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7、女神さまも現れた

あの後、帰れたのかって?


結論から言うとまだ帰れていない。あの後わりと直ぐに、リナリア様と似たように幼女趣味疑惑をもったジェダイド様もセレンディス様に会いにきたからね。まだあれから1時間も経ってないよ。


「先生、私のオランジュにあまり近寄らないで下さい」

ジェダイド様は師匠のことを先生と呼んでいるようだ。師が伝説の大賢者である事は聞いていたけれど、詳しくは話されなかったなと思い起こす。やはり幼女趣味を疑っていたからだろうか。


「何度も言うが私は稚児趣味ではないぞ。ジェダイド、お前もそれはわかっているだろう?…それとは別に婚約者が好きなのは構わないが、あまり独占欲と執着心を出し過ぎないようにな。引かれるぞ」

「私も幼少期の頃から御指導頂いている先生が幼児性愛者ではないことはわかりますが、それとコレは別の話です。とりあえず、オランジュを返してください」

独占欲と執着心って何だと思うも、ジェダイド様が聞き流しているのでスルーする事にして、ジェダイド様も子供時代の頃からの師弟関係なんだな。どんな子供時代だったんだろう。


ところで二人の会話のおかしさに気付いてもらえただろうか。私は今再び、リナリア様に後ろから抱っこされる形でソファに座っている。そしてその横から銀の瞳に白銀の髪の謎の美女に頬をつつかれている。

この方誰だろうとか、いつの間に現れたのかとか色々思うが、私以外の方はみんな気にせず話している。ただ私にしか見えてないなんて事はない。リナリア様もふつうに会話している。


「それでメロディアはいつユージンの子を産んでくれるんだ?いい加減、受け入れて子沢山の幸せ家族になるといいわ」

「結婚する事と心から受け入れられる事は別問題ですよ。彼の妙な執着心もね」

そしてリナリア様を不思議な呼び名で呼んでいるが違和感が無い。

「リナリア・メロディア・リリナが今の私の正式な名ね。そしてこの方はアーテリーネ神。ハイエルフに洗礼名を贈ってくる神でこの世界をささえる存在よ。私たちの事は洗礼名で呼んでくるし、セレンと関わると結構頻繁に現れるわ」

そしてハイエルフだけでなく精霊寄りな魔族やエルダードワーフにも洗礼名を贈っているらしい。


急に神だという方が現れても反応に困る。前世から無神論者で、この世界では実在するって言っても基本的に無関係だとも思っていたんだ。それこそ前世のネット小説である転生する前の面談の様なものもなかったのだし。しかし存在しないと信じるより、いたらいいな位には前世の頃から思っていた事もあって存在を疑う気にはならなかった。

「何ていっていいのか…反応に困ります。…頬をつつくのやめて下さい」

「異世界出身の子に信仰しろとまでは言わないが、それなりに敬意は持ちなさい。さて、…メリア、…マリン、なかなかしっくりこないわね。…マリオンかしらね」

「まあ、成人前でも洗礼名をもらう事はセレンが関わる場合よくある事例ですからね。色々諦めた方がいいわ」

そして私の洗礼名が今決まったらしい。

「メロディアとユージンの相性は私が結ぶ前から良いのに未だに揉めているとわね。ヘキスイは放っておけばユージンのように永く独り身で、相性の良いマリオンがいてよかった。マリオン、お前の人に対する苦手意識はお前にとって重荷だろうが、それによりハイエルフへ生まれる事となったわ」

何かすごい事を言われてる気がする。しかし、少しぼんやりとした意識で理解できない。


「生まれる前の話ですか?」

「そうよ。あなたは人間に生まれる所だったけど人間への苦手意識で人間である事を拒み、エルフに生まれる事となった。エルフとハイエルフの違いは魂の質。異世界の魂であるマリオンは分類はハイエルフとなって生まれたの。私はその事に関しては不干渉よ。でもちょうど良かったわ。ヘキスイにはあなたがいた方が良かったから」

なんとも言えない。神様の話は殆ど偶然の産物だけど縁結びする相手がいてよかったって事かな?

