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ヒカリの戦士と召喚術師  作者: 神楽一斗


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50 レシュタノット掃討作戦③

 スフィラはリカに匹敵するほどの術法の使い手。そういう話は聞いていたが、まだ直接は戦っているところを見たことはない。

 見た目はひょろ長くて、チャラくて、いけ好かない男だが、本当にそんな力があるのだろうか。


 荒野を行くスフィラの前に現れたのは、ひねりも何もない、まんま、ドラゴンだった。口から炎の吐息を漏らしながら、スフィラの方をじっと睨んでいる。その巨体は、体長だけでもスフィラの十倍以上はありそうだ。

「リカちゃんの時といい、何か凄く違和感があるんだけど」

「巨獣は術法の力に影響されることはご存じでしょう? スフィラぐらいの術師になると、巨獣の姿を変化させる場合があるんですよ」

 生みの親だからか、シルファは少し得意げに解説した。

「アラネス、リカちゃんは常時あんなのと戦ってたわけ?」

『言われてみると、恐ろしげな巨獣ばかりでしたね。賢者様が鬼神の如くお強いので、目立たなかっただけで』

 三つ首竜を一撃で倒してしまう術師の中にいたなら、アラネスも怖いものなどなかっただろうな。


 スフィラはドラゴンの方を面倒くさそうに見ると、首を回しながら準備運動を始めた。

 以前、傀儡の身体を壊したというからには、きっと派手な術法を使うのだろうと予想する。彼は腕を広げると、呪文を唱え始めた。


『天と地の狭間において、万物を司る許しを請う』


 スフィラの周囲に光の渦が生まれて、その目が巨獣のように赤く光った。

 目にも止まらないほどの物凄いスピードで、スフィラはドラゴンに襲いかかった。拳や蹴りで、ドラゴンを打ち据えている。その動きはマイよりも数段早い。

「え、何あれ」

金剛不壊(こんごうふえ)の術法ですね。身体能力を一時的に強化するんです』

 自分の傀儡を壊したのって、もしかしてあの術法では。不壊とは一体。


 スフィラの蹴りで派手な音を立ててドラゴンが倒れる。スフィラは上空に飛び上がると、両手から大量の光弾をドラゴン目掛けて撃ち出した。こういうやつ、どこかの漫画で見たことあるような。

 スフィラの派手な攻撃で、辺り一帯に土埃が舞い上がる。モニターからは何も見えなくなってしまった。

「賢者様に匹敵するというのは、伊達ではないですね」

 リーネが感心しているが、こういう技を使うと、大概敵はケロッとしているのが定石だ。

「油断して、足元をすくわれるパターンと見たね」

 わたしが言うと、シルファが鼻で笑った。

「おやおや、うちのスフィラの実力をご存じないようですね」

「実力はどうだか知らないけど、用心するに越したことはないでしょ」

「じゃあ、勝負しますか? 巨獣(ドラゴン)を仕留めたかどうか」

 ぶっちゃけ、仕留めている可能性の方が高いのだが、認めるのもなんだか癪に障る。

「いいよ、何を賭けるの」

「リーネちゃんを一日愛でる権利でどうです」

「勝手にリーネを巻き込まないでくれる?」

 こやつ、何かと言うとリーネの名前を出してくる。油断も隙もあったもんじゃない。

「じゃあ、勝ったほうが地球(むこう)での恥ずかしい体験を告白するということで」

「……オーケー」

 既に嫌な予感がしていたが、モニターを見つめ、視界が良くなるのを待つ。


 しばらくして、薄れていく土煙の中から、ドラゴンのシルエットが現れた。

「ほら、言わんこっちゃ……」

 と、勝ち誇ろうとしたが、それは既に灰と化した抜け殻だった。スフィラが腕を払うと、ドラゴンだったものは四散してしまった。

「ふふん、どうです戦士さん。ちょっと漫画の見すぎですよ」

 シルファは憎たらしい顔で笑っている。殴りたい、この笑顔。


「約束は約束ですからね」

「……わかってるよ」

 勝負に負けたわたしは、恥ずかしい話をする羽目になった。

「……高校の頃だよ。数学の授業で当てられて、前で答えを書くことになったんだけど」

「ほうほう」

「わたし、向こうでは背が低かったから、上の方に手が届かなくて。椅子の上に乗って答えを書いたわけよ」

「なるほど」

「答えを書いて、椅子から降りたときに、ちょっとざわってなって。その時はわたしは気づかなかったんだけど」

「どうしたんです?」

「……あとから聞いたら、クマが見えたって」

「クマ? 動物のクマですか」

「高校だから、制服はスカートだったの。それが椅子の背に引っかかったらしくて。……わかるでしょ?」

「なるほど、期せずして、くまパンをご披露された訳ですね」

『戦士様、くまパンとは何でしょう』

『余計に恥ずかしくなるから、真面目なトーンで聞かないで』

 なんで異世界でパンツの話をしているんだ、わたしは。

「しかし、意外ですね、くまパンとは」

「うるさいな。その頃はうら若き少女だったんだよ」

 十数年後に、戦士様などと呼ばれていると知っていたら、恥ずかしさも倍増した事だろう。


「くまパン。実に、創作意欲を掻き立てる響きです。いやあ、実にいい話を聞かせて頂きました」

 シルファは、褒めている感じの口調だが、明らかに小馬鹿にしている。

『それでは、次はわたしの番ですね』

 シルファを本当に殴ろうか考えていると、アラネスが妙にやる気をみなぎらせた感じで思考を遮ってきた。

『……急にどうした』

『いえ、戦士様とわたしは一心同体ですから。戦士様ばかりに、身の上話をして頂く訳にはいきません』

『どういう理屈だよ。別にいいけど』

 正直、アラネスの昔の話は聞いておきたい。色んな意味で。

『それでは、不肖、わたしことアラネスの、聞くも涙語るも涙の人生をお話しましょう』

 これ、わたししか聞こえてないが、大丈夫だろうか。

『……お話は、八百十八年前に遡ります』

『誕生からかよ』

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