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ヒカリの戦士と召喚術師  作者: 神楽一斗


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66 世界防衛作戦③

 頼もしい仲間たちの活躍により、今いる大陸の巨獣たちは、再生する間もなく、次々に倒された。


『戦士さん、この大陸の巨獣は、残りあと一体ですよ』

「了解」

 シルファからの通信を受け、わたしは最後の一体と対峙する仲間の意識を探った。


「あら、この気配は戦士様ですね」

『すごいね、わかるんだ』

 ラフィスはわたしが知覚を共有した瞬間、すぐに気づいた。


「戦士様の魂はわかりやすいですもの」

『それは褒め言葉と取っていいのかね』


 ラフィスは既に巨獣と戦闘中だったらしく、指先で巨大な黒豹の前足を受け止めていた。


「さあ、元の世界にお帰り」


 彼女の触れていた箇所から、巨獣の体が空気に溶けるように分解されていく。足元に幻魔石を残して、この大陸最後の巨獣は呆気なく消えてしまった。


『前にも見たことあるけど、今の力は何なの? 術法とは違うよね』

「魂に語りかけているんですよ。巨獣は迷える魂の集合体ですから、元の正しいところへ帰るようにお手伝いをしているだけです」

 ラフィスは当然の事のように説明するが、あまりピンと来ない。


『皆さん、お疲れ様です。一旦集合しましょうか』


 大陸の巨獣の掃除が終わったところで、シルファが号令をかけた。


「まずは大成功です。この大陸は制圧しました」

 司令室に集合した面々を前に、シルファは嬉しそうに宣言した。


「この調子なら、残りの大陸も楽勝かな?」

「……そういうのを、フラグっていうんだよ」

 わたしが椅子の上で動きを封じられている女神を一瞥すると、苦々しい顔で答えた。

「負け惜しみ? あんたもタダじゃおかないんだからね」

 この女神は地球人らしいということ以外は、今のところ正体すら掴めていない。諸悪の根源はこいつだ。この世界を救っても、こいつを放っておくと何をしでかすかわかったものではない。

「そんな余裕でいいのか? お前ら、好き勝手にバランスを崩したんだ。このまま何も起こらないと思うなよ」

「どういう意味よ」

「すぐにわかるさ」

 女神は不敵に笑っている。わたしは嫌な予感がして、シルファに視線を送った。

「確かに、他の大陸の巨獣の動きが大きくなっています。一箇所に集まり始めているような」

 モニターには世界中に散らばる巨獣の位置が表示されている。それぞれが近くにいる巨獣の方へ移動している。


「どうやら、巨獣同士で合体しようとしているようですね」

 シルファはいつになく深刻なそうな表情で言った。

巨獣(あいつら)、そんなことも出来るの?」

「もともとはエネルギー体のような存在ですから、理論的には可能でしょう。これは厄介ですよ。ひとつの大陸分の巨獣が合体しただけでも、軽く三十万を超えます」

「何よ、その数値は」

「巨獣の持つエネルギーを数値化した値です。これだけで下手すれば世界を崩壊させられるかも知れない」

 戦闘力的なアレか。どんどんバトル漫画的な流れに向かっているな。

「ちなみに、わたしの数値は?」

「……さっきの戦いで測定した数値は十二万程でした」

「なら楽勝じゃん? 全然本気じゃなかったもの」

 吐息一つで十二万なら、まともに戦えば十倍以上は確実だろう。ここはわたしの出番のようだ。



 わたしはだだっ広い荒野に佇んでいた。山上を覆い尽くさんばかりの漆黒の巨竜が身を横たえ、首をもたげている。

 アラネスによってこの世界に呼び出されて早数ヶ月。まさか、本当に星を救うときが来るとは思わなかった。

 しがないシステムエンジニアだったわたしが、あんな怪物相手に体を張ろうとしているとは。


「戦士様、本当に大丈夫なんですか」

 ポーチから顔を出したアラネスが、心配そうに聞いてくる。

「心配無用だよ。むしろ巨獣の数が減って、好都合なぐらいだし」

「戦士様、わたしに出来ることは」

 こちらはリーネだ。我が娘、小さくなったことでさらに可愛いく見える。愛でたくなる衝動をぐっとこらえる。

「危ないから、その中でじっとしてて。大丈夫、わたしは負けないから」

「戦士様、やめて下さいっ。そういうのを〝ふらぐ〟というのでしょう?」

 アラネスがぷりぷり怒っている。この子、いつの間にそんな言葉を覚えたのか。

「まあ、普通のバトル漫画とかなら、フラグになるかも知れないけどさ」

 わたしは右手を銃のように構え、遠方の竜に狙いを定めた。


「君らの住むこの世界を脅かすヤツを、許さないって決めたんだよ」


 人差し指の先に集中させるのは、雷の力。


天地神明に(エルサーエルタ)我は乞う(ウォルタ ボルツ)

 星に仇なす(クルエイ シカヅテ)厄災を挫き払え(シティキ ウォーテ)


 呪文が口をついて出て来た。わたしの意思でありながら、他人を俯瞰しているような感覚に陥る。一瞬、リカが代わりに詠唱したのかと思ったが、そうではない。わたしの中に取り込まれた幻魔石がもたらす知識の力を感じたのだ。


天導(エル)雷撃(フルガルス)終焉(ヒルト)


 ほんの一瞬だけ、周囲に閃光が走った。遅れてとてつもない爆音が鳴り、地面が震える。巨竜の全身から七色の光が漏れ出て、体内から崩壊が始まる。

 どんなに巨大化しようとも、所詮は巨獣。わたしは力を出し惜しみする気はない。アラネスたちの世界を守るためなら、鬼神にだってなってやる。

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