「そしてこの神は人間種以外の種族の番を決める神でもあるわ。獣人達に番がいても違和感ないけど、魔族と妖精種も番が決められてるのは違和感あるわよね…」

「私は愛の女神でもあるからね。人間の場合、特定の相手決めてもどうもそれを理解できないのが大半なのよね。それに社会体制も唯一人を決めると不都合のでるようになってしまってしるし…信仰してくれる割にあの子達そういうところ奔放よね」

リナリア様の補足と異世界人目線の意見は共感できる話だった。

というか、獣人的な番関係だったらしい私たちの事が気になる。エルフ族は子孫を残す事に長命種故か淡白な印象もあって、番は特別といわれてもちょっと納得できなかった。

それに特別に好きとかいう感情は私は持ってないと思う。恋愛感情とか私にとっては空想上のもの、ファンタジーの領域だしそんな不可解な感情を持ってない。


「異世界人は種族関係なく番の関係を認識できない事があるんだけど、まあ片方がきっちり認識できていればくっつくだろうし問題ないわよね」

「………」

「認識できない、だと」

なんていうか色々酷い気がする。私はジェダイド様に申し訳ない気がしないでもない。

しかし解決策があるかと問われれば無いとしか言えない。心の問題は前世から続くどうしようもない問題だからね。


「精霊寄りな種族はそれなりに数がいた方が世界が安定するし、精霊化して寿命の上限なしの亜神が仕事を受け持ってくれたほうが邪神の発生の問題も減らせるだろうし、とにかく子供つくって増えなさい」


一方的にそういってから神は姿を消した。

私に解るのは表面的なことばかりだが、セクハラ紛いの発言でもこれは神託なのだろうか?

そう思ってリナリア様を振り返る。

「アーテリーネ神はいつも私に子供作るように言ってるから本気だろうけど、神託としてとらえなくても問題ないわ。突然女神が現れるのはセレンが半精霊化した亜神で、世界関係の仕事する上でよくある事だから、毎度驚いていたら身が持たないわよ。それと神託の場合、内輪の話ですまないし洗礼名をもらった者や正式な神殿で修行を正しく積んだ者全員に届くものだからね」

洗礼名をもらったから今度から私も神託を受信するようになる、と言って説明を締めくくる。

そんなに表情でわかり易いのだろうか?私は他者の表情を読むという事に、成功した記憶が前世からも無いのだがね。

「何度も言いますが淑女教育で顔の表情は取繕う事ができるようになるはずです。…ただ耳が下がってしまうのは結構難しいですよ。経験談ですね」

エルフより少し大きめなハイエルフの耳だが、今まで感情で動いている意識はあまり無かった。驚いた時にピクッと動くくらいの認識しかなかったのだ。

「公の場に出るには必要な事ですが、感情で動いて下がる耳も表情も可愛いと思いますよ。それに、囲ってしまえば公の場なんて出なくても問題ないですし」

「ジェダイド、はじめから出来ないと想定するのはよくないぞ。何よりやる気をそぐ。まだ子供なのだから未来は希望に満ちたものであって欲しいだろうに」

61年程度で諦めるのは早いって事なんだろうけど、時間感覚がまだ前世の人間時代の頃に引かれてる身としては結構、絶望的なんだよね。コミュ障で対人恐怖症で引き篭もり体質とかさ。前世では軽い鬱病もかかっていたから今世の方がまだマシなのだろうがね。











そうしてやっとジェダイド様と共に帰宅して、夕飯を一緒にとる時に表情に出ないように気をつけて会話する。

「オランジュ、君がまだ恋情を理解できなくてもかまわないと思っているよ。その事で申し訳ないと思う必要もない。成人したら結婚する事も変わりないよ」

「昔からその感情は自身には無いものと思っていました。実際、今もないのです。家族に向ける親愛だけではいけないのですか?」

「耳が下がっているね。表情は…まぁ大丈夫かな?正直、番を認識できない事には驚いたよ。しかし、今同じ感情を持てなくても、将来ずっと一緒にいる相手に情が沸く可能性の方が高いから問題ないといえば問題ないんだ。親愛以上の感情を欲している事は否定はしないがね」

時間感覚を今世の長命種仕様にできれば、未来の自分をもう少し信用できるのだろうか。番であるから思われているって自覚も無かったのに、特別に想うことはこれから可能なのだろうか。ずっと一緒にいる身近な存在となるべく良好な関係でいたいが自身の心がなかなか信用ならない所も前世からの弊害かもしれない。

「恋情をもてるか解らないけれど、そんな感情を持てるといいなとは思っています」

「好きになってもらえるように努力はしていくつもりさ。なるべく受け入れておくれ」

それと、と前置きしてからジェダイド様が続ける。

「なるべくセレンディス先生とは関わらないように。先生が悪いというよりは、先生の熱心な信者が危険だ。リナリア様は番で妻だから今は問題ないが、昔とても危険で命が危うい場面もあったそうだよ。挨拶などはしっかりするけれど、個人的には近寄らないようにね」

セレンディス様は英雄だけど、弟子には結構厄介な存在扱いされているらしい。

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