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17、三度寝と筋肉痛

朝、しっかりと目が覚めるまでのウトウトとしたまどろみの時間が最高だ。日が高くなったら起きねばならないが筋肉痛の酷い今日くらいは二度寝が許される。と、いう訳で私はまだ寝るんだ。おやすみなさい。


心地よいまどろみの中、額にペタッと冷たいものが張り付いた。微妙にムニムニと押されている。

まだウトウトしたいのに…。この感触はムニ坊かな?

「ひまー。構って、構ってー」

言いながらムニムニと押してくる。

「…今、何時ー?」

私はうつ伏せ寝で首だけ横を向いている状態でいる。そのままムニ坊に時間を聞いた。

「えー?8時過ぎてるよー?」

「……まだ寝たいよー…」

この調子でムニ坊に三度寝を要求しておく。正直、身体強化の副作用のせいでまだ全身だるいのだ。足とかは特に痛いのもまだ続いている。正直、動きたくない。朝御飯を食べ損ねようと、断固たる意志で寝ていたい。

「……ひまー」

「……厨房や食料庫周辺の虫退治に行ってらっしゃいよ」

とりあえず、この家でもできるムニ坊の仕事を申し付けておく。

ムニ坊は私を起こす事を諦めたのか、離れて行ったようだ……。




私は前世の影響で寝るのが好きだ。あと小説を読むのも好きなことだ。どちらも私が思うに現実逃避ではあるのだがね。寝てる時は何も考えない。小説を読むときは現実を忘れて話に没頭できる。


小説もこの国では普通に一般的に存在する。紙も安価だし、識字率も高い国だからね。一般人の娯楽になるくらい普通に存在している。作家という職業も存在するくらいには一般的だ。


そして私は魔法を使うのも見るのも実は好きなんだ。これもきっと前世の影響だと思う。そうなると前世に影響されていない部分はどこだって位、私の部分がない。私はもうあの人ではないのに、ずっと影響されている。もうどっちも私なのだと思えばいいのか、前世の記憶に影響されているだけの私なのか、よく分からなくなった。

でも、前世の怠惰に見える私と同じにはなりたくないんだ。病人だから動けないのか、本当は正常で怠惰なだけなのか、自分でも分からなくなってきた。




三度寝は酷い前世の頃の憂鬱な悪夢をつれてきたようだ。しかし、考えさせられる夢だったな。

田舎の方のエルフは日が昇ったら起きて活動するのが普通だったから、寝坊は妙な罪悪感をもたらした。

現実逃避でまどろみに癒されたかったが、逆効果かもしれない。しかたないので体は痛いが起きることにするか。

「…うぅ…」

全身の筋肉痛はやはり辛い。光属性の治癒魔法は時間を操作して傷を無かった事にする魔法の為、筋肉痛は治せても治さない方が体は鍛えられるのだ。つまり、ずるは出来ないという事だ。


起き上がって部屋着に着替え、朝とはいえない中途半端な時間なため、昼ご飯をもらいにゆく。ちなみに部屋着は裾に花柄が刺繍された薄い緑色のワンピースだ。

居室の方には誰も居らず、ムニ坊も虫退治からまだ帰っていないようで、一人で厨房へ向かった。


「あ、おはようございます」

マリーを見かけ声を掛ける。

「おはようございます。もう、おはようと言う時間ではありませんがね。旦那様が昨日は疲れただろうから起こさなくてよいと仰られましたが、見事に寝坊ですね。それでお体のほうは大丈夫なのですか?」

「はは、は…。全身筋肉痛だけどまぁ、大丈夫です。マリーも身体強化を使ったのですよね?体は大丈夫なのですか?」

流石に10時過ぎに、おはようでは苦しかったか。

「身体強化に慣れておりますので。お嬢様も、もしやの時のために身体強化に体を慣らしては?体力もつきますしね」

「うーん。まあ、体力はあった方が健康的だけど、もしやの時って何時です?って感じなんですよね…。平和な街暮らしをする人は基本的にもしやの時がないと思うんだけどなぁ…」

少し耳が下がった気がする。昨日のダンジョンはもしやの時だったのだろう。

でも実際、町の商人や学者、官僚等のあまり肉体労働より頭脳労働の方々は、身体強化を使っていない気がするのだ。


「それで、お嬢様はどちらに御用事なのです?おつきのネリーはどうしました?」

「部屋に誰もいなかったから、とりあえず厨房にご飯を貰おうかなと。ムニ坊も厨房周辺か食料庫周辺で虫退治をしてるだろうしね」

「ネリーがいなかったと。あの子……、サボりかしら。お嬢様、サボりであるならば叱らねばなりません。お嬢様も使用人になめられる様では困ります。お嬢様は旦那様の番で妻になる身なのですから、毅然とした態度をとってください」

