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公園の冷たいベンチに座り、瑠璃花は雄大をちらりと伺い見た。

雄大は大人しく瑠璃花の横に座り、少しも動かない。

顔と耳が赤いのは寒いからなのか、それとも恥ずかしいからなのか、瑠璃花には判断できなかった。


「…あの、ありがとう。…私、告白とかされたことなくて…その、嬉しかった」


頬を染めて瑠璃花はうつむく。

それから体の向きを雄大の方へと向けた。


「…ごめんなさい。私、好きな人がいるから」


静かに瑠璃花の話を聞いていた雄大は、ふぅー、と長いため息をついた。


「そんな気はしてたんだけど…その、今日落ち込んでたのもそいつのせい?」


雄大に問われて瑠璃花は頷く。

雄大がその先を待っている気がして、申し訳なさそうに口を開いた。


「…うん。こんなこと大畑くんに言うのも悪いんだけど、その人にバレンタインデーにチョコを渡したら…その、抱きしめられて…」


「はぁ!?」


「うん…いや、それで、今日会ったらバレンタインデーのことはなかったことにしてって言われて…」


「はぁぁ!?何ソレ!?」


雄大の反応を聞きながら瑠璃花はその反応に思わず納得する。


皐月に言われた時はショックだったのだが、雄大の反応を見て、瑠璃花にも再度怒りが込み上げてくる。

これは確かに怒っていい筈だ。

思わせぶりな態度に振り回されている自分が馬鹿みたいだと、瑠璃花は冷静な頭で考える。


「…一ノ瀬さん、そいつのどこがいいの?」


雄大に聞かれて瑠璃花はぴたりと動きを止める。


「そんな意味わかんないことして、そいつ何なの?ホスト?」


敵愾心剥き出しの言葉に瑠璃花は困ったように首を捻る。


「いや、ホストじゃないんだけど…立場のある人だから」


「……不倫してんの?」


心底嫌そうな顔をして雄大は問う。

ぶんぶんと首を横に振って瑠璃花は雄大に焦って返答する。


「違うから!不倫もしてないし、ホストと知り合ってもないから!」


まだ訝しげな顔をする雄大に瑠璃花は眉間に皺を寄せる。


「普通の人だよ。ただ、学生じゃないから…何考えてるのかよくわかんないだけで……悪い人じゃないよ」


どちらかと言えば生徒にも人気があるようだし、教職をしているくらいだから、子供も好きなのかもしれない。


「それってさ、教師?」


「………大畑くんって意外と鋭いね…」


雄大は自分で聞いておきながら瑠璃花の肯定を示す答えに目を丸くする。

すぐには反応できない雄大に瑠璃花は気まずそうに笑う。


「秘密に……する必要もないか」


瑠璃花達は卒業するのだから。

そうなったら皐月と会うことはなくなる。

高校という舞台の上でしか交わることのない関係なのだ。


瑠璃花は皐月の住所も知らないし、連絡先だって知らない。


高校に行かなくなったらもう会う機会もないのだ。

瑠璃花の気持ちを秘密にする必要などない。


そんな事を考えていた瑠璃花に雄大が言った。


「…告白したら?」


雄大の言葉に瑠璃花は驚く。

まじまじと雄大を見つめると雄大は困ったように頭をかいた。


「いや、俺が言うのも変だけど…気持ち伝えるとスッキリするから」


「……そういうもの?」


「うん。それで、もし振られたら…その…俺のことももう一回考えて…下さい」


最後の方に向けて小さくなる声に瑠璃花はくすりと笑う。


「…はい」


雄大の一生懸命な姿は好ましかった。

同時にそんな風に雄大が言ってくれたことに瑠璃花は嬉しくなる。


振られたからそれなら、と簡単に雄大と付き合うことはないだろう。

けれど雄大が言ってくれたように考えてもいいのかもしれない。

雄大のことがどれくらいで好きになれるのか、そもそも好きになるのかもわからないけれど、雄大の言葉は瑠璃花に勇気をくれた。


どうせ振られてももう会わなくなるのだ。

そう思うと瑠璃花は雄大の言う通り、皐月に気持ちを伝える気になったのだった。

お読み頂きありがとうございました。

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