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12、終わらない後処理

日は傾いているが、夕暮れにはまだ早いこの時間である。迷子になるとかそんな事もなく冒険者ギルドの建物の前にたどり着いた。しかし、入るのに躊躇している。別に中から叫び声が聞こえるとか外見が汚いとかではない。単に怖気づいているだけだ。

「入らないの?とりあえず行こうよ」

そう言ってぬいぐるみの様な熊に擬態したムニ坊が扉を押し開けて中に入っていった。

待ってまだ心の準備が出来てないよ。


ギルドに入った途端多くの視線に晒される。逃げ出したくなる気持ちを抑えてムニ坊の後に続く。

人の多い時間帯は避けられたのかまばらな人々がこちらというか、前をぽてぽて歩くムニ坊に注目している。

見慣れない大きなぬいぐるみが歩いていたらまあ見てしまうかな。とりあえずいきなり絡んでくるような人はいないようだ。

ギルドの中のカウンターに3人のエルフが座っている。パッと見て年齢はわからないが人間なら20歳は越えていそうなお姉さん方だ。とりあえずムニ坊が寄っていった右端のお姉さんの所に私も寄っていく。マリーも付いてきている。そしてカウンターにムニ坊はたどり着いたのだが、身長が微妙でカウンターの上に頭だけ出す形になっている。後ろから見ると腕を上げてカウンターにしがみついているように見えて、ちょっとかわいい。なので脇の下から手を回して抱き上げる事にした。ムニ坊は体積のわりに重くないので私でも持ち上げられる。

「あの、お嬢さん?ご依頼の方ですか?」

受付のお姉さんが困惑しながら声をかけてくれた。

「依頼と言っていいのかしら?少し悩ましいですが、冒険者ギルドに報告しておいた方が良いと思い、今日はお邪魔しました。ライスの町周辺の森でダンジョンを発見しましたの。そちらでは、すでに把握されていますか?町から徒歩1時間程の距離なので心配で、知らせにきました。まだ把握されてないのなら国への報告義務がありますので、どうぞよろしくお願いします」

「え?…いや、あのダンジョンですか?聞いた事がないですが、上の者に確認を取って参ります。しばしお待ちください」

そう言ってお姉さんは席を立っていった。


知らせたけどまだ帰っちゃダメだよね…。本当に説明役をマリーに代わって欲しいよ。耳が下がっている気がするなぁ。

「そういえば、ダンジョンの場所も案内しないいといけないのかなー?」

ムニ坊が思い出したように言ってくる。

まあ、発見しました。後はおまかせって訳にもいかないだろうから、一度は案内しないといけないだろうね。憂鬱だな。また来なくてはいけないだろうが、来週だと時間が空きすぎるよね。

「マリー、明日か明後日の淑女教育を休んでダンジョンの場所へ案内する事は可能ですか?」

「旦那様に報告した上でなら可能かと思います」


「お待たせしました、副ギルド長のラウスンです。ライスの町付近でダンジョンが発見されたとの報はきていませんでした」

少しして二十代後半くらいに見える男性エルフが出てきて丁寧に答える。

「あっ、私はオランジュ・ケール・ライスです。発見してしまったダンジョンはいつ案内すればいいでしょう?」

「都合が付くなら早くお願いできますか?あの、ハイエルフの方ですよね?護衛もなくどうされたのですか?あとそのぬいぐるみの様なゴーレム?は何なのでしょうか?」

すごく困惑しているような感じで問われる。

「私自身は一般人なのでまだ護衛は付いておりません。この子は私の従魔のミミックスライムでムニ坊といいます。とりあえず無害です。婚約者への報告と相談の後になりますが明日、もしくは明後日にはダンジョンへの案内はできるかと思います」

