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ギャグラノベだよね? はいギャグです

 22世紀。


 大統領は、深い眠りから目を覚ました。



「生きてる……」



 100歳を過ぎてから、眠るたび、部屋の天井を見られるか不安になる。



 目を閉じれば、もう目覚めることはないような気がする。



 起こしてくれた世話係の手を借りながら、大統領はベッドから起き上がり、着替え、朝の支度を済ませると、質素な病人食を食べた。



 消化吸収する力が弱っているので、各種成分に分解済みの栄養素を混ぜた、合成素材で作られた料理だ。



 食事が終わると、大統領は100年間変わらない、いつも通りの業務を進めた。


 資料に目を通し、国内外の状況を把握。



 それから、政治家たちや各省庁の事務次官、県知事たちから提出された、山のような法案、政策案を精査していく。



 脊髄反射に近い即断即決ぶりには、秘書たちはいつも驚愕させられる。



 インタビューに、彼らはいつも答える。



「人間技じゃない」「進化の特異点」「最初で最後の超人類」「ただの現人神」



 その一方で、大統領自身は笑いながら言った。



「私は高校を中退した中卒男子で勉強は大嫌いでしたよ。だけど、大統領になって嫌でも覚えた。まぁ、強い意志さえあれば、大統領なんて17歳の子供にも務まるってことですよ。だって簡単でしょ? やるべきことをやる、それだけなのだから」



 午前の業務を終えると、大統領は、50人を超える子供、孫、ひ孫、玄孫たちに連れられて、宮廷を出た。ちなみに、まだ赤ん坊の来孫は、乳母車に乗って同行する。



 宮廷の敷地から出ると、外は、地平線の果てまで続くような群衆で埋め尽くされていた。



 国内外を問わず、一千万人を超える人々が大通りから続く国道の左右を埋め尽くし、人垣を作っている。



 今日は特別な日で、これから、長い道のりを歩き、集まってくれた人々に姿を見せる予定だ。



 途中からは車に乗るが、大統領は可能な限り自分の足で歩きたいと言った。



 そして、歩き出す前に、数十万人の群衆が笑顔で言った。





『だいとうりょう! ひゃくじゅうななさいのおたんじょうび、おめでとう!』





 数十万人の拍手と歓声が大合唱する。



 遠くの鐘楼で鐘の音が響き、係の者たちが白いハトの群れを飛ばした。



 それから、国際ギネス協会の会長が、数枚のギネス認定書を、大統領に見せた。



「これは、協会からの誕生日プレゼントです。貴方は、【大統領在位期間最長記録】【大統領最高齢記録】【GDPの増加記録】【人口の増加記録】【国内死者数減少記録】【支持率記録】【ファンレターを貰った枚数記録】【誕生日に集まった人数記録】【ノーベル平和賞を受賞した回数世界一】そしてあなたが17歳の時に得た【世界最年少大統領、大臣、政治家】、【一人で兼任した大臣の数】を合わせ、【世界でもっとも多くのギネス記録を持った大統領記録】です」



