誰も悪くないのに婚約破棄された悪役令嬢は、人魚との恋に溺れます(短編化)
とびらの様『あらすじだけ』企画参加作品です
人類の滅亡が危ぶまれた魔物との戦争があった。それを異世界から来た聖女のおかげで潜り抜けたとある王国。世界が平和になり、その国の王太子殿下とようやく結婚できると思っていた令嬢ヴェロニカだったが、殿下と聖女から婚約破棄を懇願されてしまう。原因は、聖女が好きな人と結ばれないと死んでしまう病に掛かっていたから。聖女は戦争の間に、国の代表として共に戦っていた殿下に惚れてしまっていたのだ。自分を姉のように慕ってくれていた聖女はボロボロの体で「ごめんなさい」と泣き崩れている。ヴェロニカは身を引くことに。
しかしヴェロニカはもう二十五歳。この国では生き遅れの年齢。親族総出で見合いに尽力するも三十連敗。その末、ヴェロニカは海の種族『人魚』と見合いすることになる。戦争の結果瘴気が晴れて、新たに交流が生まれた種族だ。
いざ、見合い当日。浜辺に現れたのは年下の美少年アトルだった。海では人魚だが、陸では人間になる魔法を使っているとのこと。しかしアトルは煽るような言葉で喋り(オタク言語)、出会いを祝す舞としておかしな踊り(ヲタ芸)を披露する。反応の悪いヴェロニカを見て、大きな水槽に逃げ込むアトル。そこに足を滑らせ、溺れたヴェロニカをアトルは即座に助け、人工呼吸をした。
そんなこんなで、お見合いは続く。陸の街を案内してみたり、アトルの従者に無理やり人魚にされて海を案内されてみたりするうちに、どんどん仲を深めていく。オタク言語等も陸の文化を勘違いしていたゆえだったと判明。アトルと従者なりに、海にあった陸から流れてきた本で懸命に研究した結果だったというのだ。
アトルも海では災いを呼ぶとされる特殊な『落とし子』という存在のため、海にとっては災いを淘汰するための見合い。だけど、アトルは海でヴェロニカの境遇を見ており、他者のために健気な彼女に惚れていたアトルは見合いの話に歓喜し、入念に準備をしていたのだ。
対してヴィロニカは海のこと、人魚のことをまるで知らない。アトルに好意を抱きつつも、その文化の違いに改めて異種族間の難しさを実感している時、ヴェロニカに聖女と王太子の結婚披露宴招待状が届く。宰相令嬢として、また先の婚約破棄に遺恨は残していないと証明するために、披露宴の友人代表として挨拶することになったヴェロニカ。それに、ヴェロニカの婚約者としてアトルも参加することになる。
いざ結婚式。納得して婚約破棄したヴェロニカだったが、王太子に愛情がなかったわけじゃない。やりきれない思いを隠せないまま、披露宴の挨拶に。ずっと浮かない顔のヴェロニカを勇気づけようと、アトルは魔法&ヲタ芸の演出でヴェロニカを励ます。まわりからの白い目にどうにでもなれと吹っ切れたヴェロニカ。堂々と結婚する二人へ、少しの嫌味を混ぜつつ挨拶を終える。その演出と挨拶に、聖女はとても喜んだ。
結婚式も無事に終え、本格的に自分たちの結婚準備を進めようとするヴェロニカとアトル。だけど、アトルが風邪を引いてしまう。看病しようとしたヴェロニカがアトルに触れると、アトルは大やけどを負ってしまった。人魚は体温が低く、人間が触れるとやけどしてしまうことを知らなかったヴェロニカ。それがきっかけで、ヴェロニカは従者から結婚をやめるよう提案される。それを受け入れるヴェロニカ。だけどアトルだけが納得しない。その悲しみのあまり、本来の『龍』の姿になり陸を驚かしてしまう。
人間と人魚は、触れ合うことができない。
夜な夜な涙するヴェロニカの元へ、王太子と聖女が来訪する。ヴェロニカを泣かせたと激昂する聖女。ヴェロニカは聖女に無理やりアトルの屋敷に連れて行かれることに。
アトルはやっぱり水槽の中で落ち込んでいた。声をかけられないヴェロニカの代わりに、聖女が声をかける。
「見事な打ちでした!」
アトルが陸の勉強をした文献は、聖女が異世界で書いていた日記だったことが発覚。元の世界でアイドルオタクで、彼女にとってヴェロニカは理想の『推し』だったのだ。意気投合した二人はいかにヴェロニカが素晴らしいか語り合う。
そんな二人をよそに、王太子とヴェロニカは現実的な話を進める。あんな強大な生物の親交なんて出来るのか、と。この婚約はヴェロニカの意思次第という国王の沙汰を王太子が告げると、アトルはその場から逃げ出した。そんなにヴェロニカを責めるな、可哀想だと激昂する聖女。王太子と夫婦喧嘩をしだす。
それにヴェロニカはキレた。原因がどうあれ……泥棒猫と浮気者風情が、自分の幸せを勝手に決めつけてくれるな、と。吹っ切れたヴェロニカはアトルが好きだと伝える。周りが、国がどうなっても構わない。私は自分の幸せのために、あなたと共にありたい。悲劇のヒロインをやめたヴェロニカは、堂々とアトルと結婚する。
『悪役令嬢』を書くんじゃなくて、『悪役令嬢ってなんなんだろう?』て考えるような作品を書きたがる私の性癖はやっぱり人とズレているんだと思う……。