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ヒカリの戦士と召喚術師  作者: 神楽一斗


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20 スフィラ

「どちら様ですか」

 わたしが聞くと、その男は長い髪をかき上げた。

「君等と同じ三ツ星の保安官だよ」

 男は、やたらとアクセサリ類を身に付けているので、動くたびにジャラジャラと音がする。顔は中性的な美男子。妖艶な笑みを浮かべていながら、目は笑っていない。わたしは初見で、最大級の警戒心を抱いた。

「そうですか、さようなら」

 わたしはシェリルの手を引いて立ち去ろうとした。

「つれないなぁ。同じ三ツ星でしょ。滅多に会うこともないんだから」

 男は左腕に魔導環を付けていた。色は派手なオレンジだ。

「何か御用ですか」

「君でしょ、五十三号を倒した、美少女保安官っていうのは」

 そんな呼ばれ方は初めて聞いたが、こっちの大陸にまで噂が広まっているとは意外だった。

「こんなに華奢な女の子だとは思わなかったよ」

 彼は、わたしの全身を品定めするように観察すると、顎をなでた。

「とても指一本で巨獣を倒すようには見えないね」

「……なんですか、指一本って」

 どれだけ尾ひれがついているのやら。この世界は、地味にネットワークは発達しているらしいが、正確性においては微妙かも知れない。

「なるほど、召喚術だね? 君から気配を三つ感じる」

 わたしは彼の顔を改めて見た。この人、アラネスとマイの気配を感じ取ったというのだろうか。

「僕も君と同じでね。召喚術師に強化してもらったクチなんだ」

「そうですか。で、ご要件は」

「ハハ、あまり歓迎されてないね。三ツ星同士、親睦を深めようというだけなんだよ。僕はスフィラ。どこかでまた会うこともあると思うよ」

 そう言うと、彼は手を差し出してきた。わたしは二度と会うつもりはなかったが、無下にしすぎるのもアレなので、その手を握った。

「よろしく、地球の佐倉光さん」

 彼が笑みを浮かべながらそう言った。わたしの中の警戒心が、限界突破した。

『アラネス、術法お願い』

 わたしは手を振りほどくと、アラネスに呼びかけた。

『これは何ですか?』

「ディス・イズ……ワッパ?」

 昔の刑事ドラマのような表現になったが、わたしは銀色に光る手錠を作り出して、男の両手に素早くはめた。

「あなた、何者? なぜわたしの名前を知ってるの」

 わたしはこちらの世界ではヒカルとしか名乗っていない。アラネスですら、フルネームは知らないぐらいだ。

「ごめんごめん。僕は触れた相手の魂を感じ取る能力があってね」

 彼はいつの間にか手錠を取り外していて、人差し指に引っ掛けてクルクル回していた。

「安心して。僕は君等の味方だから。困ったことがあったら、魔導環それで連絡してよ」

 わたしの魔導環に、連絡先通知の表示が出た。彼の魔導環のものらしい。

「またね、異世界から来た戦士様」

 彼はすれ違いざまに、わたしの耳元で囁いた。意識を揺さぶられるような感覚がして、一瞬だけ、気を失いそうになる。振り返った時には彼の姿は消えていた。


『大丈夫ですか、戦士様』

 わたしはしばらくぼうっとしていたらしく、アラネスの声で我に返った。

「なんですかね、今のは。怪しい雰囲気がプンプンしてましたけど」

 シェリルが腕組みをして男が出ていった先を見つめている。男を警戒して柱の陰に隠れていたリーネも、そろそろと出てきて眉をひそめた。

「少なくとも、二体は召喚体を身に付けていたようです。誰かに召喚術を施されたものかと思いますが」

「三ツ星の保安官なら、あり得ない話じゃないんでしょ」

「一体ならともかく、複数の召喚体となると、戦士様と同じような、特別な魂を持っていなければなりません」

 まさか、あの人も、わたしと同じ世界からやってきたとか。

『それはどうでしょうか。異次元召喚は、わたしにしか出来ませんし』

 アラネスがわたしの思考に反応して答える。ここで考えていても仕方がないか。お腹も空いてきたので、店を探すことにした。


 魔導環の案内に従って街を歩くと、小さいが雰囲気のいいお店にたどり着いた。マイとアリーも呼び出して、一緒に中に入ることにする。

 店内には他には客はおらず、貸し切り状態だ。五人で円卓を囲んで座ると、エプロン姿の店員さんが注文を取りに来たので、おすすめを人数分頼んだ。

「それにしても、女神様は有名人なんですね。ご一緒出来て光栄です」

 シェリルが興奮気味に言うが、わたしはピンと来ていない。そもそも、巨獣を倒すのにも、わたしの力というより、アラネスやマイの力を借りている。

「シェリルは正真正銘、自分の力で巨獣をやっつけたじゃない。あなたの方が凄いと思うけど」

「いえいえ、僕なんて、アカミミミミズにも満たない存在ですから」

 なんだ、その舌を噛みそうな名前の生き物は。おそらくシェリルは、いつもの調子で自分を卑下しているということらしい。

「今日から三ツ星認定を受けたんだから、そんなことも言ってられないよ」

 三ツ星認定の条件は、巨獣を倒すこと。そういう意味では、わたしが認定を受けて良かったのかと思えてくる。今でこそ、自力で巨獣に対抗できる方法もあるが、リーネは自分の術法でイカの巨獣をなんなく倒してみせたし。

「申請すればリーネも三ツ星認定、受けられるんじゃない?」

 わたしが聞くと、リーネは首を横に振った。

「わたしには、おさである母の補佐をする役目がありますから」

 確かにリーネが前線で戦う姿は想像しにくいし、あまりやらせたくはない。


 しばらくして、料理が運ばれてきた。森で採れた山菜をふんだんに使った家庭料理。実家に帰ったような気持ちになって、ほっこりする。リーネは娘だし、シェリルは姪っ子。ある意味、本当の家族でもあるわけだ。マイとアリーは従者といったところだが、こういう場所ではちょっと目立つかも知れない。特にアリーの姿は金髪ロングに、全身白装束。上品にスープを飲んでいる姿が神々しすぎる。他に客がいなくてよかった。

「アリーのその服には何か意味があるの?」

「わたしは存じかねます。この姿は、創造主様から頂いたものですから」

 創造主というと、リーネか。わたしがリーネに視線を送ると、何故か恥ずかしそうに目を逸らした。

『召喚体の姿は、召喚術師の創り出す幻想に基づくものです。ちなみにマイの場合は、二百年ほど前に会った、ある英雄の姿を模しています』

「じゃあ、アリーにも基になった人がいるわけよね」

 リーネは湯気が出そうなほどに顔を真っ赤にしている。

「それなら多分、『魔法伝記メルミル』に出てくる……」

 シェリルが何か言おうとしたが、リーネが今まで見たことのないほどの反応速度でその口を塞いだ。

「余計なことを言わなくていいんですっ」

 リーネが息を荒らげながら目で制してくるので、その場はリーネの迫力に負けて引き下がった。


 その夜、宿の本棚に『魔法伝記メルミル』が並んでいるのを偶然見つけた。子供向けの絵本で、いわゆる魔法少女が活躍する物語だ。その主人公の母親で、魔法の先生でもあるキャラクターが、アリーにそっくりだった。

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