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1、前世の記憶っていうデバフ

初投稿です

意識がふと戻る。先ほどまで意識しなかった事を思い出した。


しかし、と思う。前世の記憶なんて、頭を打つとか死に掛けるとかで思い出すものなんじゃないかと。乙女ゲームの中に転生とかではあるあるらしいテンプレというやつとか。


そして今世の記憶も布団の中で思い返してみる。

物心ついた時の違和感などもなく、普通に親に愛され大事に育ててもらったと思う。変わってると今にして思えば、両親の種族がエルフで父クレソン、母ケールと言うなんだかサラダのような名前だ。そして私は親曰く、先祖返りのハイエルフでオランジュ。サラダシリーズじゃないのかって思う。親には悪いが。あと親と種族違いになった事とか。


どちらかというとこの世界はRPGの様な世界だろうか。魔族や魔王、人間に勇者、女神も妖精や精霊、獣人やドラゴンだっている世界だ。ちなみに、私たちエルフ、ドワーフは妖精分類だ。まあ、ハイエルフや一部のドワーフは精霊寄りの存在とされているようだけど。


それと、お布団のなかってぬくい。二度寝できそうな心地よさだ…。ぐう。


「オランジュ、いい加減起きなさい。…具合でも悪いの?でも、そろそろジェダイド様もいらっしゃるし…、具合が悪いなら診てもらう?…そう?大丈夫ならいいんだけど」

母の声に首を振って応え、ゆっくり起き上がる。母は声をかけると部屋を出て行った。


過保護に聞こえるって?大丈夫、今世の歳は58だけどハイエルフは大人になるのが時間がかかるエルフより、さらに時間が必要だから。エルフの58歳は人間の11歳位で、ハイエルフは個人差で変わるが幼年期は少なめらしいアバウトさで大体今人間でいう7歳位の外見をしている。

ちなみに母の話に出たジェダイド様はハイエルフで、私が同じハイエルフだからと婚約までさせられている不運な方だ。精霊寄りの存在として力を制御するための師匠でもある。エルフのくにの森の賢者として、人間や魔族の国と外交とかも仕事としてあるらしいが、ハイエルフは少ないがそういった仕事をしているものもいるようだ。まあ郷を出ずに内政をしている者の方が多いらしいが。


意識がしっかりしてきたら布団を足元に畳んで洗面所にいく。

鏡に映った少女はハイエルフらしい美貌の薄い金色の髪にオレンジ色の瞳の眠たげな表情をしている。

流石に師匠が来るというのに三度寝はまずいと冷たい水を出し、顔を洗って肩までの髪を梳かして一つに結ぶ。




母の作った朝食を食べ終え師匠を待つ。


さらに人生を振り返ってみながら、社会についての復習をするとだ。この世界は割りと男尊女卑の中世的なかんじの国が多い。人間の国とか魔族の国とかだ。妖精の国であるエルフの郷もそんな感じがする。男性の方が若干発言力があるとか、お家の継承権があるという具合に。まあ、女だからと黙れとか言われるほどではないが。ドワーフの郷もそんな感じらしい。

世界を作ったのは女神とされているのに、女性蔑視の風潮ってなんなんだろうね。おもに人間と魔族諸君。

そうこの世界は女神がいる。わりとマジで。神託とかも普通にある。前世を思い出してから、ここでも違和感。この世界の女神は世界を創り管理する精霊を生み出したという。精霊は世界と混じり妖精族やドラゴン等の幻獣を生み、その過程で人間や獣人、魔族も生まれたという。

前世の神は存在を信じるものは信じるが証明はできない存在だったのに。

ええと、後なんだっけ。そう、人間の勇者だ。女神が必要を感じて選ぶ存在で、場合によっては異世界から召喚される。この世界に異界の知識をもたらす事もある存在だ。しかし、魔王と戦う宿命とかはない。どちらかと言うと魔王は勇者のパーティメンバーだ。戦う相手は世界の歪みで現れる邪神らしい。ハイエルフの賢者も勇者のパーティに神託で選ばれるらしく、時代によっては私が生きている時にもあるかもしれないと師匠はいってたっけ。


「おや?魂の色が変わったね。何かあったかい?」


流石師匠、唐突だが変化は見逃さないって感じ。てか魂の色ってナニ?

