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ジャイアント・ハンズ  作者: 倭人
第一章 胎動編
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9.ルプソールダム防衛戦

 ヘリコプターがダム近くの平地に着陸するとエンジンが止まった。


「良いか、お前らはここで息を潜めてろ!」


 ビクトルはそう言い残して、さっさとヘリから飛び出していった。もう一人の男が慌ててでかいリュックを担ぎ、片手にでかいアタッシュケースを持って後を追っていく。たぶんDAHSのテクニカルサポートじゃないかとクラッチは想像した。

 杖をついて少し窮屈そうな足取りで、DAHSコマンダーのレニアが声をかけてきた。


「リゾネーター使いの容疑者なんで、一応こちらの預かりになっているけど、おとなしくしていてちょうだいね。すぐケリを付けてくるから」


 そしてレニアもビクトルのかぶっているDAHSに似たヘッドギアをかぶった。クラッチは訊ねた。


「レニアさんもリゾネーター使いなんですか?」


「違うわ。私はコマンダー。これでアクター側のフォビーの身体を操るの。フォビーはリゾネーター使いだけど、軍人じゃないからね、格闘戦は年相応。だから、リゾネーターを使う時以外では元近衛師団の私がDAHSを経由して私の格闘スキルをフォビーの体で再現させるのよ。あなた、DAHSに興味あるの?」


「はい。将来甚命機動救助隊に入りたいんです」


「そう。期待してるわ。未来の同志クン」


 微笑んでレニアも杖を突きながらヘリから出て行く。


「あの、俺も連れてってくれませんか? お役に立ちます! サポートでもなんでも……」


「君は今容疑者なんだから。立場をわきまえなさい」


 レニアにピシリと拒否された。


 ヘリのドアが閉まると外からロックがかけられて、クラッチは肩を落とした。


「あーあ。私ら置いてけぼりかあ」


「……なんだよ、ヨーコは別に甚命機動救助隊に興味ねえだろ?」


「そうなんだけどね。でも、人がそんなに夢中になってるのって、ちょっと気になるじゃん」


 ああ、気になるよなとつぶやき、クラッチは立ち上がった。コクピットならフロント越しに外は見られる。せめて遠方からでも状況をこの目で見たいと思った。

 フロント越しにルプソールダムが照明でうっすら浮かびあがって見える。同時にあちこちで炎が上がり、爆発の閃光が見えた。銃火器の発火があちこちで明滅している。ひときわ激しく黒煙と炎が沸き上がっているのはダムの操作管理棟だった。ダム周辺にはガルディア解放戦線のテロリストも多いが、そこに倒れているのは帝国陸軍の兵装の者が圧倒的に多い。


「ねえ、あれあれ! さっきのビクトルじゃない?」


 ヨーコの指さす先、ビクトルがダム上の道路に現れた。テロリスト達が一斉にビクトルへ銃口を向けるが、ビクトルはズカズカ進んでいく。何も身構えず歩いていく様にテロリスト達も何事か? と引き金に掛けた指が泊まっている間にも、ビクトルは更に距離を詰めていく。


「ヤバイ、撃たれる!」


 そう、ヨーコが声を張り上げたとき、テロリスト達が一斉に何者かに突き飛ばされたようになって、一斉に前のめりに吹き飛ばされた。

 驚き背後へ振り返るがそこに何も見えない。しかし彼らは更に次々見えない何かに殴り飛ばされるように吹っ飛ばされていく。


「……何も見えないけど、たぶん後ろからリゾネーターで攻撃したんだよね?」


 クラッチが首を縦に振る。


「あの人、すごいリゾネーター使いだな。DAHSを使って能力upしているにしても10m以上の距離でリゾネーターを現出して攻撃するなんて……」


 クラッチは話しながら胸元からブルートリムのペンダントを引き出した。ブルートリムはテロリスト達が吹き飛ばされる都度、強く明滅を繰り返す。


「こんなに強く輝くなんて見たことが無いよ。コンガーでもこんなに強い輝きじゃ無かった」


 原理は分からないが、このブルートリムは、周囲でリゾネーターが現出すると、それに感応して光り輝く。クラッチ自身がリゾネーターを使おうとしても現れる。こんなには強い輝きをしてはくれないのに悔しい思いもしているが。

 テロリスト達が後退したダム上ではビクトルが倒れている帝国兵士に駆け寄っている。ビクトルを先頭に帝国軍兵士達も続く。倒れている兵士を救出しようとしている。


「凄いねえ。相手は機関銃を持ってるのに! テロリストをばったばったとなぎ倒して」


「ああ、機関銃で撃たれるかもしれないっていうのに、真っ正面から歩いていく度胸! 精神も強いなあ、あれが甚命機動救助隊。鳥肌が立つぜ。かっこいいなぁ」


「ぶーぶー。クラッチはナイフ相手でもぶっ飛ばそうとしなかった! つまんなかったー!」


「はん! 誰がヨーコを喜ばせてやるかってんだ!」


 遠く安全なヘリの中からは発砲音も小さく軽く、二人からはさながらゲーム画面を見ているように思えてしまう。けれど、帝国兵が撃たれる度に血飛沫がダム上道路に散っている。現実にあそこでは殺し合いが起きている。

 しかしテロリスト達の数が多い。ビクトルは迫るテロリストを見えないリゾネーターで倒していくが、ダムの反対側から新手のテロリストが次々押し寄せてくる。ビクトルに続いた帝国軍兵士が撃たれ倒れていく。ビクトルはダム道路上で奮戦してはいるが、味方の帝国軍兵士は一人、また一人と倒れていく。

 ダム中央には大型トレーラーが止められ、そこから爆薬が積み下ろされていく。テロリスト達はダム中央に爆薬をセットしてダムを破壊しようとしているらしい。もしそうなればダム湖の湖水が一気に流れ下る。下流域の首都シャワール・ダイに洪水が押し寄せる。

 それを阻止しようとビクトルはダム中央へ向かおうとするが、テロリスト達は頑強に抵抗を続け、ビクトルはもはやダム上道路で孤立無縁になりつつある。その間にもダム中央では爆破準備が進められていく。


「……このままじゃ、ダムがやられる……」


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