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ヒカリの戦士と召喚術師  作者: 神楽一斗


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34 共鳴反応

 三ツ星の保安官として得られる報酬は大金で、持て余すかと思っていた。この大食漢(カスミ)がついてくるまでは。

 カスミは、食べ方こそある程度のマナーを身に着けたものの、食べる量が半端じゃなかった。一人で十人前をペロリと平らげる上に、高級な料理ばかり要求してくる。シルファは維持費をわたしに押し付けたかっただけではないかと勘ぐってしまう。

 結果、資金の調達の意味でも、以前より積極的に巨獣を狩らざるを得なくなった。


 リドスよりさらに北に向かったところに峡谷地帯が広がっている。大きな街などはない地域なのだが、なぜか巨獣の反応が多い。わたしたちは手当り次第に巨獣を幻魔石に変えていった。


『此の地に眠る(いにしえ)の精霊よ。力を解き放ち、眼前の敵を滅せよ』


 シェリルが呼び出した大鎌を持つ精霊が、ミミズの巨獣を細切れにする。

「相変わらず、えげつないことするね、シェリル」

「いやいやいや、僕が命令している訳じゃないですからね」

 今更だが、わたしのパーティには、とんでもない猛者たちが集まっている。カスミが加わったことで、世界征服だって出来そうな気がしてくる。

「幻魔石、回収しましたよ」

 シェリルから石を受け取って、リーネに渡す。本日五つ目の幻魔石だ。

「そろそろ抽出しましょうか。あまり一箇所に幻魔石を集めておくのは得策ではないかと」

「馬鹿でかい巨獣が生まれるとか?」

「共鳴反応という現象が起こりやすくなるんです。石の中身にもよりますが、場合によっては自然災害にも匹敵する力が呼び起こされるとか」

 リーネが神妙な顔で解決する。この子が言うと、説得力が段違いだ。

「脅かさないでよ。そんなに危ないんなら、早く抽出しちゃおう」

 リーネは五つの幻魔石を傍らの岩の上に並べると、両手をかざしていつものように呪文を唱えた。


『悠久の時と共に紡がれし、尊き命脈の記憶よ。我が意に応え、今ここに顕現(けんげん)せよ』


 どこか、いつもと様子が違った。リーネの呪文に反応した五つの石は、輪を成してクルクルと回転を始めた。石の妖しげな光が、順番に隣の石へと移っていく。わたしの霊力が危険を察知したが、僅かに遅かった。稲妻のような閃光が四方にほとばしって、空間が裂けた。


 異世界で死ぬとどうなるのだろう。アヤカさんは普通にこちらで呼び出すことが出来たが、元は地球の人間だ。実は死後の世界は繋がっていて、どちらの世界とも行き来が出来るとしたら。


『……戦士様』


 ぼうっとする頭の中でアラネスの声が聞こえる気がした。このまま死んだとしても、アラネスたちに呼んでもらえばまた会えるだろうか。


『あの、戦士様、気づいてますか?』


 こちらに来てからの数ヶ月、色々ありすぎて消化不良気味だが、刺激的ではあった。しがないシステム屋を続けるよりずっと充実していたかも知れない。


『戦士様ってば』

「うるさいな、聞こえてるよ」

 アラネスと会話が成り立つということは、わたしは生きているらしい。眠たいまぶたを仕方なく開けた。

「……ここ、どこ?」

 わたしは森の中に倒れていた。すぐそばに川が流れていて、せせらぎの音が聞こえてくる。

『わたしにもわかりません。違う大陸に飛ばされたのでしょうか』

「リーネたちは?」

 周りを確認するが、人っ子一人いない。森の中をしばらく探してみたが、リーネたちはどこにも見当たらなかった。

『はぐれてしまったみたいですね』

 アラネスは淡々とした口調で言った。

「あなた、よく冷静でいられるね。娘の安否がわからないんだよ」

 召喚術師たちのこの感性だけは理解出来そうもない。

『リーネやシェリルならば無事です。魂の波動を感じますので』

「そうなの? 場所もわかる?」

『いえ、そこまでは』

 ひとまずあの子達が無事なのを聞いてホッとする。

「カスミは大丈夫かな」

『あの方は魂がないですからね。でも、魔導環でわかるんじゃないですか』

 そう言えば、カスミに使われている幻魔石の情報を登録したのだった。わたしが魔導環に地図を表示させると、近くに登録済みの反応がひとつ。


 少し離れた茂みで、フェルがゴロゴロと地面に身体を擦り付けていた。どうやらマタタビに似た植物が生えているらしく、フェルは夢中になって気づかない。それよりも、フェルの腹をしきりにもふもふしている銀髪の女性の方が気になった。

『……エレノア』

 頭の中で、アラネスのつぶやくような声がした。どこかで聞いたことがあるような名前だ。

「誰だっけ、エレノアって」

 わたしが言うと、フェルをモフっていた女性と目が合った。

「ひっ!」

 彼女はわたしを見るなり怯えた表情になって、後退りしだした。

「ひっ、人違いですっ!」

 そう言って、彼女は物凄いスピードで逃げていく。あっという間に姿が豆粒みたいに小さくなっている。あの脚力は並の人間ではない。

『追ってください、早く!』

「追うの? ……フェル、行ける?」

 フェルが起き上がってにゃんと鳴く。わたしはフェルに乗って彼女の後を追いかけた。

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