「師匠、それって見てわかるモノなのですか?」

「精霊寄りといわれる所以だね。君にも見えるはずだよ」


そう言った師匠は年の頃は20代前半位で銀の長髪をゆるく三つ編みにして背にながした、翠の瞳のハイエルフらしい美貌で微笑む。

見えるはずと言われたからには違いがあるのだろうと師匠をじっとみる。

「…いつもの師匠に見えます」

「私に変化はないだろうからね。それで何があったんだい?」

師匠を相手に黙秘権の行使は認められず、洗いざらい前世の記憶らしきものを思い出した事を告げる。

「魂の変化か。異界の記憶といってもすでに過去の勇者がもたらしたものも大きく、目新しい知識は特になしか」


前世は日本人で中学生の頃に引き篭もりになった女性であり、鬱病も患い社会経験を積んだとも言えない半病人のようなものだ。無理を言われても困る。ついでに死因までは思い出せていない。そのほうが良いだろうけど。


「魂の変化は見えなくとも色くらいは判別できるだろう?」

できなければ、それが課題だと続けられ師匠をじっとみる。

目に意識を集中すると、師匠の輪郭にそって青緑の淡い光が見えた。

「…青緑色?のような光が見えます」

「ふむ、問題ないな。…魂の変化はそう恐ろしいものではない。特にハイエルフは元々そういうものにも近い存在だ。霊性が高いといった方が良いかな?記憶の事は公にするほどの事でもないが」

そういって私の頭を撫でる。

「ハイエルフの先達にも私と同じように前世の記憶があるのですか?」

「転生を繰り返す事で霊性を高める修行となるケースもあるが、珍しい事象だと思うよ。私にも両親にも前世の記憶はないからね」

そこで話を切り今日の修行だよと笑って告げる。いつもの日常だ。











夕暮れの空が見える。エルフの郷は森林地帯にあるとはいえ、集落は拓けた地であり薄暗さは感じない。


師匠は郷の王都と呼ばれる集落に転移魔法で帰っている。ハイエルフはエルフ達にとっての王侯貴族で先祖返りは滅多に生まれない。今思い返してみるとよく養子に取られなかったなと。エルフにハイエルフは育て難いだろうし。浮気とかも疑われなかったのかな。疑われないか、私の外見は目の色以外父さんに似ているし。父は外見だけは、とても美人な感じらしい。私にはよくわからないが。

この世界のエルフは少し耳が長くて大体、金髪碧眼だ。そして寿命は500年くらいである。でもハイエルフは髪や目に属性が出て、かなりカラフルらしい。私は薄い金髪にオレンジ色の瞳で光と地属性である。そして師匠は銀髪に翠の瞳の光と風属性だ。金でも銀でも光属性だが、女神の色は銀とされている事から銀の方が力が強い傾向だ。そして寿命は大体2000年から3000年くらい精霊としての力を持ってたりするとさらに長生きすることもあるようだ。精霊は寿命もないもんな。

異世界転生のチートなど私にはない。あえて言うなら、生まれた種族が転生特典といった所だろう。それも良し悪しだろうが。ハイエルフの寿命に精神が耐えられるのかと、子供がする心配でもないな。

そして師匠が婚約者と言う事。よく考えると不思議だ。なんで私はそれを疑問に思わなかったんだ。気付く前から婚約者、ハイエルフは数が少なく王族はハイエルフ。貴族は大半がハイエルフの血を引くエルフらしい。師匠は傍系でも王族らしい。継ぐ家はないって言ってたけれど。師匠との未来って想像もつかないや。大人になったら何か変わるのだろうか。


それとエルフ族は基本的にベジタリアンでもなく雑食です。

「お母さん、今日の夕飯は唐揚げが食べたいよ」

親と過ごせる時間は本当はとても貴重なものかもしれない。もっと大切にしていきたい。











前世の記憶が戻ってから一日がたった。


昨日は師匠が来る、女神の休日だから今日は光の日だ。この世界は12ヶ月で1年で一月は30日、一日は24時間である。曜日は女神の休日から数えて光、火、水、風、地、闇で休日にもどる。女神の生み出した大精霊たちにちなんだ名称らしい。

そして今日、学校がある。学校はエルフの50歳位から通い始めて習い終わった者から卒業していく形態の義務教育だ。ハイエルフの私も50歳から通っている。周りは10歳位なのに一人小さいと一緒に遊ぶとかも誘われ難く、大体ぼっちだ。いじめられている訳ではないよ。しかし、学校の事を考えてるとお腹が痛くなってきたな…。前世の記憶の中ではよくある事なんだが。


