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ヒカリの戦士と召喚術師  作者: 神楽一斗


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71 ファウラは語る

「最初の召喚術は、死んだ身内を蘇らせることが目的でした。肉体があるから人は滅ぶ。ならば、最初から魂そのものを体としてしまえばいい。そうして生まれたのが、召喚体なんです」


 シルファ改めファウラは語った。確かに、考えてみれば、マイやアリーは年を取らないだろうし、余程の事がなければ死なない存在だろう。


「時をかけ、我々は召喚体として存在する一族に生まれ変わりました」

「待って。召喚術師そのものが召喚体みたいに聞こえるけど」

「そうですよ?」

『ええっ!』

 わたしが驚くよりも前にアラネスが頭の中で声を上げた。

「なんであなたが驚いてんのよ」

『だって、びっくりじゃないですか』

「びっくりだけども。あなた、仮にも長なんでしょ。全く知らなかったの?」

『お恥ずかしい限りです』

 何百年も知らずにいられる方が、驚くというか、呆れるばかりだ。召喚術師が年を取らず、長命なわけだ。だが、そうなると色々と引っかかってくる。

「待って待って。リーネはどうなの? アラネスの旦那さんは普通の人間だって聞いてるよ」

「召喚術師の子はあくまで召喚体です。両親の愛情が時間をかけて紡いだ精神体とも言えますね」

 文字通りの愛の結晶というわけか。召喚術師一族が皆そうなのなら、アラネスもそうやって生まれたことになるが。


「じゃあ、召喚術師が代替わりするのは何故なの? 死なないのなら、そもそも子孫を増やす必要はなくない?」

「千年以上も召喚術師をやっていると、飽きてくるんですよ。戦士さんもやってみるとわかります」

 そういうものなのか。寿命がせいぜい百年の種族からしたら、到底到達出来ない感覚だ。召喚術師が独特の死生観を持つ理由がようやく飲み込めた。


「さて、ここまでは、よろしいですか?」

「もう、お腹いっぱいなんだけど」

 アラネスたちが召喚体というだけで、この先にどんな秘密があっても驚かない気がした。



「昔々、こちらの世界で生活することに飽きた召喚術師がおりました」

「唐突に昔話が始まったよ」

 ファウラは、わたしのツッコミを無視して語り始めた。


「その召喚術師は、代わり映えのしない生活を捨て、新たな世界に旅立ちました。辿り着いたのはとても美しい星でしたが、そこに住む人々の心は荒んでおり、人と人が醜い争いを続けていました」

「ねえ、その星ってもしかして地球?」

「小さな島国に降り立った召喚術師は、人々を指導するために、自らの国を作ることにしました」

「島国って、日本? その召喚術師ってあなたよね?」

 ファウラは答える気はないらしい。わたしは諦めて、話を聞くことにした。


「狩猟、農耕を生業とした人々は集落を作り、各地に小規模な国が生まれていました。近隣の国同士では度々争いが起こり、召喚術師はオロチやテングなどの精霊を使役して争いを鎮めていました」

「やっぱり日本だよね? あなた、キリコだものね」

 わたしが言うと、ファウラはにっこり微笑んだ。

「キリコというのは、時代に合わせて使い分けていた名前です。当時はヒミコと名乗っておりました」

 わたしは絶句した。彼女が言っているのは、歴史で習うあの人物のことだろうか。ファウラはドヤ顔でわたしの反応を楽しんでいる。悔しいが、聞かずにはいられない。

「……あなた、邪馬台国出身だったの?」

「当時は大変でした。神のように崇められたわたしは、五穀豊穣の祈願から始まり、雨乞いに宇宙人退治に大活躍ですよ」

「待って、最後の宇宙人退治ってなに?」

「ただ、あまりに術法を多用しすぎたせいで、妖怪の類だと見なされるようになってしまいまして」


 ヒミコが邪馬台国を去った理由は調子に乗りすぎたせいだったか。


「その後、世界を転々としまして。古代中国では軍師として活躍し、ヨーロッパでは美術を学びました」

「あんた、歴史の教科書に何回も登場してそうだね」

「はい。中国大陸を統一するまでの武勇伝は今でも読み物として語り継がれていますので、是非ご一読下さい。若干脚色が入っていますがね」


 ここまで来ると、こやつが何者であっても不思議ではない。


「本題はそこではなくて。例の女神の話です」

「そうだよ。結局、あいつは何者なの」

「あれは、かつてわたしが仕留めそこねた、侵略者です」

 一瞬だけ、思考が空回りした。

「……それって、さっき言ってた宇宙人のことよね」

「ええ。肉体が滅んでいるので、今はどちらかと言うとわたしたちに近い存在ですかね」

「精神体ってこと? そんなのにどうやってお仕置きすればいいのよ」

「そこが難しいところでして。わたしもやむなくリカさんと協力してこちらへ呼び出したわけですが、この後どうしたものか」

「だからって、あのままミレイさんの中に閉じ込めておくわけにもいかないでしょ」

「はい、なので、星の力を借りようかと思うのです」

 ファウラはちらりと彼女(巨獣)の方を見た。

「人類への警告の方はわたしが引き受けます。その代わりと言ってはなんですが、あれを処理していただけまけんか。(あなた)にとって、あれは外敵そのもののはず」

 ファウラの言葉を受けて、彼女はニコリと微笑んだ。

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