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ジャイアント・ハンズ  作者: 倭人
第一章 胎動編
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5.手打ち

「悪いが、坊ちゃんのリゾネーターがどんな能力なのか、それを私は見る前から分かってるんですよ。それが私のリゾネーター能力。背後から狙おうと、リゾネーター使いが接近してくるだけで手に取るようにそれが分かる。そしてリゾネーターも能力が分かっちまえば、あとは踏んできた場数がモノを言う……」


 そこまで言いかけて、ランザがぎょっとして振り返った。


「だ、誰だ、てめえ」


 いつの間にかクラッチがランザの背後に立ち、肩を掴んできた。

 クラッチは静かに、そしてランザを睨み据えていた。


「もうケリは付いてるじゃねえか。これ以上やるなら、今度は俺が相手になるぜ」


 クラッチがリゾネーターを現出させる。深く、暗い赤の拳がクラッチの前に現れる。


「おおっと、あんたとはやらねえ」


 ランザが複雑に瞳の色を揺れ動かし、含み笑いをしながら後ずさりした。


「なに? なんだと?」


「負ける喧嘩はやらねえ主義だ。あんたが無駄に暴力しないって主義と同じだ」


「なんだと! コンガーはこんなもんじゃねえ! 俺なんかより二桁上のハイスコアラーだぞ! たまたま勝ったからって、いい加減なことを抜かしやがると……」


 ランザはナイフを無造作に放り捨てると、両手を挙げて首を振った。本当にもう戦う気は無いことを示した。


「フフフ。その様子、あんた自分で自分が何者かを分かってないようだ」


「なんだとっ?」


「おっと、私の相手をするより、さっさと坊ちゃんを病院に連れて行った方が良い。そして圧縮空気は可燃性ガスと火で簡単に爆発するぞと。あんたからその能力バカな坊ちゃんに言い聞かせてやってくださいや」


 気がつけばパトカーのサイレン音にヘリコプターの音が上空から聞こえてきた。


「潮時のようだ。お互いこれで手打ちにしやしょう」


 ランザは仲間二人へ声をかけて引き上げを指示する。クラッチは立ちすくんで震えているヨーコにサイフを投げ渡した。


「自販機でミネラルウォーターを買ってきて! 傷口を洗って火傷を冷やすんだ、急いで!」


 自身は携帯電話で救急車を呼びだし、その間にもハンカチを引き裂き、出血箇所に押し当ててコンガーに声をかけ続けた。ヨーコが戻ってくるとペットボトルの水を流してコンガーの火傷を冷やす。

 その様子をランザがじっと見ていた。


「普通、こういうときは怪我に脅えて何も出来ないもんですが。経験があおりで?」


「初めてだ。でも人助けをする仕事に就きたいんだ。いつもそれを考えている」


「ほう。甚命機動救助隊、とかですか?」


「いつかそうなれればと思ってる」


 ランザが静かに笑みを浮かべた。


「なれますよ、あなたなら」


 クラッチが振り返ると、ランザが神妙に頷いていた。


「あなたの名前を聞かせていただけますか?」


「クラッチだ。クラッチ・トニッシュ」


「クラッチさんですか。フフフ。今夜は良い夜になった。またいずれお目にかかりましょう」


 ランザは帽子を手にとって満足げな表情でクラッチに会釈をした。ヤンキー共へ一声かけると、小走りに闇の中へ消えていった。




 そしてクラッチは10分後、やかましいホバリング音の中にいた。

 ヨーコと共に手錠をはめられ、飛び立った大型輸送ヘリコプターの荷物室に並んで座らされている。ヤクザとヤンキーは綺麗に逃げおおせたのに、二人は警察に捕まってヘリに放り込まれていたのだった。



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