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20、ネリーとつまみ細工の丸い花びら

ジェダイド様のお母様が会いにくるまでに淑女教育をもう少し頑張るように、という事になり筋肉痛の日々は延期される事になった。体調を万全にして精神的なダメージがあっても耐えるようにとの事だ。




朝御飯を食べてすぐの午前中にリナリア様の屋敷にマリーと歩いていく。


今日はお茶会についてリナリア様に聞きたいと思いスイカの研究の合間に聞いてみようと頑張った。

「お茶会かぁ…、あまり参考にならないと思うよ。私の場合ほとんど出席しないし、夫はハイエルフの最年長で親戚も年が離れた遠縁しかいない上、昔お茶会で毒殺未遂とかあって、親戚はお茶会を開けなくなったもの」

あまり頼りにならない上、昔の事件の闇が深い話かもしれないものを聞かされる。

「親戚に殺されかけたのですか?!」

「親戚ではなく、夫の狂信者が犯人だったけどね…」

エルフの郷の大賢者との結婚に関わる事件の話だった。あまり聞きたい物でもないな。好奇心で聞くと後悔する類だろう。

「ジェダイド様のお母様について何かご存知ですか?」

「ライファナ様ね。夫は王都の神殿で神殿長をしてたはずよ。ライファナ様は貴族の令嬢で政略結婚だったと思うわ。ハイエルフとしてはまだ年若い夫婦で子供はジェダイドだけだったはずよ」

リナリア様の話はジェダイド様に聞けばいいだろう話だが、なんとなく聞けずにいた話だった。しかし、特に仲が悪いとかそんな事もなさそうだ。でもジェダイド様は家族の話をあまりしない。何かあるのかな。


「お茶会については参考にもならなかったと思うけど、まぁドレスを着るのも貴族たちが茶会だの舞踏会を開くだのは経済を回すためにしている事でもあるから、できるならした方がいい事なのよね。エルフは人間ほどの野心的なまでの向上心はないが好奇心と探究心は負けてないの。でも、信仰心は強いから面倒な事もあるわ。…何が言いたいかというと、ある種の諦めは肝心よ。ハイエルフに生まれた時点でエルフよりかは神に近い種と見られるの。王侯貴族の括りに取り込まれるのは信仰を保つ社会では当然なのよ。ハイエルフ同士はそこまで狂信的にはならないけれどね。そこは安心していいわよ」

語られた結論は、諦めも肝心だなんてどういっていいか分からないよ。人が苦手でも頑張らないとならないって事はわかった。結局お茶会は絶対に開催で参考にはならないよって話だった。


その後は楽しくスイカの話にもどり、この間の突然変異について語り合った。ちなみに、今回の突然変異はスイカの皮の縞模様が消え、中が赤紫色になるというものだった。そして怪我を治すポーションを作る素材にはなりそうだとの事だった。薬草で作ると必然的にポーションも青臭く苦くなるが、スイカを使えばスイカ味になると思うのでポーションが飲みやすくなるかもしれない。











筋肉痛から開放され散歩目的でリナリア様の屋敷に歩いて行ったが、筋肉痛の時は馬車を使っていた。馬車といっても馬が引くのではなく、大きなトカゲの魔物のディノを家畜としたものが車を引いていた。人間の国では馬が引いているので名前は馬車と統一されているそうだ。


まあ、今日はマリーと歩いて帰ったのだ。ジェダイド様の家とリナリア様の屋敷をそれなりに近い距離にあったのでさほど苦労もなく事件も起こらずに行き来できた。


「ただいま戻りました」

とりあえず帰ったら報せる挨拶をする。

「お嬢様、今日の午後3時からマダム・エステルと針子達が参りますので、時間をあけて置いてください。旦那様も午後にはいらっしゃるそうですから、ある程度は任せてもかまわないそうです」

執事の言葉に午後3時にジェダイド様と針子達を迎える事がわかった。経済を回すためにお茶会をするという話も聞いた事が今おきているのだとも理解した。しかし、ほとんど知らない人に会うのが憂鬱だ。

「わかりました」




部屋に戻り、外出着を部屋着に着替える。外出着は翠のワンピースで裾や袖に花の刺繍を刺した物だ。胸元に白いリボンも付いていて結構可愛いと思う。自分に似合うかは分からず、勧められるまま着ているのだ。


私は昔から美的感覚に自信が無い。人を見ても絵を見ても服飾を見ても美しいとかあまり思わず、興味が薄いのだ。可愛いと思うものはあるのだが、共感はあまり得られない。だからかそういった話にも乗れないのだ。


