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18·そろそろ役目は終わり

 満賢君に手渡されたソレは二種類あった。


 ひとつは強襲揚陸艦ではないのかな?


「はい、基本は陸軍船舶と同じ物ですが、掃討艦を統轄する旗艦或は母艦の役割を持たせた補助空母になります。平時は掃討隊に常時空母が編入される事はありませんが、やはり掃討隊では広域警戒の為に航空機による上空哨戒の必要性があると言っておりましたので」


 それはマンマ護衛空母じゃないか?確かに、掃討艦隊を編成する話も出ているし、空母による広域警戒は有効だろう。何より、父親が関与している事を考えれば、補助空母を示して彼の実績とするのも頷ける。


 その内容は強襲揚陸艦から揚陸機能を省いた以外は同じで、1万トン級高速貨物船をベースとする空母である。

 そこには賢吾君が開発に関わった油圧カタパルトが据えられ、九六艦戦に対応している。エレベーターも2基、左舷舷側エレベーターもそのまま。

 兵装は艦橋砲座に10センチ高角砲が据えられ、舷側スポンソンに57ミリ自動速射砲が並ぶ、護衛空母としては贅沢な装備だ。


 そして、搭載機もカ号観測機を海軍も導入するとの話があり、艦戦とカ号の組み合わせらしい。

 このカ号観測機には、かのハイドラもどきロケットも装備される。


 陸軍はハイドラもどきの話を具現化し、総重量6kgの小型ロケット弾を完成させた。諸条件が揃えば5km程度の射程になり、弾頭には擲弾筒の榴弾が用いられている。

 カ号にはその三連装ランチーが左右に装備され、6発を積む。


 さらに発展型ランチャーとして12連ランチャーがあり、増槽代わりに艦戦に装備すれば対潜、対地任務もこなせると陸軍から売り込まれたらしい。


 ただ、よい話ばかりかというと、そもそものところ、空母型特種船は未だ起工すらされていない。

 第二次上海事変で特種船の増強が言われ、計画も進んでいるが、今着工されているのは外観が普通の貨物船に見える神州丸と同じタイプだけ。


 空母型は流石に外見で軍艦と分かるため、陸軍が進んで建造しようとはしない、アレコレ海軍に薦めているのは、まずは海軍が保有してソレが運用される事で陸軍が空母を持った事に注目が集まらないようにしたいらしい。


 そろそろ戦争の足音が聞こえているから、この護衛空母を掃討艦隊の旗艦として建造しようという話がようやく出たトコロ。


「確かに、こんな使い勝手が良い補助空母が完成すれば掃討隊の任務も幅が拡がりそうだ」


 そう感想を述べると満更でもないないらしい。



 さて、もうひとつは本命だが、あれ?客船?


「あ、失礼しました。それは日本郵船へ渡す2万7千トン級客船のですね。海軍が戦時に空母化を目論む船です」


 とのこと。橿原丸級ってやつか。例の隼鷹型(アル中)空母だな。


 そして、急いで図面を取りに行く満賢君。


 史実における橿原丸級は嘱託殿率いるチームが関わっていたはずだ。

 しかし、この世界では三菱と関係が深い大西一家が関与する事になり、満賢君をリーダーとするチームが参画していた。

 図面を見ると、もはや鋼船規格で設計した軍艦そのもの。国が費用を負担するとはいえ、やり過ぎ感がパないんですが?

 まあ、戦時には改装される前提の上、明らかに戦争が近いとなればそれも仕方がないのかな?世知辛いね。


 そんな感慨に耽っていると、満賢君が戻って来た。


「こちらです」


 つまり、隼鷹型(アル中)空母に藤本デザインを落とし込み、ハリケーンバウにしたと。


 なるほど、護衛空母とは違い、エレベーターは三基へと増え、左舷だけでなく艦橋後部にも右舷舷側エレベーターを配置するのか。


 小型の護衛空母では左舷へ著しくオフセットされた飛行甲板が船体の大型化に伴いセンター寄りとなる様だが、エレベーター周りは艦橋とのバランスもあってそこそこ広く取られている。

 カタパルトもより重量級のモノを二基装備しており、橿原丸をベースにした中速空母として量産も念頭にあるのかな?


「はい、父が『戦は近い』と言っており、急速建造を念頭にしています。ただ、同じ外観ながらより本格的な大型装甲空母も設計可能です」


 なるほど、隼鷹型(アル中)空母だけでなく、大鳳も、ね。


 これには特徴的な高角砲塔が用意されているのか?


「はい、キャットウォークを効率化するために埋め込み式砲塔を採用しようかと」


 ドコの英国面かね?


 しかし、悪くはないんじゃないか?


 装備するのは50口径12.7センチ砲。射撃指揮装置はもちろん賢吾君の作な訳で性能は折り紙付きだな。

 さらに57ミリ自動速射砲も邪魔にならない砲塔化が行われるらしい。キャットウォークに露天配置されるのは簡易射撃盤と25ミリ機銃だけか。なんとも凝った作りになるんだな。


 さらにだ。


「実は、新戦艦の船体を利用した空母も用意してみました」


 と言って見せられたのは、本格的な大型空母だった。

 エレベーターは三基共に舷側配置とした装甲空母となり、戦後の米空母じゃないかと言いたくなる。アングルド・デッキこそ備えていないが、左舷側に飛行甲板を拡幅しているのでとんでもなく甲板面積は広い。


「この様な大型空母が無いと今後の運用に差し障るだろうと兄が言っていましたが、果たして必要でしょうか?」


 健太郎氏の言葉に流石の満賢君も半信半疑らしいが、うん、必要だよ。


 満賢君がここまで先を見越しているなら、もはや私の出番は無いのだろうな。これだけの事が出来るなら、あとは彼に任せておけば間違いないと思う。

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