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13、そして再びダンジョンへ

さて、一昨日森林浴中にダンジョンを見つけてしまい、近隣の町や冒険者ギルド、国への報告などの後処理がまだ終わらない今日、ダンジョンへ案内をする為、まず冒険者ギルドへ行きます。

ジェダイド様に報告して許可をもらったら直ぐに行くと思った?一日、確認の為の準備で潰れました。

冒険の道連れは師匠で婚約者のジェダイド様とその護衛のエルフの騎士三人、私の側仕えのマリーと従魔のムニ坊ですね。でもギルドに付いたらまた誰か確認のために派遣されるのだろうなぁ…。騎士三人は面識がある人でまだマシだが、これから知らない人と冒険に行くのが憂鬱だ。


ラディシュの町の冒険者ギルドにはジェダイド様と転移魔法で移動した。

「オランジュ、森でもダンジョンでも私の側から離れないようにね」

ジェダイド様は森歩きようの革のブーツにズボンとシャツ、その上にいつものローブを着て髪は一つに纏めてローブの下にはいるようにしている。森歩きようブーツ以外はいつもの格好である。後は髪を出すか仕舞うかの違いくらいしかない。

「案内は私の仕事と思っていますがダンジョンの中までご一緒した方がいいのですか?戦闘経験が殆ど無い私やマリーは森のダンジョン前で待っている方が足手まといにならずに済むと思っております」

私とマリーは前回の森林浴と同じような格好をしている。

「森での留守番も考えたけれど、ダンジョンも一緒に行動するように、目の届く範囲で戦闘経験を積んだ方がいいんだ。森の賢者は基本的に学者だが、研究によっては素材採取が必要になる。冒険者への依頼で片付けば問題ないが、自分で採取する必要もあるかも知れないからね。それに発見者の義務の事もある」

ジェダイド様の修行時代も戦闘訓練があったみたいですね。どういう所で経験積んだのだろうか。

「扉を開けてもいーい?」

ミミックマのムニ坊がギルドの扉を開けたそうにうずうずしている。

扉の開閉とか幼い頃遊んだ記憶がかすかにあるが、ムニ坊の精神年齢はいくつ位なのだろう?流暢に喋って驚く時も幼い仕草で和む時もあるのだがね。

「あけていいよ。では行くかね」

ジェダイド様がムニ坊に返事をして、ムニ坊が楽しそうに扉を押し開ける。

進んでいくとムニ坊がまた視線を集めているようだ。だが、ムニ坊に負けず劣らずジェダイド様も視線を集めている。

ムニ坊が並んでいる人のいなくなった右側の受付のお姉さんの所へ寄って行った。

「一昨日の件で確認の為、取り次いでもらえますか?」

「少々お待ちください」

そういって席を立つと奥の方へ急いで向かっていった。


ギルド内は少しざわめいているようだ。人は少ないはずなんだがね。耳を傾けると「銀のハイエルフ」とよく聞こえる。ジェダイド様の事かな?

「お待たせしました。副ギルド長のラウスンです。今日はギルド側の証人としてご一緒させて頂く事をお願いします。銀のハイエルフの殿下がいらっしゃるとは露知らず、いろいろとご無礼を申し訳ございません」

「今日はオランジュの保護者としてきたから、そう硬くならずに結構。今日はダンジョンの中にも国側の者として入るが、あまり深く潜らずに調査をするように。深部の調査はダンジョンが認知された後で問題ない」

やっぱり大人の偉い人がいると話がよく進むなぁ。まあ、昨日のうちに根回しとか色々あったんだろうな。そして、ライスの町へは副ギルド長のラウスンさんを加えて転移で行くことになった。











ライスの町の北側に転移で現れ、北側から森に入る。先頭はムニ坊で次にラウスンさんと騎士のアランが、その後ろに私とジェダイド様、マリー、騎士のイリアとゼフが続く。

今日はダンジョンへの案内なので道中の採取などはせず、まっすぐに向かう。町周辺だけあって大きい魔物も出ない。やはり一昨日はとても運が悪かったのだろう。足元に注意しながら進んでいく。

基本的に会話は無い。案内の最初に私がムニ坊に「ダンジョンまでよろしくね」と言ってムニ坊が「わかったー」と返事をしたくらいだ。周囲を警戒しているのは判るが静かすぎて少し居心地が悪い。まあ、話しかけられても何言っていいかわからないからいいんだけどね。