部屋着はとてもシンプルだが、客が来るのにいいのだろうかと疑問が浮かぶが、マリーは商人や職人相手にはそこそこ礼儀をとおせば問題ないという。それに夏のドレスを作るのだから採寸で、どうせ脱ぐのだとも。ここでネリーが珍しく声をかけてきた。

「お嬢様、職人達に布の花を付けてもらいましょうよ。珍しいものですが可愛いので、流行ると思うんです」

「布の花って、つまみ細工の事?確かに可愛いとは思うけど、服につけたらゴテゴテして着づらそうね」

「髪飾りでもいいんです。この間、髪紐に自分で作って付けてみたのですが、お嬢様の場合本職の者に作ってもらった方がいいと思うんです」

珍しくネリーが推してくる。いつもは大体マリーなのにね。

「かまいませんが、お昼ご飯をとりたいです。ムニ坊も一緒に来る?」

部屋で眠っていたらしい、ミミックマ姿でソファを一つ占拠していたムニ坊にも起こして声を掛ける。

「ごはん?一緒に行くよー」




昼ご飯は、やはりスイカのジュースと定番の胡桃パン、野菜たっぷりのスープにボア肉のステーキ。デザートは一口大に切ったスイカとなっていた。ムニ坊は味覚があるので全部少しずつ欲しがった。可愛かったので一口ずつ分け与えた。頬に手を当てて美味しそうにする仕草も可愛かった。


自分の部屋に戻ってネリーとつまみ細工の話をする。マリーは食後のお茶の準備をしに行った。

「布の花はつまみ細工というのですか」

「わたしの知ってるコレはね。他にもあるかもしれない布の花はそれぞれ別の名が付いていると思うよ」

それなりに長い間人の歴史は続いているのだから、似たようなものは作られていると思っている。

「あとこの形以外でもつまみ細工の花はあるんだ。時間があるからそれも作ってみますね」

そういって裁縫箱を出してもらう。あと薄い生地で柔らかい布の端切れも要求しておく。

「違う形ですか?それもつまみ細工という名なのですか?」

「多分最後に糸を引っ張って形を整えるから同じ分類の名で呼ばれるんだと思います」


端切れから小さい5枚のパーツを作る。今度のは丸い円形のパーツだ。それを切り出して、折り半円にして円周の内側を糸で縫って、糸を引けば形になるようにする。それをパーツの分だけ繰り返した。

最後はやはり糸を引いて形にし、丸い花びらの布の花ができあがる。そして糸を玉止めにする。どうしても少し弛んでしまって真ん中に空間が出来る。その空間を埋めるために、包みボタンを真ん中に縫い付ける。これで完成。

しかし何につけよう?

「できたのはいいのだけど、私が不器用だからか、ちょっと歪かも…」

「可愛いと思います。丸い花びらのものもいいなぁ。1つより2つ3つと付いている方が可愛いと思うので髪紐につける分を一緒に作りましょう」

いつになく強く勧めてくる。まあ、酷い事には成らないだろうし、たまにはいいかと端切れからパーツを切り出す事にした。


「お嬢様、そろそろ休憩されては?お茶の用意があります」

マリーに声を掛けられて手を止める。ネリーと作った丸い花は、6個もあった。髪紐に縫い付けるにしても多くて3つだ。あとはゴテゴテしくなると思う。

とりあえず、お茶にする。


今日、マリーが入れてくれたお茶は、金木犀のような香りのする烏龍茶のようなお茶だった。

茶菓子は、シンプルなクッキーとスコーン。そしてイチゴとスイカのジャムだった。

「今日は、スイカをジャムにしたそうです。イチゴのジャムもあります。お好みでどうぞ」

今日のメインはスイカのジャムらしく、クッキーでもスコーンにでも塗って食べる事、推奨のようだ。

とりあえず、スイカのジャムをスコーンに塗って食べる。

程よい甘さでスコーンを食べられた。でもコレは砂糖も結構使っている気がする。スイカの甘さをもう少し増えるように頑張った方がよさそうだ。




今日はいつになくネリーが積極的ににきいてくる。

「お嬢様、つまみ細工の丸い花を髪紐に付けるとしてどうつけます?」

「普通にくっつけて縫ううもりですが?」

「髪紐に縫い付けるのもいいのですが、髪留めのピンに糸でつける等した方が髪飾りには良いと思いますよ」

マリーがアドバイスをくれる。ネリーも反対の意見も無く、髪留めのピン取りにいった。


結局6個あった花は2個ずつ髪留めのピンに糸で結び付けられたのだった。

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