7・金剛代艦って、おいしいの?
さて、金剛代艦に関する話であるが、研究会案の41センチ砲12門を3万5千トンの船体にブッコむという案はさすがにどうかと思う。
まあ、第一次大戦期の軍艦ならやっていたんだろうが、今はどうなんだ?という事で、無難な三連装3基9門という案を提出した。
そこに、かの御仁が持ち込んだのが10門案である。三連装と連装の混載により、しかも集中防御を徹底したコンパクトな作りというのが売りだ。ほら、後のサウスダコダ級なんて全長200mちょっとでまとめ上げた非常にコンパクトな戦艦があるから、やってやれんことは無いと思うんだ。居住性や物資倉庫の配置が破綻する事から目を逸らすならばね?
ただまあ、主力艦に合わせて速力を金剛より落とすのは正直どうなんだ?という疑問があった。そこで、平賀案をベースに機関出力を12万5千馬力まで上げ、その分機関部と艦首を延長して冗長性を持たせ、夕張煙突化し、副砲もすべて砲塔化した案を新たに提出した。
するとやはり怒鳴り込んでくる人が居た。
「貴様はどこまで俺を馬鹿にすれば気が済むんだ!」
いや、基本デザインは平賀案であり、特にそれ自体は大変評価しているんだけどと返答するも、全く怒りが収まらない様子。
「あんな弛んだデザインのどこに俺の要素があるんだ!あぁ??」
夕張煙突とか三連装、連装混載とか、そこかしこに平賀らしさが見て取れるのは気のせいだろうか?
「そんなモンはこじつけだ!!」
と、さらにヒートアップしているが、では、今更砲郭式なんてどうなの?巡洋戦艦の代艦ならば高速戦艦とするのが当然であり、26ノットそこらじゃダメじゃん?つっても、30ノットに満たない速度にしかならんのだけど、そこは今後の技術の進展を考えれば15万馬力に出来るから、事実上は30ノットの高速戦艦なんだ。
そんな説明をすると、どうしても自身の考えが譲れない御仁は「ぐぬぬ」と口をつぐんで引き上げていった。
ちなみに、副砲は15.5センチ砲を連装化したソレを提示しておいた。三連装でない理由?
だって、4万トン程度の戦艦に三連装6基は載らんでしょ?
そんな騒ぎが巻き起こっている最中、結局はロンドン条約が締結され、モラトリアムが更に5年延長されたことから、金剛代艦は自然消滅の形と相成った。
だが、ここで大きな問題が新たに起こる事となる。
なんと、この条約の結果、軽巡洋艦枠は仁淀型の新造が影響して期待の新型、15.5センチ砲12門艦が4隻で制限ギリギリという結果と相成った。
設計やら起工やらが早すぎた結果、ロンドン条約に合わせた帳尻やら辻褄がね?
その代わりに辻褄合わせをすれば重巡洋艦枠が6隻確保可能な状況となっており、20.3センチ砲8~10門の新型巡洋艦をどうにかしろという話になった。
そこにまた登場したのが譲らない御方である。
「軍艦の設計なら俺の出番だな?」
と言い出すのだが、左遷されたんじゃなかったっけ?
「それは既に物は出来ているので、こちらの画期的なモノをどうぞ」
と、水雷艇計画を差し出してお引き取り願った。
「ハァ?この俺に高速船の設計をやれと?どういう了見だ?まあ良い、アッと言わせるものを突き付けてやんよw」
と、なんだかにこやかにお帰り頂いた。
そして、重巡洋艦はもはやほかに選択肢が無いという事で、三連装9門、連装魚雷発射管4基案を溶接船体にて建造する事で落ち着く事と相成った。
この重巡洋艦は溶接を広範囲に適用し、鋲留めを行うのは装甲の取り付けなどの溶接の適用が難しいごく限られた部分に留まる。
そして、問題となったのは高角砲の扱いだった。十一年式12センチ連装高角砲を積むことを前提としていたのだが、もっと軽くて使いやすい高角砲があればなぁという意見が出てきている。
まあ、実態は三連装魚雷発射管をとゴネる連中に対して高角砲が重いんだよと言い訳したからなんだけどな!
その声に対応して開発が行われているのが、15.5センチ砲と同じく自緊式製法で軽量化された55口径十一年式8センチ高角砲である。
こいつを採用することで高角砲の重量を低減する事に成功したのだが、口径が小さくなったことによるデメリットの指摘に対しては、「そこは既存の4基から6基への増設で対応する」として魚雷発射管問題を蹴り飛ばしてやった。
さて、そんな事をしている頃に水雷艇も設計が終ったらしい。
その要目がトンデモなくおかしかった。
「600トンのフネですよね?」
と、聞き返したことは何も間違ってはいない。
600トンのフネに十一年式12.7センチ連装砲塔を2基も載せたらどう考えても無理がある。そこに53センチとはいえ、三連装魚雷発射菅だと?
ちょっと何をやっているのか分からなかった。
「夕張と並ぶ画期的な船だろぉ?」
と、ご満悦だが、全くそうは思えない。トリマランでも採用しないと確実に沈む事になる。
譲れない重武装信仰は分かるが、それではすべてがダメな事が分かっているので、大幅に変更して同じ十一年式だが、12センチ砲へ、それも単装砲架3基へと変更したうえで正式な水雷艇案として提出させてもらった。
「ふん、どうやら貴様も一人前らしいな」
と、どこか悔しそうな顔をしていってきたが、何?分かっててやった確信犯なの?ほんと、油断も隙も無いよ、この人。