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ヒカリの戦士と召喚術師  作者: 神楽一斗


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60 女神の目的

 召喚術とは、魂を操作する術法の体系のこと。世界に存在する精霊を使役したり、他者の魂をその身に宿すことを可能とする。

 召喚術は強力な効果を発揮する反面、使いこなすには難易度が高く、さらには特別な血筋を必要とした。

 この世界に存在する召喚術師は、人里離れた集落にひっそりと暮らす者たちだった。あるとき、外の世界から干渉する者〝女神〟に目をつけられるまでは。


 女神は、召喚術師を操り、その世界を我が物にしようとした。その意図は、世界征服のような支配欲によるものではなかった。むしろ、そちらの方が、対処が容易かったかも知れない。


 女神の目的は、ただひとつ。この世界を玩具として、様々な実験を行うこと。酷く残虐で幼稚な発想だった。

 その過程で生まれたのが、世界に災いをもたらすもの、巨獣だった。


 召喚術師は星を守ることを第一とする思想を持つ民族。

 女神は、人間こそこの星に仇をなす存在だと吹聴したのだ。つまり、召喚術師の一族以外は、一度滅ぼすべきだと。


 現実問題として、人間社会には悪意が渦巻いていた。それを憂いていた当時の長は、悪意そのものを具現化し、巨獣を生み出してしまった。


 最初の巨獣は、山をも踏み潰すほどの巨人で、一部では鬼神と称された。鬼神の力に人類では抵抗する術はなく、世界は破壊され尽くした。栄華を誇っていた文明は、一度滅亡してしまう。


 人類そのものが絶滅してしまうことを恐れた召喚術師の長は、鬼神の魂に働きかけ、その巨体を無数に分断した。その成れの果てが、現在の巨獣のルーツである。


 無数に増えた巨獣たちを面白がっていた女神だったが、やがてそれにも飽きてしまう。もう一度鬼神を復活させ、世界を滅ぼしたいと考えた。それは、子供がおもちゃ箱をひっくり返す程度の感覚でしかなかった。


『よくわかったよ。こいつがとんでもない、胸糞悪いヤツということは』

 わたしはリカから身体の操作権をもらい、女神の乗り移ったミレイと対峙していた。


 最初の文明崩壊から、数千年後。それがレティカたちの生きる時代だ。歴史上、この世界は二度の大崩壊に見舞われている。一度目が、鬼神による世界の無差別破壊。そして、二度目が〝超共鳴反応〟による大災害。

 それは、鬼神から分裂した巨獣たちの力を一箇所に集めることで起こった。結果的に世界の大陸の三分の二が荒野と化したという。

 リカは、その超共鳴反応を食い止めようとしているのだ。


「自称女神さん。あなたの企みはわかってるのよ。自由になりたければ、大人しく記憶を消させてもらえる?」

「記憶を……?」

 女神は外の世界からこの世界に接続している状態。つまり、こちらから本体に接触することは困難となる。そうなると、女神の魂そのものか、記憶に作用するしかなくなるわけだ。


「待て。急に流暢に喋りだしたが、お前は誰だ」

「……わたし、リカよ」

「うそつけ」


 なんとなくだが、こいつに名乗るのは危険な気がした。


「わたしの事などどうでもいいでしょ。あんた、今の立場わかってる? 選択肢は多くないと思うけど」

「……フン。この世界を守る、救世主気取りというわけか」

「別にそんなつもりはないけど」


 そんなつもりはないが、アラネスやリーネが生きるこの世界を守りたいとは思う。しばらく旅をして、あの子達の事が大事に思えるようになっていたのだ。


 だが、ちょっと待て。確かにこの女神は世界を壊そうと企んでいる。その事を止めるのは自然な発想だ。しかし、第二の大崩壊が起こらなくなると、どうなるか。

 歴史が変わって、アラネスたちも生まれなくなってしまうのでは。


『リカちゃん。正直に答えて。こいつを止めたら、この世界はどうなるの?』

『もちろん、大崩壊から免れ、多くの命が救われる』

『その先に、アラネスたちはいるのかな?』


 リカはわたしの言わんとする事を察したようだ。しばらく黙っていたが、ぽつりと答えた。


『歴史が変わるとは、そういう事だ』


 多くの犠牲を生むことをわかっていて、それを止めないとしたら、殺人と何が違うのか。これは、〝トロッコ問題〟に近い。世界を救うのか、大切な仲間たちが生まれる世界線を守るのか。

 だが、結果的にこの場合は世界を救う方が正しいに決まっている。未来にアラネスたちが生まれることを知っているのは、本来あり得ない事なのだから。

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