介入3
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一方その頃、ロサンゼルスの中心部で二人の男女がドラゴンの被害から免れた高層ビルの一室で話をしている。
二人はロサンゼルスにドラゴンを出現させた仕掛人でもある。
特に、長耳が特徴的で白銀の髪を靡かせている異世界人の女性。
彼女はドラゴンの大きさが想定していた種族ではなく、異世界でも希少種で尚且つ凶暴性の高いものであったとライブラリータワーに突き刺さっているドラゴンを指差しながら男に説明している。
「あのドラゴンは英語で言えばレッドドラゴン…私達の言葉では”ドゥラ・メゾドル・ファルア”と呼ばれているドラゴンの中でも上位に君臨している種族よ、あれだけ大きなドラゴンを転移させるとは思いもしなかったわ…」
「そんなに珍しいのをよく転移させてきたな…」
「正確にいえば飛んできたといえばいいのかしら…最も、異世界でも30体前後しかいないとされているレッドドラゴンを撃破してしまうだなんて…正直驚いているわ、あんなドラゴンは私でも初めて見るわ」
「300年以上生きているのに?」
「ええ、生まれて初めてお目にかかったわ」
「あれねぇ…しっかし、ロサンゼルスも派手にやられたもんだ…こりゃ完全な復興は10年はかかるぞ…」
ダウンタウン地区は半数以上が焼け野原であり、その大部分では生存率が絶望的になりつつある生存者の救出作業が夜通しで行われている。
消防・警察・自警団・宗教団体…様々な思想や人種が入り乱れながらも生存者救出や復興に向けて作業を連携しておこなっている。
意見や主義主張の違いで小競り合いこそあれど市や州の指示で各自の役割分担なども任されており、アメリカ各地から集まった運輸組合が保有する大型トラックが車列を連ねてロサンゼルスに現地りして支援物資を運んだり瓦礫の運搬などを担っている。
そして彼らのトラックには星条旗が掲げられており、アメリカの復興を願っているのである。
「多くの人が死んだのね…」
女性は呟くように自分の行いのせいで大勢の人間が死んだ事実を受け止めている。
あくまでも事実だ。
だがその事に関して自分を責め立てたりはせず、むしろ元居た異世界に戻れる機会を得られたことに内心嬉しがっていた。
一方、視線をダウンタウンからビルの真下に向けると、そこには周囲を厳重に封鎖して光すら飲み込みそうなほどの暗くてぽっかりとあいた大穴の入り口を隠すように突貫工事で作業を行っている海兵隊の姿があった。
「あれが異世界に通じる大穴か…この中からドラゴンはやってきたのか…」
「そうよ、爆弾を爆発させたことで生じたエネルギーを転換して異世界とこちらの世界を繋ぐ場所になった証よ。あの光すら通さない真黒い場所から先が異世界よ」
ロサンゼルスの高層ビル街にぽっかりと空いた大穴を中国やロシアの軍事衛星から隠すように巨大なテントが設営されている。
更に付け加えるとすれば、この巨大な大穴の下は異世界に通じているのだ。
既に海兵隊の先遣隊が前線基地を建設している。
アメリカ海兵隊武装偵察部隊…通称:フォース・リコーンが先陣を切って異世界の出入口を確保すると工兵隊による急設できるプレハブ施設を異世界で建造させている真っ只中だ。
異世界への通行を楽にする為に、トンネルを作り上げている所でもある。
「先遣隊はかなり重装備で現地入りを果たしているわ、M1エイブラムス戦車に対空戦闘が可能なM3ブラッドレー騎兵戦闘車をクレーンで大穴に釣り上げてから搬入し、そこから随時歩兵も動員しているわ…トンネルが完成すれば大規模な部隊を沢山送り込めるわ」
「まさに橋頭堡ってわけか…あの大穴が…」
「ええ、あの黒い部分こそが異世界への転移に接続している状況を示していると言っても過言ではないわ。それを証明したのは70年以上昔だけど、当時の合衆国の政権はこのことをトップシークレットにして厳重な緘口令を敷いたわ。おかげで真実を知っている人はもう数える程度しかいないわ」
「なるほど、その70年前以上前の転移でやってきたのが貴女なのか…」
「そういうことよ、異世界で合衆国の優位性を立たせるためにも私の知識が無ければ合衆国は直ぐに追い出されるわ。アフガニスタンやイラクのように軍を撤退した後で政治的混乱による泥沼化は避けたいでしょう?」
「ああ、もうあのような失敗は二度と御免だね…」
異世界人として真っ当な言葉であった。
実際問題として、アフガニスタンやイラクで作られた親米政権の信頼度が低いのは米軍の占領統治政策が太平洋戦争終結後の日本に行った方式を採用したことが原因として挙げられる。
米国による日本占領政策では単一民族・単一言語を主体とする日本民族は米国にとって最も統治しやすかった。
しかし、アフガニスタンやイラクは単一民族や単一言語ではない。
これらの国々は部族社会であり、また民族や宗教も各地で異なっていたのだ。
イラクではフセイン政権が打倒されたあとに樹立された親米政権が少数派を弾圧するなどしたために政権不信とクルド人自治区の反乱、それに合わせて発生したイスラム過激派組織の流入によって国内が内戦状態となり、数十万人の戦死者と数百万人の難民が欧米各地に逃げてきたのは記憶に新しいだろう。
つまるところ、米国による統治が成功したのは日本ぐらいなのだ。
異世界にも様々な部族や民族、宗教がある。
これらを蔑ろにした場合、米軍は異世界での支持を失う。
最も、現世界において世界最大規模の軍隊と経済力を誇るアメリカ合衆国が本気を出せば、これらの三つの要素を吹き飛ばして跡形もなく自分達の都合が良い歴史を作り上げるだろう。




