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第5幕 その頃、王国では

人物表記追加しました<(_ _)>誤字報告でご指摘のあった部分を修正しました。誤字報告ありがとうございます(〃´∪`〃)ゞ



―――シャーロットが嫁いでからおよそ1週間。


シャーロットはザカリィのヤンデレ溺愛っぷりを堪能していたのだが。その頃王国では大変なことになっていた。


「アリー、アリアンヌはどこにいる!」

「落ち着いてください。エンバルト殿下」


王太子殿下の執務室で業務に勤しんでいた公爵家の嫡男で、王太子殿下の補佐であるヴェインを捕まえたエンバルトは怒り狂っていた。


他にも彼の取り巻きである近衛騎士団長の次男・アレクセイ、筆頭魔法士長の長男・トーリ、帝国から留学に来ている褐色野性的皇子・ネイサンも集まっている。


「妹は、体調を崩しておりまして」

「ここ1週間、ずっとそればかりだ!彼女は聖女で私の婚約者だぞ!?国宝だ!それなのに!見舞うことも許さないとは一体アリーに何をした!?」


「そうそう、エンバルト」

「んな、誰だ!?」

エンバルトが血相を変えて振り返ると、そこには氷の微笑を浮かべる兄である王太子・エアハルトが立っていた。


「あ、兄上?」


「お前の花嫁が今日、我が国に到着したのだ」


「は?花嫁?アリー、アリアンヌが?」


「何を言っているんだ?お前は。お前の婚約者は彼女・リリーア姫だぞ」

と、エアハルトの後ろから現れたのは黒い髪に美しい顔立ち、赤い切れ長な瞳を持つ美少女で、髪を低い位置でツインテールに結っている。そして頭には白く長い歪んだ角が2本生えている。


「は、だれ?」


「だからお前の婚約者だ。彼女は魔物の国の王妹でな。無事引継ぎ業務が終わったからと、ようやくこちらに嫁いでこられたんだ。遅くなって悪かったな」


「俺の婚約者はアリアンヌでは?兄上も認めてくださった。父上も」


「私と父上が認めたのはシャーロット嬢との婚約破棄であり、お前とアリアンヌ嬢の婚約は認めていないぞ?政略結婚だ。お前も王子なのだし腰を落ち着けろ」


「兄上はどうなさるんです?むしろ兄上がっ」


「何を言う?俺は既に婚約者を決めたぞ。帝国の第2皇女だ。美人だぞ。紹介しよう、ヴィーラ」


「はい、エアハルトさま」

そう答え、部屋に入って来たのは紫色のストレートロングヘアの長身の美女で瞳はエメラルドグリーン、肌は褐色だ。


「は?ま、待ってください!アリアンヌは聖女ですよ!?国として聖女と王族が婚姻を結ぶのは慣例であったでしょう?」


「確かにそうだがそれは魔物の国と対立していたからこその慣例だ。私はこの前の外交で魔物の国と同盟を結んできたので必要ないぞ」


「え?」


「両国の友好の証としてシャーロット嬢を嫁がせリリーア姫がこちらに嫁いできた。魔物被害についてもリリーア姫がいれば大体の魔物は恭順の意を示すからな」


「えぇ、お任せください。聖女さまのためにも」


「んなっ!?アリーのためだと!?アリーはお前なんかよりも数倍気高く美しく、とっても素敵な子だったんだ!俺が真に愛しているのはアリーなんだ!!」


「では、何故止めなかったんです?」

きょとんとして首を傾げたのは、ヴェインであった。


「は?」


「見送り、来られましたよね。止めませんでしたよね」


「俺が、いつ、アリーを見送った?」


「愛してると言いながら、エンバルトさまも含めそちらのお3方も止めませんでしたよね?」


『は?』

近衛騎士団長の次男・アレクセイ、筆頭魔法士長の長男・トーリ、帝国から留学に来ている褐色野性的皇子・ネイサンも同様にきょとんとしている。


「妹“たち”は先日、魔物の国に嫁ぎましたので」


「え?嫁いだのはシャーロットだろう?」


「いいえ。シャーロットとアリアンヌ以外の誰がいますか?」


『はああああああぁぁぁぁぁぁっっ!!?』

エンバルト、アレクセイ、トーリ、ネイサンが仰天していた。


「気付かなかったのですか?殿下方も私と一緒に手を振りましたよね」


「え、お前と?」


「魔物の国王陛下が迎えにいらして、ふたりとも馬車に乗り込んで旅立っていきました。あぁ、ふたりともお嫁に行っちゃってお兄ちゃんは悲しい。おかげで毎日妹たちが残していったドレスやアクセサリーを見ながら服や私物をくんくんしながら妹たちを懐かしむ日々」


「まぁ、待て。今度彼女たちが国を訪れる時にでもゆっくり家族で過ごすといい」


「あぁ、ありがとうございますエアハルトさま、ずびっ!両親も喜びますよぉ~!!」


「な、何を言っているんだ!?なら、今すぐ呼び戻せ!」

エンバルトが叫ぶ。そして取り巻き3人衆も続く。


「ではヴィーラ、リリーア姫、後はこのバカ4人を頼めるか?」


『お任せください、殿下』

ヴィーラとリリーアはそろって優雅に答える。


「では、エアハルトさま。会議の時間ですので行きましょうか」

「あぁ、ヴェイン」


「ちょまっ!兄上!?」

付いていこうとするエンバルト他3人は、謎の壁にぶつかり進めない。


「あら、リリーアちゃん。それ、便利な魔法ね」


「えぇ、ヴィーラお姉さまにもお教えしますわ」


「ど、どう言うつもりだ!魔物女!」

エンバルトがキッとリリーアを睨みつける。


「どう言うつもりもなにもあなたたちこそどう言うつもりですか?」

リリーアが放つ魔物の覇気にびくんっとエンバルトが震える。


「そうですね。ネイサン、あなたも正座なさい」


「ひっ!?姉上!!?」

ネイサンの顔が青くなる。


「全員、正座なさい」

有無を言わさぬヴィーラの般若の笑みに4人は凍り付き、正座する羽目になった。

―――そして。


「ついでに、太ももの上に重しをえいっと」


『ぐはっ』

そこには何も見えないがリリーアが手をかざすと、全員太ももに重しを乗せられたようにもがくが全く動けない。


「話は聞いています」


「な、何の話だ?アリアンヌさまからです」


「んな、お前アリアンヌを知っているのか!?」


「えぇ。そして聞きましたの。あなたたち?アリアンヌさまが嫌がったのにもかかわらず、何度も何度も関係を迫って付け回したそうですわね?」


「そ、そんなことは!私はただアリアンヌを愛していただけだ!」


「アリアンヌさまは、ストーかー、確信犯、ボディタッチ多すぎ、しつこい、キモイ、ざまぁされろ、お姉さまの悪口言うなと仰っておられました」


「はっ!?」


「何をバカな!」

そこでネイサンが叫ぶが。


「ネイサン」

ヴィーラの声で押し黙る。


「女の敵は成敗しませんと。それにアリアンヌさまには既に意中の方がいらっしゃったそうですわ」


「私だ!」

「それは俺だ!」

「いや、ぼくだ!」

「私に決まっているだろう!」


「違いますわ。まずはシャーロットさまとアリアンヌさまが、わが国を訪問される前に、きっちり謝罪ができるようになりましょうね?」

リリーアの笑顔の後ろには無数の稲妻が落ちているようだった。



追加点:リリーアさまの角について書き忘れておりました<(_ _)>

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