 会長から認定書を受け取り、大統領がお礼を言う。認定書は家族の手に託され、大統領は国民に埋め尽くされた通りを、自分の足で歩いた。



 誰もが笑顔で、嬉しそうに手を振り、大統領の名を呼んだ。



 大統領も、笑顔で左右の人々に手を振り、会釈を続けた。



 同時に、大統領は死んだ妻たちのことを想っていた。



 自分が恋した妻たち。愛した妻たち。自分をこの国に連れてきてくれた妻たち。



 彼女たちは、全員、自分よりも先に逝った。



 それはとても悲しいことだけれど、自分の死で彼女たちを悲しませずに済んだ。



 そう思えば、これが最良なのだ。



 不意に、人垣の中から、一人の幼女が転び出た。



 大統領は、老いた足で駆け寄ると、スーツが汚れるのもいとわず、膝をついてしゃがみ込んだ。



 そして、幼女を抱き起こして、彼女の服から砂を払った。



「だいじょうぶかな?」


「う……うん」



 幼女は怪我こそしていないが、やはり痛かったようだ。表情が辛そうだ。



「でも痛かったね。ほら、アメだよ。これで元気いっぱいだ」


「ありがとう♪」



 笑顔の幼女の頭をなでると、大統領は再び歩き始めた。



 国中の人々から愛されながら、祝福されながら、歓迎されながら。



 彼は笑顔で歩き続けた。



 この一か月後の朝、世話係が大統領を起こしに行くと、彼はもう起きなかった。



 訃報は世界中を駆け巡り、彼の崩御を知った人々は深く悲しんだ。



 そして、空を見上げて祈りを捧げた。



 この世で最も尊き、至高の魂の安寧を願って。




   ◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆




 ミイネの協力を取り付けてから一週間後の昼。



 彼女には、俺と同じ執務室で各所に親書を書いてもらっていた。



 今では、毎日パソコン作業に明け暮れている。



 ミイネはこの国の姫で顔が広い。



 その彼女から、新政府に協力するよう親書が届けば、日和見主義の企業や組織は従うし、国王派の組織も、嫌とは言わないだろう。



 事実、ミイネからの親書を受け取ったパシク国内の企業、投資家、実業家や県知事たちは、続々と初詣ならぬ大統領詣とばかりに宮廷を訪れている。



 オウカは、毎日何十人もの人々と面会し続け、彼らと親交を深めている。



「さてと、そろそろ閣議の時間だな。ミイネも参加してくれないか?」



 途端に、ミイネは視線を逸らした。



「や、やめとくわ、部屋にいる……」



 火炙りの刑に処されて以降、ミイネは少し臆病になっていた。別にオウカが火炙りにしたわけではないのだから、そこまで警戒しなくてもいいと思うんだけどな。



「じゃあ行ってくるよ」


「あ、待ちなさい」



 俺が執務室を出て行こうとすると、ミイネに呼び止められる。



 振り返ると、彼女は上目遣いに俺を可愛く睨みながら、唇を尖らせた。



「今はあんたらが政府なんだから、この国、よくしてよね」


「おう」



 力強く頷いてから、俺は執務室を出た。




   ◆



 ゾンビパニックマニアの鈴木鉄平は、5年がかりで完成させたノート50冊分に及ぶ最強ゾンビパニック指南書を作っていた。



 その内容は、全て暗記済みだ。



 計画通り、エアーネイラー(釘を打つ機械)を改造して銃を作り、モップの柄に包丁を取り付けて槍を作った。



 左手に槍、右手に銃のスタイルで、鈴木鉄平は港町を駆け抜ける。



 駆逐したゾンビの数は、100から先は数えていない。



 最初は、にゅあああああああ、とか叫んで逃げ惑っていた鉄平だが、時間の歩みと共に感覚が研ぎ澄まされ、本当の自分に目覚めていくのがわかった。



 拾った迷彩柄のジャケットを羽織り、サングラスをかけた姿で町を歩いていると、物陰からゾンビが襲ってくる。



「雑魚が」



 コンマ一秒の閃きが、ゾンビの首を刈り取り、屍のあるべき姿へと帰した。



「愚かな、槍術通信講座3級を持つオレに勝てるとでも思ったか」



 その時、少女たちの悲鳴が聞こえて、鉄平は駆け出した。



 喫茶店の玄関フードのガラスが割られ、五体のゾンビが入っていく。



 中には、3人の巨乳美少女たちが腰を抜かしていた。



 鉄平は、早撃ちガンマンよろしく、エアーネイラーの引き金を五回引いた。



 釘は狙い過たず、ゾンビたちの後頭部のやや下、ぼんのくぼ、と呼ばれる急所を直撃して、脳髄を致命的に破壊した。



「怪我はないか?」


「き、君は……?」


「俺は鈴木鉄平、日本人だ。ここは危ない。近くに大型スーパーかデパートはあるか?」


「スーパー?」


「ああ、立てこもるなら大型スーパーかデパートがいい。案内してくれ」


「は、はい!」



 少女たちは立ち上がろうとして、赤面した。


 彼女たちは恐怖で失禁し、短パンやスカートを汚していた。



 鉄平は、紳士的に目を背ける。



「さぁ、早く行こう。そこなら必要なものが全て手に入る」



 少女たちは、静かに頷いた。


「あの、鉄平さんは、どうしてそんなに冷静なんですか?」


「なんてことはない。こうした状況を見据えて、長年対処法を研究し、訓練してきただけだ」


 鉄平はクールに告げた。



「この状況を見越していたんですか!?」



「ああ、そのためにゾンビモノを500本見て勉強して通信講座で槍術と射撃術を習った」


「ゾンビモノってなんですか?」



「対ゾンビ用の教材だ。日本ではメジャーだぜ」


「え? 日本て日頃からゾンビ対策しているんですか?」


「ある意味そうだな。だから俺に任せろ。武器の作り方、扱い方、バリケードの作り方、立てこもり方、逃げ方、全て教えやる」



 男前過ぎる頼もしい声に、少女たちはうっとりとした。


「「「はい、鉄平くん!」」」



 ――翔太。俺は今、夢を叶えているぜ!



 鉄平は外に出ると、青い空に友の顔を映した。

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