第4幕 そして今日も魔物の王に囚われる
「遅くなってごめんね。早速採寸しようか」
夜に部屋に来たザカリィさまがメジャーを持って私の前に立つ。
「あのー、アンは立ち会わないのでしょうか」
「何故?」
「いや、何故アンが立ち会わず、そしてザカリィさまが採寸するのですか?」
「わふっ?」
「うん、君は賢いね」
と、ザカリィさまがざっちゃんに目を向ける。え?ざっちゃんは今、正解を言ったのか?―――と言うかザカリィさまはざっちゃんのしゃべっていることがわかるの?
「君の裸をみるのは私だけの権利なんだ。わかるよね?」
「わかりませんけどぉっ!!?」
いきなり何を言い出すんだ、このひとは!!
「むしろ朝の着替えの時はアンが立ち会いますし、お風呂もアンと一緒に入りましたけど?」
「んなっ!?ダメだ!朝の着替えも私が立ち会い、そして今度からお風呂も一緒に入ろうか」
「何故そうなりますか?」
「だって、夫婦だろう?」
「魔人にはそう言う習慣があるのですか?」
「あるはずないだろう?」
「じゃぁ何で言い出したあああぁぁぁ―――っっ!!!」
「ふふふ、シャーリィはやっぱり面白いね」
わ、笑わないでくださる?れ、令嬢なのに絶叫してしまった。―――は、はじゅかしぃ。
「単刀直入に言おう!」
「わふっ!」
「はい」
「私はシャーリィの裸を、―――いやシャーリィの全てを他のものに見せたくはないし、視界にも入れたくない!」
「わふっ!」
こら、ざっちゃん。あなたも何で同意してるの!?もしかしてザカリィさまに因んで“ざっちゃん”って名付けたから遺伝したの!!?
「さすがにそれは無理です!わ、私も王妃的なことをしなくてはいけないのでは!?」
「そこら辺は我が国の魔物は優秀なので心配ない」
「社交界は」
「君が大勢の目に留まりダンスに誘われでもしたらと私は気が気ではない」
「まぁ、私は元々そう言うのは得意じゃないですが。さすがに税金で生活している以上はちゃんとお仕事をするべきだと思っています」
「―――っ!」
「それとも、私はザカリィさまが周りの方々に紹介したくないほどに魅力がないのでしょうか?そうですよね?こんなくすみ令嬢、恥ずかしいですよね?」
「な、何を言っているんだ!君の色は世界一美しい!」
え、マジで?
「妹の方が美人ですよ?」
「私はあんなのには全く興味が沸かない!!」
「それはそれで失礼ですよ?後でアックス片手にそこら辺の壁に穴開けますよ!?あの子!!」
「どうでもいい!私が君を独占できるなら、城の壁くらいどうでもいい!」
「な、なんですとぉ―――っ!!?」
「さ、測ろう?」
と言って何でベッドに押し倒しているんですかぁ―――っ!!!そして顔が、顔が近い!
「わ、わふっ!」
ざっちゃん!子どものあなたは、こんな大人の世界を見てはいけません!!しっぽ振らないで!頬を赤らめないで!
「あの、そんなに顔が近いと測れませんよ?」
「今日君を見られなかった時間分、たっぷりと君を見たい」
「あの、真面目に採寸してください」
「ふぅ、大体終わった。ほら採寸結果だ」
とザカリィさまが紙をぺろんと見せてくる。本当だ!あんなことやっててもちゃんと測れただと!?何かの魔法!?ん、あれれ?
「この字、アンの字じゃないですかぁ―――――っっ!!」
測ると見せかけて謀ったなぁ――――っ!!?
―――
翌日、ザカリィさまにものっそい抱きしめられながら目を開けた私は、すーすーと寝息を立てるザカリィさまをちらりと見やり上から覗いて来るアンとレノを見上げた。
因みに夜はレノがざっちゃんを抱いて寝たいとくぅ~んとわんこが甘えるように言ってきたので、今朝はレノがざっちゃんを連れてきてくれた。
「まさかとは思うけど、これってヤンデレ?」
「ヤンデレですね」
マジか。私はヤンデレ溺愛夫に捕まってしまったらしい。