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ヒカリの戦士と召喚術師  作者: 神楽一斗


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45 リカちゃんの傀儡

 * * *


 我に返ると眼前にスフィラの顔があったので、わたしはビンタしそうになったが、なんとか我慢した。

「今の、過去の映像なの?」

「超古代の記憶、らしいよ」

「らしいって、どういうことよ」

「本当に超古代のものなら、何万年も前の話だ。証明のしようがないじゃないか」

 何故スフィラ(こやつ)が威張っているのだ。グーで殴りたい。

「リーネにそっくりな人がいたよ。召喚術師みたいだったけど」

 リーネに伝えると、伊達眼鏡の端っこをくいっと上げて、わたしをじっと見てきた。

「わたしのご先祖様でしょうか」

 あれが本当に過去の記録なのなら、あり得なくもない。

「召喚術師って何年くらい生きられるの?」

「平均すると、およそ二千五百年程と言われています」

 アラネスですら、まだ三分の一もいってないのか。もはや魔族的な寿命の長さだ。

『ね? わたしはまだ若輩者でしょう?』

『八百年も若輩者でいる方がどうかと思うよ』

 何故かアラネスが得意気に言うので、率直な意見を述べておいた。


 リカたちは話を終えたらしく、シルファがおもむろに席を立った。隣の部屋で何やらガチャガチャやりだしたかと思うと、台車に首のない傀儡を乗せて現れたので、一瞬ぎょっとする。

「何が始まるの」

「リカさん専用の傀儡を用意するんですよ」

 台車に乗っているのは、女子高の制服風の、紺色のブレザーを着た女性型の傀儡。首がないのでなんとも不気味だ。

 シルファは冊子を持ち出して、エレノアに渡した。前に見たことがある、傀儡のパーツカタログだ。

「リカさんのお好みは?」

 シルファが聞くと、カタログがエレノアの手を離れて、空中に浮かんだ。頁がひとりでにめくれていく。リカの術法のようだ。

 カタログは、真ん中辺りまでめくれたところで、音もなくシルファのところへ飛んでいく。

「……なるほど、そうきましたか」

 頁を確認したシルファは、ニヤついた顔で頷くと、台車の上に乗っていたケースを開けた。中からマネキンの頭のようなものを取り出して、傀儡の首に差し込む。見た目は人肌の質感があるが、顔と髪の毛がない。


 シルファが傍にあったパネルを操作すると、天井からアームが伸びてきた。

「えーと……二十七番でしたね」

 アームが握るペン先から光が照射されて、傀儡の顔に溝を刻んでいく。プログラムされた顔の造形を描き出しているようだ。

 隣のリーネが口を開けたまま、アームの動きを追いかけている。色々と見てきたのでもう慣れたが、シルファの技術はオーバーテクノロジー気味だ。

 目や口の形が刻まれると、眉毛やまつげのパーツがアイロンプリントのように貼り付けられていく。

 最後にシルファがカツラを被せて、美容室とかで見る、頭を覆う機械にかけた。

「出来上がりです」

「なんか、地下アイドルっぽいね」

 黒髪のツインテールに、服装スタイル。なんというか、一世を風靡していたグループの匂いがする。リカの趣味だろうか。

『あいどるとは何ですか?』

『ざっくり言うと、歌と踊りで人を楽しませる存在、かな?』

『なるほど、舞踊楽団のようなものですね。わたしも少し嗜んでいたんですよ』

 多分、概念的には微妙に違うが、まあいいか。

『……ていうか、アラネスって踊れるんだ』

『代々、召喚術師に伝わる舞踊があるんですよ。戦士様をこちらにお呼びした時も、女神様に捧げるために踊っていましたし』

 それはちょっと、どんな感じか見てみたい。


 エレノアが調整した傀儡と向き合って座る。今から、エレノアから傀儡へ、リカの引っ越し作業を始めるのだ。

「短い間でしたが、お元気で」

「そんな大げさな」

 なせかエレノアが涙ぐんでいるので、思わずツッコんだ。

「だって寂しいじゃないですか。身も心もひとつだったのに」

「いやいや、心は違うでしょ」

『わたしはわかります。あれは身が引き裂かれる思いですもの』

 アラネスが共感しているようだが、身体を共有した相手に依存するのは、召喚術師共通の感性だろうか。多分、この姉妹特有のものだな。


「……リカさんの反応を確認しました。身体は動かせますか?」

 モニタを確認していたシルファが傀儡に向かって問いかけた。傀儡の目が開き、ゆっくりと立ち上がった。そのまま姿見の前まで歩くと、くるくる回って自分の姿をひとしきり確認している。

「おおぅ……」

 回るのを止めたかと思うと、今度はうめき声とも、唸り声ともつかぬ声を上げて、何やらポーズを取り始めた。

 ニヤけた表情から察するに、注文した『自キャラ』がお気に召した様子だ。

「いかがですか、動かしてみた感じは」

「すこぶる、良い」

「何よりです。後は、もう少しだけ、運動性能を確かめたいんですが」

「良かろう。近くの巨獣で試してみよう」

 そう言うと、リカは嬉々として外へ出て行ってしまった。口数が多くなっているところを見ると、相当テンションが上がっているようだ。

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