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炎上、ロサンゼルス4

「化け物めぇ!戦車の装甲すら撃ち破る劣化ウラン弾でも喰らいやがれ!アライ1、交戦エンゲージ!!A-10の底力を見せつけてやれ!いいか、腹部でなく頭を目掛けて撃つんだ!恐らくあの部分は腹部よりも装甲が薄い筈だ!」


「アライ2、了解ラジャー!俺たちアメリカ軍の力を見せてやろうぜ!」


「オアシス隊の仇を討ってやる!」


「いくぞぉぉぉぉぉぉ!!」


アライ隊はドラゴンの腹部は強力な装甲で守られていると判断し、頭部を目掛けて30ミリ機関砲で集中的に攻撃を開始した。


低速ながらも安定した目視射撃性能を誇る攻撃機であり、アメリカ軍の中でも最も近接航空支援を行っているベストセラー機でもあるA-10から劣化ウラン弾を使用した30ミリ機関砲が火を噴いた。

アライ隊の攻撃はドラゴンに少なからぬダメージを与えた。


―GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!


機関砲から離れたうちの一発が左目を貫通したらしく、それによってドラゴンは大音量の雄叫びをあげて暴れまわった。

方向なんかも気にせずに戦闘機すらも燃やし尽くすほどの火炎を噴き上げていく。


「ドラゴンの左目に直撃した模様!やはり少なからず損傷を与えたぞ!」


「ざまあみろ!次は右目を潰してやれ!」


「こいつは不死身じゃねぇ、俺たちでも倒せるかもしれない…いくぞ!A-10の装甲ならドラゴンの炎にも耐えきれるはずだ!もう一度旋回して攻撃を仕掛けるぞ!」


アライ隊は旋回して再度攻撃を行う。

頭部への攻撃が腹部よりも有効的な攻撃手段であると判断したのだ。


早期警戒管制機カタルシスもデータを受け取ってから新たな攻撃箇所の識別データをオアシス隊にもアップデートを行い、オアシス隊に対してアライ隊が機関砲による攻撃をした後に頭部目掛けてAIM-120を撃ち込むように指示を出した。


「オアシス隊、アライ隊が頭部への攻撃を行ったらドラゴンに対して再びAIM-120を撃ち込め、HUDハッドに新たな識別データを転送する!」


「こちらオアシス1、了解した。アライ隊に続いて攻撃を開始する」


再びアライ隊がドラゴンの頭部目掛けて機関砲を放つ。

生身の人間に30ミリ機関砲弾が当たれば確実にミンチになる代物だ。

分厚い装甲に守られている筈の戦車でもA-10の機関砲の前には無力になる。


かのドイツ空軍のエースパイロットをアドバイザーに招き入れて設計されたとされるA-10の攻撃力は伊達ではない。

むしろ、そのA-10の攻撃に耐えているドラゴンのほうが尋常ではないのかもしれない。


「くそっ、まだ攻撃に耐えているぞ…なんて生命力なんだ…」


「こんなに頑丈な生物は見たことがない…本当にこいつは何なんだ…?」


「アライ隊、間もなくオアシス隊がありったけのミサイルをドラゴンにぶち込む、直ぐに離れるんだ」


「了解した、これより一旦離脱する」


ドラゴンの頭部に機関砲を浴びせたアライ隊が離れると同時に、オアシス隊は編隊を組みなおして頭部へのミサイルによる飽和攻撃に踏み切った。


「いいか、全部のミサイルをぶち込んで行け!オアシス3や5の仇を取るんだ!オアシス1、フォックス2!」


「フォックス2!フォックス2!」


「ミサイル全弾発射!!!」


編隊飛行をしているオアシス隊のF-16から一斉にミサイルが放たれる。

それも全弾。

出し惜しんでいる場合ではない。


火力の集中攻撃によってドラゴンの頭を吹き飛ばすつもりなのだ。

いくつものミサイルがドラゴンに迫っていく。

その数、およそ70発。


ドラゴンは自分の左目を失わせたアライ隊に対して攻撃をしており、ミサイルの存在に気が付いていない。

A-10の分厚い装甲によってドラゴンによる炎を喰らっても機体に乗っているパイロットは無事であった。


ようやく、自分に向かってミサイルが飛んできていると認識したときには、オアシス1の放ったミサイルがドラゴンの鼻にめり込む寸前の所であった。


爆発。

爆発、爆発、爆発。

ドラゴンの顔がみるみるうちに変形していく。

20発以上のミサイルを腹部に喰らってもびくともしない筈のドラゴンが、頭部にミサイルを喰らっただけでへこんでいく。


それもまだまだ飛来しているミサイルの半分にも満たない。

40発前後から顔と首の部分から緑色の体液が勢いよく噴出し始めた。

とうとうドラゴンの首の皮が破けたようだ。


―GYAAAA!GYAAAAAAAAAAAA!!!!


悲鳴のような甲高い咆哮ほうこうを上げながらドラゴンの翼からも体液が飛び散っていく。

身体が耐えきれなくなったのだろう。

60発目のミサイルが着弾すると同時に、ドラゴンは意識を失ったように頭から地上に落下しはじめた。


そして、ドラゴンの巨体はロサンゼルスでも二番目に高い高層ビル「ライブラリータワー」目掛けて落ちていく。


「やったぞ!!!ドラゴンが墜ちた!!!繰り返す、ドラゴンを撃墜した!!!」


「よっしゃ!俺たちはやったんだ!!!」


「見ろ、ドラゴンがライブラリータワーに突き刺さっているぞ!!!」


ライブラリータワーのヘリポートを含めた最上階の73階から68階までの5階部分をドラゴンの巨体によって突き抜けて落ちた。


ライブラリータワーはドラゴンの死骸から滲みでている体液によって塗装されていく。

その光景を遠くから見れば、ライブラリータワーが聖剣となってドラゴンを突き刺されているようにも見える。


ドラゴンの出現から1時間後でドラゴンは空軍の活躍によって討伐が完了し、トーマス大統領が望んでいた異世界への開拓の『大義名分』を得ることが出来た。

しかしその代償はあまりにも大きいものであった。


ドラゴンの攻撃による死者・行方不明者14万3000人以上。


避難者(一時的なものを含めて)50万人以上。


焼失及び損壊建築物…5500棟。


経済損失額…3000億ドル以上。


被害の大きかったダウンタウン及び高層ビル街への完全な復旧の見通しは立たず。


一連のドラゴンによる攻撃は9・11同時多発テロ事件を上回る合衆国史上始まって以来の最悪の被害をもたらした。

後に『6・1ロサンゼルス襲撃事件』として世界に語り継がれる衝撃的な事件として、連日連夜スクープ映像が映し出されることとなった。

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