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ヒカリの戦士と召喚術師  作者: 神楽一斗


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54 巨獣のいない世界

「あの、戦士様?」

 わたしはリーネの声で我に返った。頭の中でのアラネスへのツッコミに夢中になりすぎていたらしい。

「……あなたはリーネでいいのよね」

「はい、そうですが」

 この子がギガちゃんでないことは知っているが、念のために聞いてみた。リーネは不思議そうな顔をして小首をかしげる。こんな仕草がまた可愛い。

『戦士様、少々リーネに対して、依怙贔屓が過ぎませんか』

『何とでも言いたまえ』

 可愛いものは可愛いのだ。わたしはそこを遠慮するつもりはない。

『わたしという者がありながら、戦士様ヒドいですっ』

『……君はわたしの何なんだい』

 アラネスと痴話喧嘩をしていると、リーネが背筋を伸ばして敬礼のポーズをとった。

「戦士様、レシュタノットを徘徊していた巨獣全二十四体、殲滅完了致しました」

「え、もう?」

 わたしは思わず時計を確認した。作戦開始からまだ三時間しか経過していない。

「皆さん優秀なので、討伐が捗ってしまって。特に賢者様は凄まじい戦いぶりでしたよ」

 リーネが自分の事のように嬉しそうに語る。巨獣は何百年も人々を困らせていた認識だったが。なんというか、この人たち、本気で世界を征服しそうな勢いだ。

「シルファ、これでこの大陸には巨獣は発生しなくなったのよね」

「そのはずです。その辺はしばらくモニタリングを続けて検証しましょう」

 そう言って、シルファは全員に撤収の指示を出し始めた。


 巨獣の掃討作戦から戦士たちが戻ってきた。振り返ってみると、戦士が本職のわたしだけ、結局一体も倒してないような。

「流石に疲れましたよ」

 シェリルがぐったりした様子で、ソファに身体を預けている。そこへ、リーネが何かの包みを持って歩いていく。

「シェリルさんは五体討伐ですね。二位入賞です」

 リーネはそう言って、包みをシェリルに渡した。

「なになに、これ賞品とか出るやつだったの?」

「はい、皆さんの士気を上げるために、シルファさんが提案されたんです」

 わたしがアラネスの昔話を聞いている間にそんなことになっているとは。

「ミルシェさんとカスミさんは四体。同着三位入賞ですね」

「ああ、どうも」

 リーネから包みを受け取りながら、ミルシェが頬をかいている。

「マイさんは五位です」

「我にもあるんですか」

 ミニサイズのフェルをもふもふしていたマイが、賞品を手に目を丸くしている。

「マイさんだけご希望が聞けなかったので、開けてみて下さい」

「では、失礼して」

 マイが包みを広げると、中から白毛がふわふわの猫耳フードが出てきた。微妙なチョイスにツッコむべきか迷っていると、マイは早速被って、姿見に自身を映し始めた。ホクホク笑顔を見る限り、お気に召したようだ。凛々しい見た目のマイが被ると、なんか可愛い。これがギャップ萌えってやつか。

「シルファさんの工房は凄いんです。何でも作れてしまうんですよ」

 リーネがキラキラなお目々で報告してくる。

「それなら、わたしだって具現化の術法で何でも……」

 対抗しようとしたが、リーネは華麗にスルーしてリカの方へ歩み寄っていく。

「そして、見事一位となられたのは、十体討伐された賢者様です」

「……うむ」

 リカは、一言返事して腕組みした。戦闘後ですっかりオフモードに戻ってしまったようだ。

「リカさんのご所望の品は、重量があるので隣の部屋に用意しましたよ。せっかくなので、皆さんでいただきましょうか」

 シルファがそう言って、隣の部屋の扉を開けた。そこは広めの部屋で、丸い山型の鉄板が備えられた席がいくつか並んでいる。これは、紛れもなくジンギスカンのお店そのものだった。


 大陸を救った英雄たち一行による、ジンギスカンパーティが始まった。ここって工房じゃなかったっけ。


 シルファが指を鳴らすと、小型の傀儡がトレーに肉や野菜を載せて運んでくる。

「これ、肉は羊なの?」

「もちろん。黄金羊のお肉ですよ。とろけますよ」

 シルファは手際よく、鉄板の周囲に野菜を敷き詰め、続いてお肉を中央に載せていく。ジュージューと食欲をそそる音がする。これは、良いものだ。

「リカさんの方のお肉は、タレに漬け込んでますから」

「うむ、かたじけない」

 斜め前に座るリカが、慣れた手付きで肉を鉄板に載せている。表情を見るに、隠しきれない喜びが溢れ出ている模様だ。

『これが、じんぎすかんですか。ちょっと味わってみたかったです』

 アラネスが残念そうにしている。そう言えば、これまではアラネスと視覚と聴覚しか共有してこなかった。

『アラネス、味覚の共有って出来ないのかな』

『さあ、必要がないので、あまり考えたことはなかったですね』

『ちょっと試してみようよ』

 わたしは焼きたてのお肉をタレに絡めて、一口頬張ってみた。その味を噛み締めながら、イメージの共有と同じ要領で念じてみる。

『これは……マッタリとして、それでいてしつこく無い。肉の独特の風味を、少し辛いタレが上手く昇華して、旨味を引き立てている』

 なんか食レポが始まったが、上手くいったようでなによりだ。

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