「はあ、あの疑うのではありませんが本当にダンジョンだったのですか?勘違いではなく?物証となりえる物はありますか?」

私が子供でもハイエルフだからか話を聞いてくれていると感じる。負の感情は薄いもやなので、多分疑惑が少しという所かな。

チラッとマリーを見てお願いする。

「僭越ながら、物証はこちらです」

そう言って、鞄からゴブリン達の魔石とミミックの魔石、鉄の塊を出した。

「確認させてもらいます」

受付側の大きめな魔道具に魔石をのせて確認していく。

「ゴブリンは…多いですね。…ミミックスライムですか。基本的にダンジョンにしか発生しない魔物ですが…、従魔にされているのですよね」

鉄の塊ものせて調べる。

「不純物のない鉄ですか…どう入手されたのです?」

「ダンジョンの壁で魔力が流れてくる所があって、その場所で地の精霊魔法で抜き出した感じでしょうか」

「あまり言いたくはありませんが、可能性は高いが決定打に欠ける物証ですよ」

最初から騙りとは思われていないようだが、ムニ坊の存在がミミックという事で決定打とならなかったようだ。

「ゴブリンを倒すと死体が直ぐに消えたりしました。あと入り口で地の精霊魔法を使ってダンジョンを埋めようとしても力が浸透しない等ダンジョンの特性でしょう」

「そうですね…、確認はします。明日か明後日ですね時間はいつ位がよいでしょうか」

「そちらのピーク時を外した時間帯でお願いします。こちらから伺います」











ジェダイド様の家に帰宅後、用事を終えてすごく疲れた。やはり知らない人と会うのは精神的にとてもきつい。今日は女神の休日なのに家族とはあまり一緒に過ごせず、知らない人々と関わる事件が多すぎる。そしてまだジェダイド様への報告が残っている。このストレスはミミックマのムニ坊を撫で回していても、簡単にはなくならないものだ。ソファに座ってミミックマの白い腹の辺りを重点的に撫でる。つるつるのむにむにだ。

「魔力ちょうだい。やっぱりご主人からもらう魔力が一番おいしいと思う」

ムニ坊の魔力催促もいつもの事だがどうも嗜好品的に欲しがっている気がする。まあ、渡すけれどね。

ムニ坊の白いお腹に手を当てて魔力を流す。

「お腹じんわり。おいしいー」

ムニ坊が両手を頬に当てて喜んでいる。そういう仕草も可愛いと思う。

「お嬢様、お風呂の準備が出来ましたのでご入浴ください」

マリーが呼びにきて風呂に入る。今日は森に洞窟に探検したからね。流石に汚れているかな。実家では一人で風呂に入っていたが、ジェダイド様の家に来てからはマリーに介添えされている。最初は抵抗があったが慣れるもので今では一緒に入っても違和感は感じなくなった。ただしマリー限定でだがな。


そして夕飯はテーブルマナーに気をつけながらジェダイド様と一緒にとる。だいたいその時に一日にあった事を報告するのだが、今日は食べ終わったあたりから報告しよう。食事中に面倒な話題をふりたくないしね。


「今日は森へ行ったそうだな。珍しいことだね。どういった心境の変化だい?」

そういえば、森に行く事は前日からマリーには言って準備してもらってたっけ。

「ムニ坊が森に行きたいと言っていたので、森林浴がてら行ってみようとなりました。あの、そこでムニ坊が魔力の噴出す洞窟をみつけてしまって、地の精霊魔法で洞窟を閉じようとしたけれど出来なくて…、中に入って調べる事になりました。それで、そこはダンジョンだったんです。しかも未発見のダンジョンだったようで、近隣の冒険者ギルドや国に知らせないとってなったんですが、冒険者ギルドでは採取してきた物証になりうるものだと決定打に欠けるから、案内してもう一度探査になるようなんです」

後ろめたくは無いが言いづらい、今日あった事をいっきに説明する。

「あの、それで明日か明後日の淑女教育をお休みして行ってもいいですか?」

「言いたい事は色々あるが、護衛を付けるならばまあいいでしょう。それと私も一緒に行きますよ。いいですね?」

なんだか凄くジェダイド様が不機嫌だ。灰色のもやが見える。

「いえ、あの…、ジェダイド様まで手を煩わせるのは悪い、かなって…」

「オランジュ、君に護衛を付けないのは君に負担を掛けない為だが、ダンジョンなんて危険地帯に行くのに護衛も無しだなんて有り得ないんだ。そんな危険な所、金輪際行ってほしくはないが、国の為には行かねばならないのは判る。私のいない所で勝手に危険に飛び込むのはやめてくれ。独り遺されるのはいやなんだ」

話しているうちに少し情緒不安定な感じになっている。しかし、私にはいつもと違うなって様子位しか判別できていない。灰色のもやもうっすらとしていて具体的な感情はちょっとよく判らなかった。

「それに国に報告するにしてもギルドのみではなく、こちらからも報告を上げた方が良い。まあ、政治的な話にもなるからとりあえず置いておくか。君の保護者としても一緒のほうが良いのだよ」

灰色のもやが見えなくなる。ジェダイド様は感情を抑えたらしく、もう読み取らせてはくれなかった。

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