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19/22

19、筋肉痛の日常

森林浴に行ってダンジョンを発見し、国に報せたりした日以降、それなりに平穏な日々を送っている。

ただ、筋肉痛とは縁が切れず、最近は毎日筋肉痛で過ごしています。不健全な事も体育会系な事もありませんが、毎日です。とりあえず、魔法で体を日常的に鍛えようという意味の分からない実験的な行為です。まあ、身体強化の魔法を使って日常を過ごすだけなのだがね。


今日はジェダイド様の家の庭でスイカの促成栽培をしている。正確には今日もが正しいかもしれないかな。

身体強化をかけて雑草を抜いてゆく。

「ぎゃっ、……ムニ坊、虫がっ、追い払って!」

私はしゃがみこんで半泣きの状態でムニ坊に助けを求める。

畑と虫は切っても切れないものだ。甘いスイカは食べたいが畑仕事は虫がいるので実は苦手なのだ。屋内で育てるプランター栽培くらいが丁度いいのかもしれない。

ムニ坊も頑張って寄ってくる虫を退治している。特に今の季節は初夏であり虫も活発だ。


土に手をつき魔力を流し、大地が豊かになるように願う。同時に植物が早く成長していくところもイメージする。

庭の畑の黒々として雑草を取り除いた地面からスイカの芽が出て苗となりさらに葉を茂らせて成長していく。

今日は花が咲く手前くらいまで成長させる。まあ、手を離してもしばらくは早い成長速度が残るので明日か、明後日には収穫だろうと思う。突然変異が起きなければだがね。

突然変異が起きると、どう変異したか色々と調べなくてはならず、収穫しても基本的に食べる事はない。

たまにモンスター化したらムニ坊に退治してもらうが、あれはムニ坊が食べた事になるのだろうか。











ムニ坊の負担が大きい畑仕事を済ませ風呂に入る。頑張ってくれたムニ坊もしっかりと洗うのだ。

浴室で全裸になりスポンジもどきで石鹸を泡立てる。そしてミミックマに擬態しているムニ坊の背中や腹、頭を洗っていく。

意外かもしれないがムニ坊は畑仕事の後でもあまり土や泥で汚れていない。大体は体に付いた物を吸収しているようだ。しかし、気分的なものもあるしコミニケーションの一つして一緒にお風呂に入って、ムニ坊を洗うのだ。

短い手足もしっかり洗い、シャワーで上から泡を落とす。

「ムニ坊、泡を落としたから先に浴槽に入ってて」

「りょーかい」

「お嬢様も椅子に座って下さい、髪を洗いますよ」

大体マリーが私を洗う事になってる。ネリーは浴室から出た後の肌ケアや髪を乾かす係りになる事が多い。


私も体を自分で洗い、髪はマリーに任せる。

その時、珍しくネリーが連絡事項を伝えてきた。

「失礼します。お嬢様、午後は時間がとれますか?旦那様からお話があるそうです」

「わかりました。大丈夫です」

改まって話があるというのも珍しい。そう思ったのは私だけではないようで浴槽に浸かっていたムニ坊も水面から顔を出して言った。

「何だろうね?珍しいー」

「お嬢様、泡を落とします。シャワーを掛けますので目をつぶっていて下さい」

とりあえずマリーに従い目をつぶる。シャワーのお湯が気持ちいい。

「終わりました。後は浴槽に浸かっていてください」

ムニ坊に端に寄ってもらい浴槽に浸かり足を伸ばす。筋肉痛の足がお湯の中で温かくて気持ちいいと感じる。


長い髪はマリーがトリートメントのようなものを塗ってくれている。風呂から上がる前にに落とさなければならないが、面倒な手入れは全部やってもらっている身で文句などない。

ムニ坊が私の足をムニムニと押してきた。何がしたいのかちょっと分からないが好きにさせる。

しばらくすると飽きてきたのか、おとなしくなった。

「それでは、上がるときに髪を洗い流してください。所用が出来たので、お先に失礼します」

マリーがそういって浴室の籠に入った服などを持って出る。


「そろそろ出ようか?」

「よしっ、出る」

ムニ坊に聞くと元気に返事を返してくれた。ムニ坊が浴槽から出て寝室の方へ行く。私も浴槽から立ち上がり、出てシャワーで髪を洗い流す。そして水気を絞る。何度か水気を絞り、タオルで体を拭いてバスローブを着る。そうしてから部屋の方へ行く。

