12話 突撃幽霊屋敷! 死にゆく果てに染まる先
私が取った依頼の紙を受付に持って行ったら、受付の人間が困ったような呆れたような微妙な顔をした。
「すいませんが、冒険者になりたてのEランクでは、この依頼を受けることができません。自身のランク以下の依頼なら受注できますので、Eランクの依頼をお探しになった方が……」
「じゃあ俺様が一緒なら問題無いだろ?」
いつの間にか私と悪意の化身の背後にいたデムランがそう言った。やっぱり白い。
「それでは、依頼をその3人で受けることでよろしいですか?」
「……良いんじゃないか?そもそも受けられなかった依頼だしな」
「……分かった」
「それでは、この依頼限りの臨時パーティーの結成を申請させていただきます」
……白に僅かな異色……疑問……?
私と悪意の化身と一緒にデムランが横を歩いて着いて来る。
空は暗く夜の帳に包まれて、家々は灯りをかざして街の暗闇を打ち消し、ある建物では人々が酔い叫び大いに笑っていた。
「……なぁ、アンタらの実力を疑う訳じゃねぇが、低レベルのEランク冒険者が推定Cランクの依頼は自殺行為なのを分かっているのか?」
「……?」
「こりゃ分かってねぇな」
「……生と……ゴホン、優は受け身なんだ。稀に自ら動こうとする時はあるが、流されないと何もしないし何も動かない。動いても何かしら普通にはならない」
「……アンタも苦労してんだな」
悪意の化身とデムランの親密度が上がった気がする……気のせいだろうか……?
豪華で中世的な建物が立ち並ぶ中、その屋敷は黒く焼け焦げた姿と蔦が屋敷を飲み込み緑に染まった姿という異彩を放ち、そこにあった。
「依頼内容はこの廃墟の調査。廃墟になった経緯と放置されて数年が経過したことで、ゴースト系の魔物が現れる可能性が高い。俺様とアンタらがすることは、廃墟屋敷に潜む低ランクの魔物の一掃と高ランクの危険な魔物の報告。こんな街中に高ランクの魔物がいたら一大事だからな。もし見つけたら一目散に逃げろ」
「分かった」
「…………」
悪意の化身が目を細め、屋敷を静かに見つめた。
目の前にある鉄格子の扉を開けて、無差別に伸びて成長した植物に支配された敷地を進む。そして屋敷の扉の前に到着。
扉の鍵を受付の人間から渡された悪意の化身が鍵穴に刺して捻って扉が開いた。取手が一部溶けてる……
光は月明かりだけで暗い。けど十分に見える。デムランがランタンを取り出して火を灯した。人間には見えないのだろうか……?
酷く擦り切れ焼け焦げ汚れた絨毯と残骸が積もった空間。所々燃えた跡がある。
中央に大きな階段があったけど、途中で崩れて2階に進めそうにない。
右横左横に長く続く廊下。
悪意の化身が右横に向かった。私も着いてく。デムランも一緒に。
「そうだ言い忘れてたことがあった。俺様がこの依頼を共に受けたのは、アンタらに――――」
「何か聞きたいことがある」
私がデムランの言葉に割り込むと、デムランは驚きと図星の顔で私を見つめた。真っ白に別色の疑問が混じれば、流石に気付く。
「……その通りだ。だが、アンタらの野暮に顔を突っ込むつもりは無い。俺様が聞きたいのは、アンタらは……ヤガザの野郎を殺ったのか?」
「……」
……何か言った方が良いだろうか……?でも悪意の化身は何も言わない……
「そうか……こっからはただの俺様の独り言さ。リンの顔は何度も見て来た。悲しみに暮れたあの顔を。だが今日のリンは、どこか晴れやかだった。リンの顔を晴れやかにするなんて、そんな方法は俺様が知る限りヤガザを討つことだけ……あの厄介さと強さには俺様も手を焼いた。だから…………おっと。俺様の独り言はもう終わった。今は、手荒いもてなしを受ける時間だ!」
大声を出して剣を構えた。視線の先……突如出現した魂が複数。あれがそうなのだろうか……現世界に顕現しても、物理影響を与えるほどの何かは感じないけど……
「Dランクのレイスか……レイスには物理攻撃は基本的に通じねぇが、アンタらの心配はいらねぇだろうな!」
心配とも受け取れる口調でそう言った。
……黒、黒、黒……怨で消滅させてもいいけど、それだとあの魂が完全に消滅する。どうしよう……
「〈悪逆浄化〉」
……白、白、白……悪意の化身が魂達の悪意を全部消し去った。見た感じ元々白だったのが、死後黒に染まったから暴力的に襲って来た……と思う。確証は無い。
襲う理由が無くなったからか、目の前の魂が何処かに消えた。目の前の魂が全部消えたから、デムランが困惑した表情で剣を仕舞い込んだ。それと、直前に悪逆浄化と呟いた悪意の化身に対して疑念が大きく膨れ上がった。
一階複数の魂が襲って来たけど、悪意の化身が全部黒から白にした……墓地よりも黒色の魂が多かった気がするけど、気のせいだろうか……?
二階は屋敷の崩落を危惧して上らず。そもそも唯一二階に進める中央階段が崩れて進めない。
それで今いるのは中央廊下の右横。さっきから、足元から何度も何度も反響音が聞こえてた。多分地下空間が足元にある。このことをデムランに伝えたら、驚きつつも耳を床に当てて下からの反響音を確認した。
中央階段の右横にいるのは、ここが反響音が床に一番近いから。多分ここが入り口。
一応私は反響音で大体の入り口の場所と地下空間の地理は分かった。でもデムランは片っ端に疑いのある場所に触れて探ってる。
時間が掛かりそうな様子に、悪意の化身が足に少しだけ力を入れた。足元からヒビが入って、抜けた。
床と地下空間の壁が薄かったのか、一瞬でボロボロと崩れて、その中心にいる悪意の化身が地下空間に落ちた。近くの私も巻き込まれて落ちた。
「大丈夫か?!」
今のデムランが心配そうに上からこちらを覗いた。取り敢えず地下空間には来れた。瓦礫になった床は邪魔だから上に投げ捨てる。
全部投げ終わったところで、デムランが上から降りた。
「……経年劣化で床が抜けたのか……?」
悪意の化身がやったとはつゆ知らず、そう小さく呟いた。無理もない。
『……ドッ……』
……下から、音?……もしかして、さっきの?さっきまではあの森でしか聞こえなかった。でも今は森から数km離れた街で聞こえてる。強くなった……?