昼にもならない時間にダンジョンの入り口にたどり着いた。騎士三人が周囲の警戒をしている。

「ここか。確かに魔力が噴出してきているね」

「自然の環境にあわせてできたタイプのダンジョンですかね?」

昔父に聞いた、ダンジョンにはいきなり階段があるタイプと自然の洞穴や草原自体が異界化しているタイプなどがあるという。

「自然形成型だね。どちらも魔力溜まりからできるがこちらは発見が遅れ、ダンジョンの境界線が判りづらい事が特徴だな」

ジェダイド様とダンジョンの基礎知識を確認し、入る準備をする。

「これより確認のためにダンジョンに侵入しますが、本当にお嬢さん方も入られるのですか?」

「ダンジョンの有無の確認なのだから、深入りはしない。問題なかろう?」

ラウスンさんが戦闘に慣れていなさそうな私とマリーを気遣ってくれるが、発見者が入らないのも少し疑惑の残る問題かと思っているので断るしかない。疚しい事はないが冷静になると外聞が悪いとわかる。

それに騎士がいるとはいえ、戦闘の空気にも慣らし最低限自衛できねばならない。後、採取物は採取できないとならないしね。

「はぁ…。護衛の騎士がいるとはいえ絶対に安全なんて事はないので本当に注意してください」

ジェダイド様の様な王侯貴族がダンジョン等の危険地帯に自ら赴く事は基本的に歓迎されない。例え、森の賢者という特殊職にあってもだ。怪我でもすると物理的にくびが危険な人が多く出るのだろう。森にも魔物がいるとはいえ、ただの森歩きとの危険性が違うという事だろう。不自由なものだと思う。


ラウスンさんと騎士のアランを先頭にジェダイド様、私、その次にマリーとムニ坊、その後ろにイリアとゼフという順番にダンジョン内を進む。やはり基本的に会話はない。皆、警戒しているのはわかる。風の小精霊に近くの危険を報せてもらえるように頼んだが、その報せも無い。暗い土の洞窟を光の玉を周囲に浮かせながら進んでゆく。

前に来た時も最初はゴブリンさえ見かけなかった事を思い出す。階段という判りやすい目印を過ぎた頃からゴブリンが現れ始めたのだ。そうなると自然形成型かも疑問だ。しかし、手前の洞窟部分も地の精霊術で閉じる事はできなかった事も思い出す。やはり手前の部分もダンジョンの一部なのだろうか?

「ご主人、スライムがいるよ」

唐突にムニ坊が話しかけてきた。

周囲を見回し、しかしスライムは見当たらない。ムニ坊の感知能力は視力に頼っていない事を思い出す。

小精霊の報せはないが森にも多く存在する小さいスライムは危険と判断されないので、ダンジョン内のスライムも小精霊は報せないようだ。

「見えないけど大きさはわかる?」

「キャベツ位の大きさだよ」

ムニ坊の返答にそれは危険のない大きさなのかと思うが精霊基準では危険ではないのだろうと自身を納得させる。

「前回きた時にはこの辺りでスライムは見かけませんでしたね」

「森から来たのかな?それともダンジョンが生んだのですかね?」

マリーの確認に私の疑問で応える。正解はわからないがこのダンジョンは二日で変化している。

「変化の早いダンジョンか…。やはり生まれたてかな…」

そのとき、なんだかゾワっとした。辺りを見渡すが暗い洞窟である。光の玉で照らされた部分に変化はない。スライムもみかけなかった。

私の様子が気になるのかムニ坊が抱きついてきた。そして背中をよじ登りか首の周りに腕を回して背負う形になった。まあ、重くないので問題ないかと気にせずに進んだ。


少し進むとスライムをよく見かけるようになった。

そしてスライムはこちらにゆっくり寄ってくる。

「敵意があるみたい。話通じないし…」

ムニ坊が少し揺れた後、私の耳元でそう教えてくれる。

その後、風が吹いたと思ったらスライムが小さな魔石を残し消えていた。

ジェダイド様が倒したのかな。小精霊が動いた感じではなかったので。

ラウスンさんとアランがスライムの魔石を回収し鞄に入れる。それを見届けてまた進む。

再びゾワっとした。土の洞窟は暗い。照らされていても辺りは黒っぽい土だ。しかし足元が異様に黒い気がした。

その時、少しの浮遊感を感じたら辺りは真っ暗になっていた。やはり驚くと声はでない。急なことだったのだ。

「オランジュッ!!」

ジェダイド様の切羽詰った声で我に帰るが、辺りは暗くどこかを滑り落ちている様だった。

落ちている事、ムニ坊が私をぎゅっと抱きしめている事位しかわからなかった。

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