薄い灰色のもやが出る。マリーにとって娘のサボりは色々と許せない事のようだ。

「間が悪く、居合わせなかった可能性もあるので理由位は聞いてあげてくださいね」

「一応聞いておきます。それではお嬢様は紅葉の間でお待ちくださいね。昼食の準備はこちらでしますので。本来なら、ネリーに昼食の報せをさせ、お嬢様は部屋でお待ちになっている事が最善なのですよ?」

「ムニ坊に夢現で仕事を任せたから、一応ムニ坊の回収もしないとって思ったのです…」

灰色のもやは一応収まったようだ。フォローはしたが真偽については定かでないので、なるようになるだろう。

「ムニ坊の件については食後でも問題ないでしょう。ですがあまり厨房などの使用人区画はお嬢様の立ち入りは望ましくないのです。見かけたらお連れしますのでお部屋に待機していて下さい」

「はい…」

とりあえず、紅葉の間で早い昼食をとる事になった。その後は部屋で待機しながら勉強かなぁ。










早い昼ご飯はスイカのジュースと胡桃パン、葉物野菜のサラダ、オムレツに温野菜の付け合せにコンソメスープ、一口大に切ったスイカだった。

毎日出るスイカ。庭でも促成栽培しているのでまぁ、しょうがない。使用人たちもスイカはおやつにも食べてもらっているが、生産量と消費量が釣り合わない。

昨日ジェダイド様が言ったお酒にする案もどこかの酒蔵と交渉してもらって、スイカの生産量を増やしてチャレンジするのも有りかもしれないね。スイカはまだ安定して甘くする為に研究したいし。


自室に戻りソファに座り考える。とりあえずの今日の予定をどうするのかと。

今のところ、自習課題はナシ。体を動かす系は筋肉痛のため無理。…やはり例のスイカかな?でも酒蔵とか分からんし、交渉なんてどう考えても無理。ただ、甘くする方を考えたほうが建設的かな。




意識がハッと戻る。考え事をしていたらウトウトしてしまった。

廊下のほうでかすかに聞こえるのはマリーの話し声だ。相手は…ネリーかな?様子見に行くべきか、しかし家族の話に部外者は不要。どうしたものかな…。


「ほっといても大丈夫。魔力ちょうだい。構って構ってー」

いつのまにか隣にミミックマ姿のムニ坊がいた。こちらに短めの腕を伸ばしてパタパタと振る。やはり、仕草もかわいい。

とりあえずオレンジ色の手を握り上下にパタパタと振る。ムニ坊が飽きてきたら、ムニ坊を後ろ向きに抱き上げて、白い腹を撫で回す。ついでに魔力も流す。


そこで少し考える。夢に影響されたのかもしれないが、あまり魔法というものの研究はしてないなって。エルフにとっての魔法は錬金術などの精霊や大精霊に要請する以外のものだ。身体強化も精霊は関係ない術式で発動する魔術という括りの魔法である。

しかし、エルフは基本長命で魔法も生活のなかで当たり前に使い、研究資料も多く遺してあるが先人の知恵は多く遺されて、新しい研究部門は実はあまり残されていないのだ。

大体、先人の知恵の改良位しかする事がない。ので魔法の研究がしたいなら、そういった研究の成果の論文を集めて読むのが無難だ。

今日は書斎に行って魔法の論文探しでもしようかな。


「お嬢様、今日は体をあまり動かせないでしょう?淑女として嗜んでいるべき刺繍をしましょう。ネリー、用意して」

考えていた今日の予定はマリーの刺繍教室に変わってしまったようだ。




指を刺す程、注意力散漫になってないのはよかったが、あまり進まないし、うまく出来ないしで結構散々だ。

刺繍は専門家に任せるに限るっていう感じがする。


正直言って飽きた。裁縫箱の中を物色する。手触りの良い端切れが少しボタンの束に、包みボタン数個。前世の記憶にある一時期は嵌っていたつまみ細工を作れそうだね。細かい記憶は年々曖昧になる気もするし覚えている内に形にしたい気もする。似た様な細工はコッチにもあるかもしれないがね。


端切れを寸法をはかって5個程同じものを切り出す。後は糸で縫うだけなのだが…。

まあ単調作業だし私でも何とかなるかと作ってみる。

それぞれのパーツを縫って繋げると、真ん中に微妙な空間ができた。

糸をもう少し頑張って引っ張るが、一度は閉じても、玉止めするとどうしても緩んで空間ができる。包みボタンを真ん中に取り付ける丁度、緩んだ空間に入るようにする。

とりあえず完成。ちゃんと五枚の花弁の花になった。


さて気分転換もしたし、課題の刺繍に戻るとするか…。

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