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ヒカリの戦士と召喚術師  作者: 神楽一斗


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33 幻魔石の闇

「カスミのこと、どうかよろしくお願いしますね」

 わたしたちは、シルファとラフィスに見送られ、家を出た。

 どうやら、スフィラたち双子は、カスミのお守り役をおびき寄せるためにシルファが差し向けたらしい。素直に協力を求めればよいものを、回りくどいというか、変わっているというか。


 わたしたちはリドスの中央通りに出た。これからどうしたものか、カスミの顔を見ながら考えていると、突然その瞳が点滅を始めてどきりとする。

「ご主人様、動力源不足ですわ」

「あなた、幻魔石で動いているんじゃなかったっけ」

「幻魔石はわたしの根幹知能の動作を司っているのですわ。出力系には一日三回、別の動力源補給が必要なのですわ」

「……要するに、お腹が空いたわけね。食べ物なら何でもいいの?」

「現在の有機動力回路の状態からすると、この通りにある『黄金の羊』の名物、コガネヒツジの厚切りステーキが必要ですわ」

 カスミは淡々と答える。なんだ、そのピンホイトな注文は。


 『黄金の羊』は、お金持ち御用達の高級レストランだった。贅沢なお嬢様だが、六割引の特権もあるし、お金の方は問題ない。それよりも、見た目にそぐわない食べっぷりの方が問題だった。お嬢様がワイルドに手づかみで肉を食いちぎる。ほとばしる肉汁が目に染みそうな状況である。

「カスミ、せめてフォークを使ってくれない?」

 流石に周りの視線が気になって、カスミに注意した。

「承知したのですわ」

 カスミはフォークをつかむと、壁に飾ってあるダーツの的目掛けて投げつけた。物凄いスピードで中央に突き刺さったが、同時に周囲の視線も刺さりまくりだ。

「……リーネ、この子に食べ方を教えてあげて」

 カスミはリーネの動作をトレースして、何とか様になるところまでこぎ着けた。早々に学習を進めないと、わたしたちが恥をかく羽目になりそうだ。


 シルファの話だと、カスミは対巨獣用に色々と武装しているらしい。幻魔石集めも兼ねて、わたしは魔導環で手近な巨獣を探して、カスミの戦闘能力を確かめることにした。

 町はずれのごみ廃棄場に出没した、巨獣二百三十三号は、ネズミの形状をしていた。鋭く光る赤い瞳でこちらを睨みながら、体勢を低く構えている。虫よりも幾分かはマシだが、巨大なリアルネズミは、どこぞのマスコットのような愛嬌などない。

「カスミ、あの巨獣の退治、任せてもいい?」

 わたしは、隣でじっとしているカスミに指示を出した。

「問題ありませんわ」

 答えるや否や、カスミは巨獣の前に颯爽と立ちはだかると、飛び膝蹴りを繰り出した。巨獣は顎にまともに膝を食らって、仰け反りながら倒れ込む。その土手っ腹に、宙返りから急降下したカスミの第二撃がめり込んだ。わたしは思わず自分のお腹を押さえてしまう。

 耳障りな金切り声をあげて巨獣がもがいているところへ、カスミは右手を突き出した。ミサイルでも撃つのかと思ったが、重低音が響き渡るだけで、何も飛び出す様子はない。

あるじ、見ない方がよろしいかと」

 いつの間にか傍らにいたマイが、わたしとリーネの目を覆った。

「うわぁ」

 直後、シェリルのうめき声のあと、急に静かになった。細かい想像はやめておくが、凄惨な現場だったのは間違いない。


「対生物用の戦闘兵器『生者必滅』ですわ。細胞を自壊させて、生命活動を不能にするのですわ」

 わたしに幻魔石を差し出しながら、カスミは覚えたてのはにかむ笑顔で報告した。可愛い顔して、やることがえげつな過ぎる。

「もうちょい綺麗な感じの退治方法はないのかい」

「それでしたら『百花繚乱』が見た目の美しさは随一ですわ」

「……一応聞くけど、どういう兵器なの」

「強力な火薬玉で、内部から炸裂させるのですわ。花火のように散る様は……」

「それ、血の雨が降るやつ」

 設計者シルファの趣味なのだろうが、アンバランスが過ぎる。戦闘兵器は目をつむるとして、普段の立ち振る舞いだけでも矯正せねば。リーネにお願いして、能力抽出の応用で知識の抽出をコントロール出来ないか試してみた。出来るだけ、一般常識を身に着けさせる方向で。


『悠久の時と共に紡がれし、尊き命脈の記憶よ。我が意に応え、今ここに顕現けんげんせよ』


 リーネの手のひらから魔導石がふわりと浮かぶ。ここまではいつも通りだったのだが、急にリーネが驚いたように飛び退いた。抽出途中の石が光を失いながら地面に転がる。

「どうしたの、リーネ」

 わたしが駆け寄ると、リーネは青い顔をして震えていた。

「な、何か、とても恐ろしい顔がこちらを見ていた気がして……」

 そう言うと、リーネはわたしに抱きついてきた。相当怖い思いをしたらしい。ひとつだけ、思い当たる事はあった。前にマイに巨獣が生まれる理由を聞いたとき、不自然な言動になった。幻魔石に眠る知識を探ろうとすること自体が、禁忌とされているかのように。

 これ以上はリーネに危険が及ぶかも知れない。わたしはアラネスに幻魔石を任せて、いつも通りの抽出をするに留めた。

 その結果、カスミの語尾がちょっと変わった。

「新しい知識を得て、生まれ変わった気分でござる」

「なんで忍者風なの」

「ニンジャとは何でござる?」

「……前のがいい。ですわに戻して」

「どうしてでござるですわ?」

 幻魔石の闇が深まったが、カスミのポンコツさも深まってしまった。

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