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ジャイアント・ハンズ  作者: 倭人
第一章 胎動編
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8.DAHS_Direct axon head set

「ふーん。結局持ち逃げされちゃったんだ」


「そんなことは無いと思う」


「あー天使ルミ様の色気にほだされて、詐欺に気付けないでいるわけね」


「あの人を詐欺扱いするな」


「あらら。こりゃ重傷だ」


「このブルートリムのペンダントが無いと俺はリゾネーターを現出できない。詐欺ならこんな貴重なものを証文代わりにおいてきやしない」


「クラッチがそれで納得してるならいいけど。でも、元々持っていたブルートリムのブレスレッドなら、もっと強いリゾネーターが出せるはずなんだよね?」


「ああ。その可能性はある。そして甚命機動救助隊だと、そもそもがあれなんだ」


 クラッチはそう言って、コクピットにいるビクトルが頭にかぶるヘッドギアを指さした。その銀色に輝く金属フレームのヘッドギアには、小さなイルミネーションランプが明滅し、電子機器も組み込まれている。


「ダイレクト・アクソン・ヘッドセット、空間軸索形成技術の世界最先端、最小マシン。通称DAHSダースだ。アレをコマンダーとアクターが被ることで脳内信号を直接相互通信する。コマンダーが体を動かそうとする脳の信号を発信して、受信したアクター側のDAHSを経由してアクターの脳に信号を伝えてアクターの体を動かせる。格闘ゲームでボタンやスティックで画面上のキャラクターを操って身体を動かすように。それをDAHSは人間自身を操作させるツールだ。元々は若い、技術の無い兵士を経験ある熟練戦闘員並に動かそうと、負傷や高齢で退役した軍人にコマンダーになってもらい、若い兵士をアクターとして体を操作させるためのものだったけれど……」


「でも、数年前からDAHSを使うとリゾネーターがパワーアップ出来ると分かって、甚命機動救助隊でも実戦配備されつつある、でしょ?」


「その通り。DAHSの空間軸索形成がリゾネーターを活性化させるらしい。要するに、DAHSの能力はブルートリムそのものなんだ。方や帝国の最新科学の技術で出来た電子機器、方や奥地で見つかった謎の宝石だけど」


「ルミは俺の持っていた、より強力なブレスレットの、戦士のブルートリムを持って行ったんだ。仮に戦士のブルートリムよりDAHSが強力だったとしたら……」


「甚命機動救助隊にいれば、今度はDAHSを貸してとやってくるかもしれない、ルミとまた会えるかもしれないと?」


「そう。消防隊や警察は人助けするカッコイイ仕事だけど、DAHSを使わないからな」


「そんな淡い期待で甚命機動救助隊を目指すわけ? すごいおおざっぱな計画ね」


「行動しなければ、もうそれで何も起きない。『戦士の』ブルートリムは俺が何者かを知る手がかりなんだ。どうしても取り返したい」


「それがクラッチの本音なんだ」


「人を助けたいって気持ちも本当だ。ふたつ併せて、それが俺だ」


「むむ。なんかカッコよくまとめたねぇ。でも国立機動救助養成学校に入学できないんじゃ、DAHSにも手が届かない」


「……そう、そこなんだよな……」


 国立機動救助養成学校の入学試験には一般高校入試と同じ学力と共に体力とリゾネーターグレードテストのスコアが高いことが求められる。どうしてもクラッチはスコアが足りない。


「ああー! またその目はネガティブになってるー! クラッチ、そこは笑えー! 何は無くてもまずは笑えー! ほらあー!」


 手錠をされたままヨーコはクラッチの頭を鷲掴みにしてブンブン振り回し出す。

 クラッチはされるがままに、苦笑していた。

 やがて体に下方向の加速を感じた。

 ヘリコプターが降下し始めている。


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