4、おや?ムニ坊の様子が…?
リナリア様を紹介されてから半年ほどがたった。私の成長をきいてくれ。
休日以外はほとんど毎日短時間だけど通い、多少慣れてきたかなというところまで進展した。その間に話したことは研究の話、前世の話、最近の身の回りでの話などだ。
研究の話はまず自身の精霊としての力を使えるようになってからの事なのだが、前世での物語などである上手くイメージすれば可能な不思議な力という感じだ。それを現実に反映させる、体の外に出すというのがちょっと難しい課題だった。そこをクリアできれば私の場合、植木鉢の薬草を促成栽培が可能でわさわさと生やしておもしろかった。
前世の話は最初にジェダイド様が言ったように、全く世界が違う話に感じられた。
そもそも神の実在する多神教な世界で神官をしていて、まだその縁も残った状態らしいがこの世界の女神と争う訳でもなく、存在が認知されているし信者の募集もしていないとの事で宗教戦争はないから安心していいとのこと。なんか途中でスケールの大きい話になって話についていけない感じがした。
最近の身の回りの話は指摘されたように婚約者の呼び方問題とか。彼女の夫の話でハイエルフでも珍しい位の歳の差婚を神託ですることになった話とかだ。主に結婚の話が多いな。もちろん王族系ハイエルフとの感覚の違いを日常で感じる日々の話もした。
そして積年の謎も判明した。先祖返りのハイエルフは前例が私を含めて2件しかなく、主に神託で存在を認知されていたらしい。私の場合は前例であるリナリア様が親元から引き離されることなく育ったこともあり、養子などに取られることもなく無事に過ごせたらしい。昔リナリア様の夫が彼女のもとに通って力の制御なども導いていた事もあり、私の時も決まった婚約者が前例に従い通っていたそうだ。傍系王族なのに護衛を連れないのも前例に従った事らしい。エルフの郷は前例を大事にするなぁ。
それと最近気付いた事なんだが、ムニ坊が大きくなっている気がする。
いきなりなんだと思うかもしれない。テイムした時は片手に収まる大きさだったのに、週末に実家に帰って母のスライムと並べてみても大きさが変わらないくらい、ムニ坊が急に大きくなった気がする。具体的にはキャベツ一玉くらいの大きさだ。そしてたどたどしかった思念が、しっかりとしてきた気もする。
「ごはんちょうだい。魔力がいい」
と言った具合にだ。もちろん魔力はあげた。
そして実家の話だ。母さんのお腹は少し大きくなったようにみえる。
弟か妹が生まれるので、色々準備するのをわくわくしながらする。
あと名前の話は私も参加したい。弟ならバジル、妹ならミモザでどうだろうか?
私は森の賢者になるために王都での修行がまだまだ続くので、弟か妹が生まれても一緒に暮らせないような気がする。成人したら結構すぐに結婚もするらしいので、花嫁修業が同時進行だ。
「促成栽培は地属性で定期的に支えないと土の中の魔力がすぐに消費されてしまうわ。いつも地属性の魔力で満たしていても問題ないから、そっちの手は緩めないように。」
リナリア様に指導してもらいながら、イチゴを育てている。甘くするための品種改良は気長にするといいってわかるけど、早く育つからとどんどん育てている。
「うむぅ、植木鉢にさわってると、ムニ坊に魔力をあげる時の要領でできるけど、手から離すと持続力が安定しないです。」
「そこは要練習ね。ところでムニ坊って?」
半年通った成果によりリナリア様と結構普通に話せるようになったと思う。
「従魔の水色スライムです。最近ちょっと大きくなって、流暢な思念をとばしてくるようになったんですよ」
「スライムかぁ、寿命といえる期限がまだ発見されてない所がいいよね。世界にある魔力の環境マナだけで存在を維持できるから基本的に飢えないし」
「え?」
リナリア様のスライムの話で、ムニ坊の発言に疑問をもつ。
「うちのムニ坊はよく、ごはんとして魔力を欲しがるんです。世界にある魔力だけで飢えないんですよね?」
「飢えはしないだろうけど、嗜好品感覚で欲しがってるのかしら?それとも従魔契約の影響かしらね?スライムは身近な存在で水の浄化装置とかにも利用されているけど、まだまだ謎も多い魔物よ」
「今度ムニ坊に直接きいてみます」
嗜好品って理由だったらムニ坊、大きくなったというより太ったって事なのかな。従魔契約は私と魔力のつながりができる契約であるから、魔力を欲しがるのも契約の一部なのだろうか。
「ところで話が変わるけど、王都の街並みを歩いてみた?」
リナリア様が楽しそうにきいてくる。王都の家々は、屋根の色が王宮は白、貴族街が青、庶民は赤で統一されていて眺めていてきれいだなくらいの感想はある。
「特に理由なしに歩くことはないですね」
少しそっけなかっただろうか。しかし他に言いようはない。大体一日の予定をこなすと、疲れて寝てしまう事も多いのだから。
「散歩とか、デートとかないの?」
「散歩をする気力体力が残ってないし、デートとかジェダイド様も忙しいだろうし…ないですよ」
出かけるのが面倒くさいとか思っても言ってはいけない。そして、気力体力がないのは本当のことだ。
そして前世でもしたことの無い女子トーク的なものをしているきがする。引き篭もりぼっちにそんな話し相手もいなかったしな。恋愛もしたことがないし、していても自分では気付かない、ファンタジーな分野だとも思っている。現実の世界に恋なんてあるのですかね?他人にはあっても私にはないモノって認識が前世の頃からある。これも前世の負の遺産なのかしらね。
「ジェダイドの場合、時間を作ろうと思ったら作れるから、今度街歩きに誘ってみたら?婚約者なんだからそれっぽい事してみるのもいいと思うよ」
「いえ…何というか…昔、対人恐怖症を治そうとしたときに一緒に歩くくらいはしてるんです。ただ、結構な頻度で具合が悪くなって抱き上げて連れ帰ってもらう事ばかりで申し訳ないんですよね」
「それは…デートじゃないわね…今でも駄目なのかしら?」
「最近は、人が多いと人酔いするくらいです。だから街中を無目的に歩くのは苦手です。目的があるなら、パッとすませて帰れますもの」
「そっちも完治は遠いわね」
なんともいえない空気がながれる。
「今日はこの辺でお暇させてもらいます。ありがとうございました」
それなりの時間がたっていたので今日は帰ることにする。
最近はジェダイド様の送り迎えなしに行き来ができるようにもなったのだ。
「ただいま戻りました」
家の使用人の方々に一声かけてから自室にもどる。
「ムニ坊ー、…いないの?」
おや、ムニ坊はいないようだ。
「虫退治かしらね?」
そう納得して一眠りする事にした。
「ご主人おきて。魔力ちょうだい」
一眠りしておきたらムニ坊が帰ってきていた。ちょうどいいのできいてみる。
「ムニ坊、魔力をなんでそんなに欲しがるの?毎日よね?生きていく分には問題ないのでしょう?」
「成長したい。魔力あると成長できる。それとご主人の魔力おいしい」
なんとも言えない返答である。
成長するって悪いことじゃないよね?でも大きくなりすぎたら困る。あまりに大きいスライムは災害のような被害を出すって父さんも言っていたのだし。
考えてから、問題を先送りする事にした。
「大きくなりすぎないでね」
そういってムニ坊にふれ魔力を流す。
「魔力おいしい。成長したらもっと色々できるようになるもん」
やはりちょっと不穏なきもする。ジェダイド様や両親に相談した方がいいのだろうか。
ムニ坊の丸い体を指でつつきながら考えてしまうのだった。