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14・オートジャイロ空母っておいしいの?

 あれこれと時代が大きく変わろうとしている。ただし、艦艇を中心に、そこから少々派生したといった感じではあるのだが。


 そんなある日、陸軍から話が舞い込んできた。


「シャルバを実際に購入して試験を行ってみたが、神州丸では運用できそうにない」


 という話である。うん、それはそうだよ。


 欲を言えば戦闘機や軽爆撃機を飛ばしたいらしいが、そこまでやると流石に海軍の協力が得られるかどうかわからないと向こうも遠慮している。

 しかし上陸作戦に関しては、海軍は今のところ興味も薄ければ予算の都合上自ら保有できる状態にすらない。


 正面装備重視から掃討艦の様な補助艦艇にも目を向けるようになってはいるが、これはそもそもメンツの問題も絡んでいるので何とも言えない。


 そんな訳で、上陸部隊を輸送し、揚陸支援に当たる艦船というのは陸軍の管轄になる事が半ば暗黙の了解と言って良いだろう。別に日本が特別な訳ではない。この頃は他の国だって状況は似たようなものだ。


 そんな訳で、上海事変での上陸戦や神州丸の運用実績から新たな特種船計画がすでに浮上しているらしい。しかも、その直接的な原因は、ハイ私のうかつな発言ですが、何か?


 というわけで、カ号観測機の開発が大幅に前倒しされ、すでに試作機が完成し、輸入したシャルバによって部隊の編成まで行われているらしい。

 その部隊を上陸支援として自分達で運用したいのだそうだ。そのためには空母が要ると。


 そんな話ではあるが、積む機体がオートジャイロ程度で良いなら、そう本格的な飛行甲板が必要な訳では無い。

 しかし、問題となるのが、あくまで上陸部隊を輸送し、舟艇ごと降ろす神州丸と同規模の船に、ちゃんとした飛行甲板を備え付け、出来る事なら橋頭堡を築いて周辺に滑走路が出来た。或いは支那への再度の上陸作戦があれば、発艦だけして降りるのは現地の飛行場といった運用も出来ないかという。


 おかしいな。オートジャイロさえ飛べばよいと聞いたはずが、話しを聞けば聞くほど膨らんでいるのだが?


「それはどこまで必要でしょうか?飛ばすだけならカタパルトで飛ばせます。シェルバだけなら本当に簡易な飛行甲板で済みますが、本格的に飛行機を飛ばしたいとなれば、それ相応の船体から用意する必要がありますよ?」 


 そう、アレもコレもというわけにはいかない。


 そう言うと、陸軍の人も悩みだした。


 確か、オートジャイロって搭載量がヘリより少なくて短距離離着陸が可能という以外に大きなメリットが無かったはずだ。

 ヘリの登場までは短距離離着陸、それもかなりの短距離で可能な事からそれなりに研究開発も行われていたが、ヘリが登場するとより理想的な飛行機として注力され、中途半端なオートジャイロはひっそりと幕を下ろしたような状態になっていたはずだ。

 それ以後のオートジャイロは軽量飛行機の一形態として細々と生き残っているといった程度であり、大きな発展は起きていない。


 そんなオートジャイロを運用しようという。確かに、ヘリが実用化されていない今であれば使えるんだから使いたいというのは当然だろう。

 だが、搭載重量が小型爆弾1発程度というのは確かに少ない。


「シェルバや試作機では地上攻撃もままならんから、より本格的な機体を載せたい」


 そう懇願してくるのも分からんではないが、海軍がそれにどう反応するだろう?


「物は試しで5kg程度の噴進弾でも積めば、一応の攻撃能力はあるでしょう」


 まあ、後のハイドラロケットだよ。弾頭は擲弾筒の弾や手榴弾程度となるが、無いよりはマシだろう。陸軍の人もそれはそれで良さそうだと乗り気である。


 さて、ここで問題となるのがその輸送船が基本的に舟艇や上陸部隊を輸送するという事にある。海軍の運用する空母とは根本が異なるので、全く別の考え方をしないといけない。


 そんな訳で、満賢君にまずは考えてもらったが、うん、普通に護衛空母でしかなかったよ。


「う~ん。陸軍さんも否とは言わんだろうが、たぶん、コレジャナイ」


 そうダメだしを行い、必要な要素を書き出していくと、疑問の声が上がった。


「それは幾らなんでも欲張り過ぎではないでしょうか?」


 まあ、そう思うのも仕方がない。基本形は1万総トンクラスの高速貨物船型なので、全長150mちょっとの大型船ではあるが、空母と輸送艦を兼任するにはちょっと手狭なサイズ感しかない。


 そこで、戦後の強襲揚陸艦を参考にすることにした。と言っても本格的な米国のソレではなく、8000トン程度しかないイタリアのサン・ジョルジョ級だ。


 全長133mという数値はちょうど陸軍が求めるフネとしても問題ない。


 それを少々改変し、大型艦橋を右舷へ、飛行甲板を左舷へとオフセットさせた形状とし、飛行甲板の下に設ける左舷舟艇収容区画後部を舷側エレベータとして改変してみた。こうして大容量の艦橋、下部の飛行機兼舟艇格納区画へ影響しないエレベータを実現。一基は前方中心線上にあって飛行機格納庫兼車両収容スペースへと直通。艦橋脇にはデリックもあって、飛行甲板からの車両積載も可能となっている。艦橋には一応砲座も設けはするが、陸軍が兵装を決めるのでこちらでは特に指定しない。

 史実あきつ丸と同等の大きさでありながら、揚陸艦としてはより高性能な船へと進化出来たと思う。


 その案をちゃんとした設計として構築したのは、当然ながら満賢君である。


「これまで空母というモノを分かったつもりでおりましたが、このような斬新な考えがあるとは感服いたしました」


 と、かなり満足げ。今後、自分の空母設計に活かしてほしいものだ。

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