10話 冒険者登録とそれの実力を探る者 Bランク冒険者デムラン
リンに言われて、冒険者ギルドの受付らしき場所で冒険者登録をすることになった。この空間の空気はまだ暗い。
「冒険者登録ですね?登録するにあたって1人につき登録料銅貨4枚が必要になりますが……」
「あっ、私が払います」
リンが手を上げて丸い円状の銅の塊を8つ取り出して受付の人間に渡した。一部の人間が私と悪意の化身に蔑む視線を向けた。多分、リンに代わりに払ってもらったことが原因。仕方ない。持ち金無いから。
銅の塊を受付の人間が受け取ると、奥の物置きのような場所から2枚の紙と1つの水晶を取り出した。見覚えがあると思ったら、城にいた時にクラスメイト全員にかざさせた水晶と瓜二つ。
「では、次にまずはこちらの用紙に記載を……あ、文字は書けますか?」
「書ける。大丈夫だ」
「……多分」
渡された紙……分からない、知らない、発生言語が通じていたから忘れてたけれど、当然のように文字言語が地球と違うから文字を書けない。
隣の悪意の化身はもう書き終わったみたいで、既に受付の人間に渡された紙を渡してた。仕方ないから悪意の化身に代わりに書いてもらう。書いている所は覗いて……覚えた。
「お名前はアクイ、それとユウですね。では、1人ずつこの水晶に手をかざして下さい」
悪意の化身が先にかざした。わくわくしてる……?
「レベル4、筋力17、防御21、魔力0、魔力抵抗1、素早さ10、幸運1。普通……ですね。それでは次をお願いします」
水晶に浮かぶ文字……確か城にいた人間がステータスと言っていた言葉と同じ……でも全く分からない。
分からないけど、言われた通りに水晶に手をかざしてみる。
「レベル3、筋力4、防御5、魔力0、魔力抵抗1、素早さ20、幸運0…………0?!は、初めて見ました……幸運が0な人は……あ、ごほん。それでは冒険者カードを作成しますので、その間に冒険者ギルドの規定等の説明をさせて頂きます」
受付の人間が別の人間に一瞬裏の扉に入って戻って来た。
「冒険者ギルドにはランク制度がありまして、ランクには最高のSから最低のEまでがあり、冒険者登録をした人は必ず最初はEから始まります。ランクが低いほど受けれる依頼の数は絞られ、依頼を完了した数や実績などを考慮してランクは上がります。ランクは信用度にも直結し、高ければ高いほど良い依頼を受けることができます。比例して難しい依頼が舞い込むこともございますが、自身の実力を考えて受けて下さい。強制ではございませんので依頼の取り止めは可能です。以上が大まかな説明になります」
受付の人間が裏に入って2つの何かを持って来た。死んだ3人が持っていたカードと瓜二つ。多分あれが冒険者カード……
「冒険者カードができましたので受け取って下さい」
悪意の化身と私に半強制に渡された。
「そのカードには先程書いて頂いた情報が詰まっています。そしてそのカードには簡易的な鑑定の魔法陣が描かれていますので、いつでも自身のステータスを閲覧できます」
恐らくその機能は今後とも使う機会は無いだろう。そんな物は意味が無い。
「これで冒険者登録は以上になります。あちらの依頼が書かれた貼り紙を、こちらに持って来て頂ければ依頼を受けることができます。もし、よろしければ初心者向けの依頼がありますので、それを受けますか?」
「……ふむ。目的作りの出発点に丁度良いか。ならその依頼を――――」
「おいアンタら。リンちゃんにやって貰わんくらい金が無ぇのか?リンちゃんを疑いたくは無いが、あの凄腕パーティーがやられるなら、実力は疑わしい。この冒険者ギルドの裏手には訓練場がある。そこで俺様と一戦やれ。これは強制だ」
さっきの大男が腰の剣に手を掛けて割り込んで凄んだ。白い、取り繕っているけど心配の感情が分かりやすく浮かんでる。
「デラムンさん!」
リンが声を荒げた。さっきからの様子から、前々から知り合いだったのだろうか……?
「すまねぇがこれは譲れん。さぁどうする?ここで怖気付いて逃げるか。アンタらの実力を示すか。どうする」
言われるまま訓練場と言う場所に到着した。
土が向け出しになった地面と突き抜けた空。見事に何も無い。いるのは疲れを癒し壁に寄り掛かる人間と、私達とあの人間との闘いを観ようと集まった野次馬。
デムランと呼ばれた人間は入り口から奥の方に進んでこちらを向いた。
「改めて名乗る。俺様の名はデムラン!Bランク冒険者だ、覚えとけ」
剣を壁に置いてここにあった木剣を向けた。害意は無し。
対するは悪意の化身。何も持たずに不敵な笑みを浮かべてた。
私はリンと一緒に壁に寄り添いながらそれを眺める。
さっきから感じているけれど、私はずっと蚊帳の外。どうしてだろう……
「デムランさんはレベル27の高レベル冒険者ですよ……アクイ様の実力を疑っている訳ではありませんが、先程聞こえたステータスとレベルに圧倒的な差が……」
心配が浮かび上がって浮き彫りに……でも、さっきから言っているステータスとかレベルとかはいまいちよく分からないけど、そんなことをする必要性は無い。
「私達に、そんな指標は意味を成さない。世界の摂理は私達を認知する力を持たない。だから、人間と認識するだけで精一杯」
「え……?」
リンが分からないと言うような困惑の表情で私を見つめた。どうしてだろう……
「おい、本当に俺様と何も持たずやり合うのか?」
「素手で十分、手加減無しで頼む」
今の言葉で、人間……デムランが木剣を構えた。悪意の化身は傍から見れば何もせずリラックス状態。
「……」
「……」
睨み合うだけ。すぐに終わらそうとすれば終わるのに……
デムランが木剣を突きの態勢で突進を始めた。けれどそれは当てる気の無い意図的な外れる軌道。悪意の化身が何もしなくても、木剣は脇下を通って外れる。
あ、悪意の化身が動いた。外れる木剣をわざと大きく動いて背後に周り、指をさした。
「〈悪逆波動〉……やはり駄目か」
「……?何かしたか?」
やっぱり効かない。悪逆波動は、完全不可視の波動を放って対象が秘める悪意に応じて損害を与える権能。私の生と死のように、化身のチカラを応用した力。
自らの意思を持って犯罪を犯すような者には効果抜群だけれど、あの人間のような白を持つ人間には効果が無いどころか、健康を促進させる作用を持ってる……っと、悪意の化身が前に言っていた。本当かどうかは知らない。
再びデムランが木剣を構えた。でもさっきみたいな突きでは無く振りかぶって迫る。悪意の化身は動かない。ギリギリ掠る軌道で木剣が振り下ろされた。
今度はわざと直撃する場所に移動して、デムランが驚いて少し力を緩めた。悪意の化身は見逃さず、木剣を弾き遠くに飛ばした。あの人間の白さを利用したみたい。
「……俺様の負けだ。アンタらの実力を信じよう」
元々その気だったと思うけど……どうして遠回りをするのだろうか……?分からない……




