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ヒカリの戦士と召喚術師  作者: 神楽一斗


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73 帰るべき場所

「あのう、皆様はどなたですか」


 椅子に縛り付けられたミレイが目を覚まし、わたしたちの顔を見渡している。


「ごめん、拘束を解かなきゃね」

 わたしはリカに目配せし、彼女を縛っていたロープと術法を解いた。これまでの事情を聞いたミレイは、泣き崩れた。自身が信じていた女神に裏切られたことがショックだったようだ。


 星の化身は約束を守って諸悪の根源を消し去った。次は人間(こちら)の番だ。


「ところでファウラ。あなた、気軽に請け負っていたけど、当然戻って来られるのよね」

「何のことですか?」

 わたしはとぼけるファウラを軽く睨んだ。

「人類への警告の件だよ。魂の根源と一つにならないといけないんでしょ」

「確かに、それをやったら、わたし個人の人格は消えてしまうかも知れませんね」

 ファウラは当たり前のように答えた。

「ちょっと待ってよ。わたしは犠牲者を出すのは反対なんだけど」

「戦士さんは大げさですね。別に、存在が消えてしまうわけじゃないんですよ。わたしの魂は等しく新しい魂の一部となって受け継がれていくんです。……それにね」

 ファウラはスフィラとラフィスの頭に手を置いた。

「長く生きて色々と見てきましたが、この世界は守るに値する素晴らしいものだと今でも思っています。こっちの世界のことはこの子たちや、あなた方にお任せしますよ」


 ファウラが微笑むと、星の化身が彼女に手を差し伸べる。二人が手を取ると、あたりが光に包まれた。


「全く、最後までわがままな弟子だよ。キリコ、わたしも途中まで送っていこう」

 そう言って、アヤカさんがファウラの側に立った。彼女も元の場所へ還るのだ。

 わたしは覚悟を決めた。わたしの二百倍も生きている彼女の決断は、きっと深い考えの元に下されたものなのだろう。


「敢えてシルファと呼ばせてもらうよ。色々とありがとうね」

「……こちらこそ。後はお願いしますね」

「寂しくなったらまた呼ぶよ。アヤカさんも」

「ええ。ごきげんよう、皆さん」


 三人はそのまま光の中に吸い込まれ、粒となって消えた。


「……さて、わたしたちも帰ろうか」

 残った面々の顔を見渡す。召喚体のアリーとマイ。シルファの忘れ形見のスフィラとラフィス、それからカスミ。シェリルとエレノア親子。リカちゃん入りのアラネスとリーネ。

 大きく歴史が変わった世界で、皆がどうなるのかはわからない。でも、ここにいる全員、承知の上だ。


「ヒカルさん、いえ、ヒカル様。数々のご無礼をお許し下さい」

 レティカが深々と頭を下げた。

「別に謝ることなんてないでしょ」

「いいえ、世界を救う戦士様だとはつゆ知らず、暴言を吐いてしまい、恥じ入るばかりです」

「いいって。これから大変だろうけど、こっちのことはお願いね」

「はい、戦士様のことは代々語り継いで参ります」

 レティカは隣でぼうっとしているミレイの頭を下げさせた。どっちが母親だかわからない。

「あはは、ミレイさんは縛られっぱなしだったんだから、いたわってあげてね」

「はい。お世話になりました」


 ここから世界をまとめるためには指導者が必要だ。彼女なら、うまくやっていけるだろう。


「じゃあ、行こう」


 わたしは空間に手をかざし、ゲートを開いた。異次元召喚の応用だ。この先に繋がっている世界がどうなっているか。それは神のみぞ知るところだ。



*  *  *


 わたしは薄暗いオフィスで目を覚ました。

 時計を確認すると、午前六時。パソコンの表計算ソフトに大量の〝い〟の文字が打ち込まれている。キーボードに指を引っ掛けて寝ていたらしい。

 なんだか頭がぼうっとする。とても長い夢を見ていたような気がするが、よく思い出せない。でも、不思議で愉快な夢だった気がする。

 わたしは大きく伸びをして、顔を洗うためにトイレに向かう。途中の廊下になぜか三毛猫がいて、わたしにすり寄ってきた。この会社、猫なんて飼ってたっけ。


 鏡に映る自分の顔がなんだか懐かしい。随分と久しぶりに見たようだ。


『戦士様ってこういうお顔なんですね』


 頭の中で誰かの声がした。周りを見渡しても誰もいない。まだ出勤時間ではないのだから当たり前だ。


『一度こちらに来てみたかったんですよね。それと、あの時に食べたジンギスカンの味が忘れられなくて』

「アラネス、ジンギスカンなんてそうそう食べられるわけ……」


 反射的に返事をしたが、これは一体どういうことだ。まだ夢を見ているのかと思って頬をつねるが、普通に痛い。


『しばらくこちらでお世話になります。よろしくお願いしますね』

「よろしくはいいから説明しなさいよ」


 わたしの名前は佐倉光(さくらひかる)。しがないシステムエンジニア、のはずだったが、どうやら新たなる冒険が始まる予感がしている、今日この頃だ。

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