「いってきます」

そう母に声をかけて家をでる。向かう先は集落にある学校というか、ちょっとした広場だ。雨の日は休校になる。


雨降ってこないかな…。無理か。だんだん腹痛に加えて頭痛と吐き気もしてくる。

学校に近づくにつれ忌避感と恐怖心に苛まれる。前世の記憶を思い出す前はこんな事なかったのに、ひどいデメリットだ。


たどり着いた。他のエルフの子もちらほらいて、先生がくるまで遊んで待つようだ。

私は人の少ない場所を選んでうずくまり、目をとじる。

とりあえず辛い、何も考えたくない。痛い。




頭を撫でられて、意識が戻る。お母さんだ。家に帰ってきていた。

「体調が悪いなら無理せずに知らせなさい。連絡がきて心配したのよ」

もう昼頃になってる。

「ごめんなさい。朝は大丈夫だったんだ。学校に近づくと腹痛と頭痛と吐き気がしてきて…」

「風邪かしらね?…熱は無いようだけど」

母がオランジュの額に触れ熱を確認する。


風邪ではない。原因はなんとなく分かってる。前世の記憶トラウマだ。お母さんに秘密を作っているのが辛い。不信に思われるかもしれない。でも前例はあるようだった。あまり公にしない事だけど。

「お母さん、あのね…」

結局、話した。母は驚いていたが黙って最後まできいてくれた。名前も思い出せない前世の記憶の話を。

「他人の記憶を持っていてもオランジュは家の子よ。ハイエルフに生まれてしまった事で私たちにどうにもならない事でも、辛くても帰ってきて泣いてもいいの。ジェダイド様にも相談しましょう?」

話しているうちに涙が出て呼吸が辛い。ハイエルフとして生きた58年と前世の30年程の記憶でハイエルフの方が長いハズだが幼いせいか記憶に負けそうになる。

今世を生きていく為には学校くらい行けないと、この先ずっと苦しそうだ。前世でも人並みの人生を送れていなかった事ずっと後悔していたのだから、今耐えないと。











真っ青な顔で耐えながら親にも送り迎えしてもらい、学校に通った週末の休日。

「他人が怖い、か…。それはあくまで前世の記憶で、今世では誰かに傷つけられた訳ではないのだろう?私を相手に怯えるようでもないし…」

家の居間に座った師匠に相談したがあまり進展は無さそうだ。

「師匠は物心ついた頃には身近にいた家族みたいな存在ですから。他人は怖くても家族は無条件で信じられるようです」

そして他人は傷つけられるほど身近に他者はいない。学校では珍しい小さなハイエルフとして遠巻きにされるだけだし。近寄ってはこないが、ハイエルフとして悪目立ちしている気はする。


「師匠、将来あまり人目に触れずに引き篭もって、でも生活はしていける職業ってないですかね?」

切実に問いかければ、師匠は呆れ気味に答ええる。

「ハイエルフがつける職業では私のように森の賢者という学者なら、個人研究として引き篭もってもおかしくはないが、神託で名指しされると勇者と旅に出ねばならなくなるぞ」

「その神託ってそんなにきます?」

「ハイエルフの長い生のなかでも、千年に一度くらいの間隔で邪神戦争の神託がくる。邪神戦争以外なら二、三百年に一度くるかどうかという所だな」

神託の頻度が分かる師匠って何者か疑問は残るが、

「神託ってわりと来るものなのですね。師匠って今何歳なんです?」

「379歳だな。君とは321歳差だね。ハイエルフの内ではかなり若い方だ。だから邪神戦争はまだ経験してないな」

エルフもハイエルフも青年期が長く外見で年齢は分からないが両親より年上な婚約者ってハイエルフには普通なのかな。


「将来を考えるならその対人恐怖症は治した方が良い。引き篭もり研究者になっても、ハイエルフ同士の親戚付き合いは長く続くからな」

いきなり結婚後のほうまで話が飛んだ気がする。親戚付き合いってどの辺までなんだろう。

「解決方法は前世でも耐えて慣らすしか、見つかってないんですよ」

「時間ならある方だ。焦らず、慣らすしかあるまい」


結局、ほぼ師匠への現状報告で終わった。

まあ、対人恐怖症が完治しなくても森の賢者という研究者になれば、引き篭もりでも人生は何とかなりそうだと分かったので将来の夢は決まったな。何を研究したいとか思いつかないけどね。

豆腐メンタルなのでいつ書かなくなるかわかりません

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