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ヒカリの戦士と召喚術師  作者: 神楽一斗


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59 神託

 祭壇の前に正座している女性がいた。腰より長い銀髪が床にまで広がっている。後ろからだと顔は見えないが、多分アラネスたちと同じ顔なのだろう。


『あれが(おさ)?』

『はい。わたしの母親のミレイです』

 意思疎通の術法を通じて、レティカと脳内で会話する。しばらく見ていたが、ミレイは背筋を伸ばして座したまま、ピクリとも動かない。

『ねえ、ミレイさん、寝てないよね』

『なんてことを言うのですかっ。時を待っているだけですよ』

 レティカはプリプリと怒り出した。冗談が通じないタイプらしい。

『ごめんごめん、そういう(ひと)に心当たりがあったもので』

 アラネスが神託を受けているところは見たことがないが、あやつならやりかねない。

 時とやらをもう少しだけ待ってみるが、一向に何も起こらない。流石にしびれを切らしてきたところで、ミレイの頭がフラフラしているのに気づく。

『ねえ、やっぱり寝てない?』

『そんな馬鹿な事を……』

 と、言いかけたレティカが、微かないびきを聞いて言葉を切る。あれは寝ている。ああいう人、昼休みのオフィスで見たことがある。

 パシンと音がして、ミレイがキョロキョロと辺りを見渡す。レティカ、今母親の頭をはたかなかったか。


『母が大変失礼しました』

『いや、別にいいけども』

 なぜかレティカに謝られた。ちょっとアラネスとリーネ親子に関係性が似ている。


 ミレイはひとつあくびをすると、向かって左側の壁にかかる振り子時計を見やった。針はほぼ正午を指している。

 わたしもつられるようにしばらく見ていたが、針が一向に動かない事に気づく。正確に言うと、とてつもない遅い速度で動いていた。振り子が超スローモーションでゆっくりと振れているのだ。

 一回振れるのに軽く五分以上はかかったと思われる。あまりにも遅いので、一見しただけでは止まっているようにしか見えないほどだ。


 その異様な光景に見入っていると、急に時計が鳴った。それを合図に、ミレイが姿勢を正して両腕を祭壇に向けて掲げる。


「女神様、今こそ我に神託を与えたまえ」


 アラネスにそっくりな彼女の声に反応し、祭壇の女神像の目が微かに光る。まさにその一瞬だった。


『エルサーエルタ ウォルタ ボルツ

 アシクィ シキオ ブージ コム』


 リカがもの凄い速さで呪文を唱えた。すると、女神像から光の玉が飛び出して、ミレイの身体に入り込んだ。


『レティカ、しばらく母親を借りるぞ』

『え?』


 ミレイは掲げた腕をすとんと下ろし、力無くうなだれた。


「もう逃げられんぞ」

 リカが、ミレイに向かって言い放つ。どうやら透明化を解いたようで、アラネス(わたし)の足元が見えた。

 一方のミレイはピクリとも動かなくなっていた。

「聞こえているのだろう。元の世界に戻りたければ、わたしと話をするしかないはずだ」

 リカが脅すように声をかける。すると、ずっとうつむいたままだったミレイがゆっくりと顔を上げた。

 アラネスたちは絶対に見せない、歪んだ表情だ。わたしは一気に警戒心を抱いた。

「……お前か。まさか、こんな手段を取ってくるとはな」

 低めの声でそう言うと、その人物はこちらを冷たい目で睨んでくる。背筋が凍りそうな感覚を覚える。

 リカはそれに対抗するように、じっと睨み返している。


 そして、十分が過ぎた。


「お前、いい加減になんとか言ったらどうだ」

「……ナントカ」

「ふざけるな」

 もしかして、リカはいつもの口下手が発動したのでは。さっきまでの威勢の良さはどこへ行った。

『ちょっと、リカちゃん。どうしたの』

『お察しの通りである。急すぎて、台本はここまでしか出来ていないのだ』

『さっきのやりとり、もしかして用意したセリフ?』

 案の定だった。大ボスっぽいのを召喚しておきながら、どうする気なんだ、この子。


『戦士殿。やはり、力をお借りしたく』

『そういう意味で力を貸すとは思わなかったよ』

 てっきり鬼神の力をあてにされているのかと思っていたのに。


『それで、結局あれは何者なの』

『女神の正体。この世界を蹂躙する悪餓鬼だ』

 噂の女神様とのご対面というわけか。元々胡散臭さは感じていたが、あの冷酷な目を見るに、アラネス達の味方には思えない。


『で、わたしはどうすればいいわけ?』

『ヤツが大人しくこの世界から手を引くように、代わりに説得して欲しいのだ。今から、戦士殿に全てを伝える』

 リカがそう言うと、不意に頭の中に無数の知識が流れ込んできた。


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