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ヒカリの戦士と召喚術師  作者: 神楽一斗


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70 魂の根源

 人類への警告。巨獣の恐怖(ビジョン)を具現化し、全ての魂へ刷り込む。実体のないものを具現化したことはないが、今のわたしならなんとかなる気がする。


『魂へ刷り込むということなら、簡単な方法があります。人の魂は元々ひとつですから。星の警告を携え、魂の根源と一つとなればいいのです』

「なるほど。で、どうやるの?」

『ですから、魂と一つになって』

 わたしは嫌な予感がしていた。アラネスは平然と言っているが、例の召喚術師独特の感性のことがある。もしや魂が肉体を離れることを意味しているのでは。

「待って、アラネス。死ぬのは良くないよ」

『死ぬ?』

「あなたたちが良くても、わたしは許さないからね。なんとか他の方法を考えるよ」

 そういうわたしも、ここに来るまでは犠牲になる気満々だったのだが。巨獣(ほし)側がせっかく平和的解決を望んでいるというのに、今更犠牲者など出すつもりはない。

『安心して下さい。こちらから行くのではなくて、魂を召喚するんですよ』

「……そういうことか」


 召喚術師秘伝の、死者を呼び出す招魂召喚。あれならばわざわざ現世で人が死ぬ必要はないわけだ。

「ずっと不思議だったんだけど、死んだ魂って、その魂の根源とひとつになっているのよね。そんな状態でも個人の魂を呼び出せるわけ?」

『そこが、この術の高度なところなのです。大いなる魂に溶け込んだ意志を、再度紡いで形にする。全精力を注ぎ込む必要があるのは、そういう理由があるのです』


 わたしも招魂召喚でアヤカさんを呼び出したが、あの術だけはちょっとしんどかった。


「それなら、アヤカさんにお願いするのが手っ取り早そうだね」

『いえ、彼女は別の時代からお呼びしている魂です。この時代の故人でなければなりません』


 確かにそうか。これから生まれる魂への警告なわけだし、そもそもアヤカさんが帰る時代はもっと未来だ。アラネスにやり込められてちょっと悔しい。


「そうなると、問題は誰を呼び出すか、だけど」

『適任の方がいらっしゃいます。本家本元、召喚術師の始祖の大長(おおおさ)様』

「大長? 長の中でも特別に偉い人って解釈でいいのよね」

『そうです。召喚術を編み出された、わたしのご先祖様に当たる方です』

 これはとんでもないビッグネームが出てきた。わたしからすると、この世界に来る遠因を作った人物でもあるわけだ。

『魂の根源とひとつになって、尚且つ警告を刷り込むとなれば、普通の魂の持ち主では難しいでしょうから』

「そういうものなのね。わたしは特に異存ないけど」

『では、よろしくお願いします』

 自然な会話の流れにまぎれて、アラネスはさらりと言ってのけた。

「……え、わたしがやるの?」

『だって、今のわたしには身体がないですもの。精神体では招魂召喚を成功させるのは難しいかと』

「まったく、丸投げにも程があるよ」

 とはいえ、他に方法があるわけでもない。わたしは覚悟を決めた。本来なら、一度も会ったことがない人物を呼び出すのは困難を極める。でも、今のわたしには取り込んだ幻魔石からもたらされる知識がある。

 太古の昔にこの星に存在したという、大長の記憶を探る。脳裏にぼんやりとその姿が浮かび上がってくる。その名は〝ラフィス〟。


「えっ?」

 わたしは驚いて、潜っていた深層意識の中から現実に引き戻された。

「アラネス、あなたにも見えたよね。どういう事?」

『わかりません。偶然でしょうか』

 まさか、あのラフィスがアラネスのご先祖様だとでも言うのだろうか。


「やっと、辿り着きましたね、戦士様」


 不意にどこからか甲高い声がした。振り返ると、時が止まっているはずの外の世界から、ラフィスがゆっくりと歩いてくる。

「どういう事? あなたは一体……」

「わたしは始まりの召喚術師の片割れです」

 そう言って、ラフィスがニコリと笑う。


「全く、随分と時間がかかったものだよ」


 さらにもう一つ声がする。こちらはスフィラだ。相変わらず、気だるそうな顔でラフィスの隣にやってくる。


「あなた達、まさか」

「そう。マッドサイエンティスト・シルファとは仮の名前。その正体は、始祖の召喚術師、ファウラと申します」

 いつもは白衣を着ているシルファが、銀色のローブ姿で現れた。流石のわたしも、混乱してしまう。


「冗談だよね、キリコ」

「キリコときましたか。まあ、その名前もわたしに間違いはないのですが」

「説明、してくれるんだよね」

 わたしの中の太古の記憶を覗けばわかるのだろうが、ここは本人から聞いておきたかった。


「わたしはこの時代からさらに六千年程前の時代に生まれました。生まれつき魂の声を聞く事が出来たわたしは、召喚術の原形になる術法を編み出したのです」

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