんような落ちこぼれは、地獄を見て死ね!!」

足元に召喚された時と同じ幾何学模様……杖の人間達がこれを生み出している……でも反抗する気は起きていない。良かった、顔を出されたらこの場どころか城が吹き飛ぶ。私でも制御が効かなくなるから。


幾何学模様が一際光って視界が光に包まれた。眩しい。


「…………」

どこだろう……ここ……

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