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2、スライムゲットだね

あれから50年、12歳位の外見にはなったし学校は卒業した。

早いよ、話を飛ばしすぎだって?

対人恐怖症の治療に、両親や師匠についてエルフの郷を歩き回る話くらいよ、言える事なんてね。まあ、その間ストレスで何度か吐いたとかはあったけれどね。

その過程で他に分かった事は、私はストレスを溜め込み限界を超えると吐く。他に虫にとても嫌悪感を感じるとか。動物にも恐怖を感じる事とかかしらね。

まあ発覚したら、それらも訓練で何とかするように頑張って虫の事以外は何とかなってきたかなって所よ。基本的に全部やせ我慢だけどね。


そして私の駄目さ加減に、師匠の助言もなかなか酷かったな。

「差別発言ではないが、エルフも人間も獣人達もハイエルフより短命だ。彼等は行過ぎる他人だと思えばいい。国家の使者などにでも任命されない限りちょっとした失言が取りざたされることは無い。…君の発言で傷つけたとして一々君の言葉に囚われる事はあるまいよ。彼等は短い生を急いで生きているのだから」


私の対人恐怖症は記憶を突き詰めれば、ある種の人間不信と自分の発言などで他人を傷つける事を恐れ消極的になった故の自閉症だろうと前世の記憶から原因を自己分析してる。だから今でも私は引き篭もりたいしその為に森の賢者を目指して修行の日々です。我ながら動機が酷いなって思うわ。


他には100歳を超えたって所か。エルフなら100歳で成人なんだけど、ハイエルフは個人差があるから、体が大人になったら成人てことらしい。いつだよって?生理現象がおきたらって奴で私はまだです。


話は変わるが、最近は昔冒険者をしていた父さんの話を聞くのが楽しい。なんと人間の国や魔族の国、ドワーフの郷にも行った事があるらしい。何度もねだって聞いて、父さんを苦笑させる事も多い。

「オランジュは外国や多種族に興味深々だね。でも自分が行きたいとは言わないな」

目指すは引き篭もりだからね。でも前世の記憶のせいか、ファンタジーな話は好きだ。魔法の話も実践魔法も大好きだ。まあ前世でファンタジーは今世では現実の話だから、魔物被害の痛ましい事件とか笑って聞いてられないが。後味の悪い話も多い世界だよね。


そして最近気付いた事がある。いやこの言い方は語弊があるか。日常的に精霊を見るようになった。まあ小さな光の玉の形をした精霊はそれぞれの属性の光を帯びてみえる。光は金、火は赤、水は青、風は緑、地はオレンジ、闇は紫といった具合である。私の外見が10歳位の頃からだから最近と言っても多分、問題ないはず。

精霊を意識せずとも見るようになってから生活魔法以外の魔法訓練が始まった。あと護身術としての体術とかも。

「師匠って適正は光と風ですよね?なんで水の精霊の光を纏ってるんです?」

ちょっと前にそんな質問をしたこともある。

まあ、適正はあくまで生まれ持った性質でその属性は自分が精霊寄りである所以で、他の属性も普通に使えるし修行次第で自身の性質は変化したり、増えたりもするようだ。

師匠は森の賢者として普通に全属性の上位魔法は使えるし、自身に水の性質も追加しているらしい。











「魔法の基礎は大体習得したね。小精霊との付き合いかたも問題ない。虫が怖くて近くを飛ばれただけで集中を乱すのはいただけないが」

「虫が怖いというか…嫌いというか、前世から生理的に受け付けないというか…」

渋い表情で言い訳しても現状は変わらない。

エルフの郷は基本森の中の集落だ。畑などで開けていても虫はとても身近だ。見つける度に怯えて親や師匠に頼るエルフは流石に不味いとは分かる。

「心の問題がそう簡単に何とかならないのは、君を見ていればわかる。…この際虫を倒せる魔鳥や魔猫でも従魔にして退治してもらい、君は表情だけでも取り繕ってみせた方が良いかもしれないな」

そして師匠と街道を外れて森に入る事になった。


師匠は魔鳥や魔猫と言ったが、狙い目はスライムだと思う。なぜなら、母さんも虫が嫌いでスライムを従魔にしているからだ。道理で家の中では時々入ってくる羽虫くらいしか見ない訳だ。一番嫌いな不快害虫は母さんのスライムが退治してくれるから基本家には奴、通称黒いアレはいない。その事を師匠に告げる。

「スライムか…寿命の問題でハイエルフには良いかも知れぬな」

「じゃあ、スライムを探しましょうよ」

父さんから聞いたスライムの話では森の中にはたくさんのスライムを居るが普段は隠れていて、特に水辺に多く生息することから雨の降る森ではカラフルなスライムが見られるらしい。注意点としては怒ると酸を吐くので、掌に乗る大きさのスライムに2,3回程酸を吐かせた後が安全らしい。母さんの時もそうやってテイムしたようだ。


師匠に先導されて、森の中を川を目指して二人で進む。

森の魔物を警戒して時々、振り返りながら慣れた足取りで進む師匠。

私はオドオドしながら必死に師匠の歩いてできた道をついていく。

こんな時ふと思うんだ、師匠はハイエルフで森の賢者と呼ばれる研究職で郷に仕えているがエルフ族らしく森歩きも上手で、色々残念なハイエルフの指導員で婚約者ってどう思ってるんだろうって。師匠にとって私ってプラス面が少ないよね。少ない所か、ないかもしれないし。それでも私は家族同然に好きなんだなって。