「お嬢様、ソファーにどうぞ座って下さい。髪を乾かします」

ネリーに誘導されてソファーに座る。ソファー前のローテーブルはいつもより物が多く感じる。

「ネリー、何か多くない?」

「多くはございませんよ。これから旦那様に会うのですから、しっかりお化粧もしましょう」

化粧とか、前世を含めて未知の領域だよ。正直、化粧とか口紅とファンデーション位しか分からない。そして使った事もない。前世を含めてね。とりあえずやめて欲しい。

「化粧はいいです。した事ないし、する必要もまだないと思います。私はまだ子供だし」

「最近の年頃の子供はお化粧にも興味を持つ物ですよ。お嬢様もそういう年ですよ」

「でもやっぱりまだ必要ないですよ…」

「お嬢様は旦那様の前で美しく装いたいとかないのですか?お化粧はそんな時にするものですよ」

ネリーがとてもお化粧を推してくる。どうやったら説得されるんだ。まだ必要ないと。このままだと押しきられそうだ。

「あまり、お化粧好きじゃないんです。よくわからないし、顔に塗りたくるのが怖い気もします」

今世の母も化粧はしていなかった。ので、する必要を感じない。

「そうですか…。肌ケアだけはやっておきましょうね」

とりあえず納得してくれたようだ。











昼ご飯は、スイカジュースと胡桃パン、葉物野菜サラダ、ボアの角煮、一口大に切ったスイカだった。

今日はムニ坊も一緒にスイカを食べた。そして新事実が発覚した。ムニ坊はミミックマの姿で、口から食べる場合に限り味覚があるようだ。不定形スライム状だと味覚は無いそうだけど、ミミックマで居たがる理由の一つらしい。


自分の部屋でジェダイド様を待つ。ミミックマのムニ坊も一緒に待っている。

ネリーが食後のお茶を用意してくれたので、ムニ坊と話しながら飲む。今日は玄米茶だった。

「そういえば、魔力をあげると美味しいって言ってたけどそれって味覚があったの?」

「魔力は美味しいか、不味いか。ぐらいしか感じないよ。味覚って言うものの、複雑さはないよ」

「それって体に良いか、そうでないかって事?」

悪影響を及ぼす魔力もあるのだろうか?不味いと感じる所が気になる。体に悪い物の多くは不味い物だからだ。

「うーん…。よく分からないけど。ご主人の魔力は美味しい。でもダンジョン魔力は吸収したら不味かった…。環境マナと同じ筈なのにね、変だった」

「そう…」

謎が増えた気もするが、どうしようもない。もう少しムニ坊に聴取したほうがいいのだろうか。


居室の戸をノックする音がした。

「はい、どうぞ」

返事を返したら、扉をあけてジェダイド様が部屋に入ってきた。

「今日はちょっと話がある。が、体は大丈夫か?筋肉痛が酷いそうだが…」

ソファに座っている私達の側にやってきて問う。

「痛いですけど、なんとか大丈夫ですよ。ジェダイド様もどうぞ。ムニ坊、ネリーにお茶を頼んできて」

ソファの席を勧め、ムニ坊にネリーに新しいお茶を入れてくるように頼む。流石に冷めたお茶は勧められないのだ。

「わかったー」

ムニ坊が部屋を出て行く。


「そうだね、色々あるがまず、謝らないとならないね。君の人に対する恐怖症を理由に君を囲っているも同然の状態にした事をね」

二人きりになったら即、切り出してきた。

「囲っている状態ですか?でも自由にさせてもらっています。リナリア様にも会いに行くし、家族にも会いに行ってますよ」

「それ以外の交友関係を結べていない事が囲われている、と判断されているんだ。君の行動を制限しているように見える。良くない事だと指摘された。…指摘されるまで気付かなかった事をすまなく思う」

「でも、知らない人に会うのは怖いし面倒と感じるので、ジェダイド様が悪いわけではないと思います。どうしたんですか?いきなりそんな事を?」

「君を他者との関わりを制限していると、まあ母に咎めれれてな…。今度会いにくる言っていた。君に会うためだろう。その件でもすまない。拒否権も無く会う事は確定だ。日時は決まり次第報せる。覚悟していてくれ」

疲れた表情を隠さずに言われる。どんなお母様なんだ…。会うのが普通に怖い。

「君はまだ子供だから素のままで会っても問題ない。現状をしらせる意味もある。が、一応お茶会を開いてそこに参加という形になるだろう」

「もしかして、ドレスを着るようにという事ですか?」

コルセットはないが、重ね着をするので結構重いのだ。初夏の今これから暑く、湿度も高い事を考えると結構きついだろう。

「なるべく薄手の物でいいが、ドレスは着ていてくれ。母は貴族出身だから話も合わないだろうが悪意はない。些細なことで傷つかないようにね」

少し微笑んで心配を告げられる。

「………」

貴族出身のお母様だなんて、何を話したらいいのだ。全く検討もつかない。お茶会を開くという問題も淑女教育で習っていても、実践は殆どした事がないというのに。こればかりはジェダイド様に助けてもらう事もできずに絶句した。

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