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第1幕 もはやお約束の婚約破棄ですよ


「シャーロット!君とは婚約破棄させてもらう!」

私の目の前で指をさして、婚約者であった金髪碧眼の王子・エンバルトがそう告げた。


「は、はぁ」

別に、好きでもなかったし?でもいきなり過ぎない?―――と言うか、いきなり呼び出されたかと思えば、何だかパーティーのように大勢のひとが集まっているのだが?


「代わりに、君の妹・アリアンヌと婚約する」

王子・エンバルトは朱色のセミロングの髪にまんまるい水色の瞳を持つかわいらしい少女を抱き寄せる。紹介しよう!彼女は私の妹だ!!最早私は満身創痍。四面楚歌。だから、回想の中くらいはっちゃけさせてくれ。


はぁ。昔から、こういう男は多かった。私はくすんだ赤茶のロングヘアにくすんだ水色の瞳。公爵家の長女と言えどぱっとしないくすみ令嬢。それが私だ。


それが、どう言うことだろう?私の公爵家の名誉とか財産を狙う男どもは妹を見るとあっちゅーまに恋をした。えぇと、近衛騎士団長の次男でしょー?筆頭魔法士長の長男でしょー?あとー、今、隣の帝国から留学に来ている褐色野性的皇子~。


「そうですか。お幸せに」

最近、流行っているのかしら、こういうの。遂に王子もそのブームに乗ったということかしら。


「なっ!何だ、その態度は!」

と、言われても。あぁ、だるい。今日は夏バテ気味だって言うのに、このバカ王子は。正装で来いとか言うから着ているだけで暑いドレスを着てきたというのに。お水が飲みたい~。

※みんなっ!水分補給を忘れずにねっ!!


「あの~、どう言う態度を望んでいらしたのですか?」

そんな面倒くさいリクエストをされるのなら、せめて台本かカンペをくださいなぁ~。


「少しは悔しがったらどうだ!」


きぃ~~~っ(;´Д`)―――で、いいですかねぇ?


「いや、悔しがってもあなたが権力乱用している以上、私に反論の余地はないのではないでしょうか?」


「いや、そのっ!理由くらい、聞いていけっ!!」

いや、涙目で言われてもなぁ。何だかかわいそうなひとに思えてくるんだが。やめてくださいよ。今、エンバルトさまは絶賛イタい子ちゃんキャラ爆走中なんですよ?そんな顔したら憎めないじゃないですかぁ~。


「君は、姉であることを理由に王国の聖女であるアリアンヌに与えられるものを奪い去り、しかも毎日暴言暴力の嵐だったそうじゃないかっ!!」


「え?そうなんですか~?」

最早、暑さが限界です~。その~、エアコンもっと強にしてください~!

※因みに魔石に内蔵された魔力で動く魔動エアコンだ!!


「アリアンヌ本人が言ったんだ!少しは反省するならともかく。もういいお前は国外追放だ!―――そうだ!魔物の国へ生贄として追放してやる!!」

魔物の国ねぇ。確かに私たちの国の隣国にありますねぇ。魔物の国~。あ、妹に言い寄っている褐色野性的皇子の帝国とは真逆にある国です。主に、魔物の中でも高位なひとがたの“魔人”が治めている国ですね。


それにしても魔物、か。ふわもふかな?ふわもふな魔物、いるかな?仲良くなれるかしら。できればふわもふさせてほしいのだけど。魔物の中でも高位な“魔人”のひととお友だちになれれば、より獣の姿に近いふわもふな“魔獣”にふわもふさせてもらえるかしら?


「随分と面白い催しをしているようだな。この私が国外へ赴いている間に随分と羽振りが良いな」

あぁ、誰?救世主さまかしら?なんだか背中が涼しい~。


「あ、兄上!?」

ぎょっとしてエンバルトが見たのは、私の後ろに立つウェーブがかった黒髪に紫の瞳をしたイケメン・エアハルト第1王子兼王太子殿下じゃぁ~ないいですかぃ。あなたは私の救世主さまですか。自動で冷気を放ってくれるなんて。


―――別名、氷の王太子。

怒ったり、凛としたりすると体から冷気となった魔力が溢れるのだ。ふぃ~、いい感じの涼みじゃぁ~~~。


「そもそも、婚約は王家が結んだものだろう?お前の一存で撤回されては困る」

いや、再構築されても無理っすけど。この流れでまた婚約しろとか言ったら鬼畜ドS王太子殿下ですよ~。


「しかし、ちょうどいい。魔物の国への生贄を探していたところなんだ」

何を言い出すよこの王太子はっ!!せっかく涼んでいたのに台無しじゃない!!


「君は明日、魔物の国へ行きなさい。これは国王陛下からの王命だ。無論、任命権は魔物の国と交渉を行ってきた私にある」

は?よりにもよって、明日?今まで外交に赴いていたはずだけれど?帰って来てからいきなり明日魔物の国へ行けとか、―――無茶ぶりですやんっ!!


「はっはっは!追放される哀れなお前の姿が見えるな!」

「本当ですわ!全くお姉さまったら滑稽ね!!」

はぁ、そう。エンバルトと妹がせせら笑っているのすら心地よいBGMに聞こえるほどの衝撃である。


「国をつまでの短い時間、快適な地下牢で悠々と最後の故国での日々を過ごすがいい!」

まぁ、快適なら別にいいけれど。


「では、シャーロット嬢。来なさい」


「はい、王太子殿下」

げらげらと笑う下品な笑い声が遠ざかっていく。


―――


私が案内されたのは、まるで高級ホテルの一室のような王国の国賓用の部屋であった。


「王太子殿下、僭越ながら質問をしてもよろしいでしょうか」


「あぁ、構わない」


「私は地下牢に入れられるのではなかったのですか?」


「何故?」


「先ほど、弟君が仰っておりましたよ」


「私の決めたことの方が優先だからな」


「あぁなるほど。失礼を申しました」


「いや、構わない。君はここで悠々自適に過ごすといい。何か必要なものはあるか?」


「では、魔物の国についての知識が欲しいです」


「なら、本や資料を後で届けよう。食事は運ばせる」


「承知いたしました」

私は去っていく王太子殿下を見送る。さて、これからどうしよう?―――寝るか。後で本や資料を持ってきてもらったら、寝ずに読みあさりそうだからなぁ。ちょっとだけ、寝だめしよう。


ふぁ~あ。


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