二時間程歩いて川に出た。沢と呼んだ方が良いかもしれないが。

そこいら辺におちている長めの木の枝を拾いスライムを捜す。

「…あっ、居ましたっ」

師匠に一声かけてから緑スライムに少し近づき、拾った枝で沢から離すように薙ぐ。

スライムは怒って酸を飛ばしてきたが、なるべく離れていたので酸は木の枝にしか掛からなかった。次は木の枝で突っついてみる。また酸を出す。また突っつく。今度は弱々しいが酸を出してきた。

そこで近づいてスライムを拾い上げ、師匠を振り返り、見上げながら聞く。

「師匠、テイムってどうするんですか?」

「スライムの捕獲は手際がいいのに、そっちは知らぬのかい?まあいい、掴んだスライムに魔力を流し、精霊言語で従魔となれと告げなさい」

師匠の言う通りにスライムを見つめ、告げる。と、掌の中に核を残しどろっと崩れ落ちてしまった。無言で師匠を見上げる。

「全てのスライムが魔力に耐えられる訳でもない。耐えられるものを見つけるまで頑張りなさい」


結局スライムは16匹程倒し、17匹目の水色スライムがテイムに成功した。

「テイムに成功すれば多少の意思の疎通が可能になる。しっかり躾けるようにね」

師匠はそう言うとスライムを抱える私の傍により、転移魔法を発動させる。

あ、と思った時にはもう自宅の傍にいた。


「次は迷子になっても大丈夫なように転移魔法を教える。この魔法は何属性か?」

「えっと、空間系は闇でしたっけ…?」

昔教わった分類を思い出しながら答える。

できたら便利な転移魔法だ。しっかり習得したい。

「空間系は闇属性でも上位魔法の分類だ。そして国家間での規制等の問題もある」

「不法入国とか、進入禁止の禁域とかありますものね」

「所によっては街や村の中へ直接転移禁止の所もある。ドワーフの郷や人間達の国がそうだ。エルフの郷は王都のみ街中への転移が禁止されている。何故か?」

師匠の問いにあげられた例を比較して考える。

「…王都内への転移禁止は防犯のためで…、エルフの郷は森の中で、転移座標の設置が難しいからですか?」

「そうだ。慣れぬうちは闇の精霊に転移座標の確認をよくするように。ライスの町の西門辺りを座標にしてみなさい」

ライスの町は私の家がある町の名だよ。米の産地でもあるから。この町の主食は米である家が多いらしい。私も米を食べて育った。

雑念を払い、近くに見える闇の小精霊に力を貸してもらい、西門を視る。

「…周囲に人はいないみたいです」

「ではそのまま、精霊に魔力を渡して転移してみなさい。帰りも同じように帰ってくるように」

『闇の小精霊さん、転移をお願いします』

魔力を通し精霊言語でお願いする。

その瞬間は意識するでもなく自然に転移していた。闇の小精霊と西門がみえる。

続けて再び小精霊に魔力を渡し、自宅の前を視てお願いする。

『もう一度、転移をお願いします』


転移は成功。転移魔法って精霊術で、できるみたいだけど人間や魔族達ってどうやって使ってるのか。エルフ族は妖精種で精霊との親和性が高いから精霊術を行使できるのだけれど。

「師匠、この転移魔法って精霊術ですよね?他種族はどうやってるんですか?」

「基本は精霊術だよ。それを目の前の精霊に力を借りるのではなく、かつて女神が生み出したとされる大精霊に要請して行うので術の負担がかなり重いようだがね。まあ、人間達の使う魔法は大体大精霊に要請して使う呪文式の魔法だからね。転移は上位魔法とされるので魔力の豊富な者しかできないと、思っていて問題ない。私たちハイエルフは闇属性を増やすと、精霊に力を借りずとも自力で転移が可能になるからね」

本当の意味で転移魔法の自己習得はとても難しそうだ。











「魔力チョウダイ、ゴハン…」

水色スライムに魔力を流す。母さんに聞いたらスライムは魔力だけでも生きていけるらしい。

「この子なんて名前にしよう?…プニ坊?いや、前世にそんな名前のなんかいたな、…ムニ坊にしよう」

机にのせたスライムのムニ坊を人差し指でつつきながら、師匠と両親に言われた事を考える。

「王都修行か…、森の賢者を目指すなら避けられないよね」

正直言うと王都に行くのは気が重い。転移で行き来が可能であってもだ。しかもそろそろ、大人になった時を考えて花嫁修業もしてこいという。師匠の家に下宿してって所が気が重い。

それとは別に明るい話もあった、弟か妹ができるらしい。母さんもぜんぜん気付いてなかったって言ってたけど。

「もう安定期だから、大丈夫。安心して王都修行に行ってらっしゃいな。週末には帰ってくるのよ」

そういって、行くのが当たり前な空気になっていて、行きたくないとかもう言えないし。

「ムニ坊、王都に行ってからも虫退治、よろしくね」

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