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異世界合衆国領レーオー 1

20XX年6月15日

ホワイトハウスが世界に向けて重大な発表を行うと宣言した。

正午丁度に行うこともあってか、全世界がその様子を見るためにテレビやインターネット中継に釘付けとなっている。

この時期に行う重大な発表といえば異世界以外のことは考えられない。


二週間前にロサンゼルスを襲ったドラゴンによる襲撃事件の後、アメリカはロサンゼルスを封鎖して徹底した救助活動と調査を行うことを宣言して諸外国だけでなく自国の報道機関をも締めだして情報規制を行った。

リベラル派のメディアは挙ってトーマス大統領による独断専行であると非難したが、大統領へのその際にトーマス大統領は自慢の演説で大統領会見の際に彼らの意見に対して徹底的に反論した。


「トーマス大統領、なぜロサンゼルスにメディアを入れないのですか!現場で起こっている惨事を伝えるべき我々を妨害するのは報道の自由を侵害していますよ!」


「報道の自由か…成程、では君たちマスメディアはドラゴンの炎で焼かれて苦しんだ末に亡くなった遺族の方に”今どんな気持ちですか?”と質問するのも自由に当てはまるのか?君たちはいいかもしれないが、遺族からしてみればたまったもんじゃない。自分の妻が、恋人が、子供が…黒焦げに焼かれて想像を絶するほどに苦しんだ光景を目の当たりにした人に対しての”侮辱”も孕んでいるだろうが!君のような記者を災害現場に入れたらそうした心許ないコメントばかり遺族に浴びせるだろう、だから私は私が行使できる大統領権限を使って規制しただけに過ぎない」


「ロシアや中国といった諸外国からはアメリカが救助活動を拒んでいると非難されていますが、それに対してはどうお答えするつもりですか!」


「ロシアや中国チャイナは崩壊したセキュリティー会社の機密情報を盗み出すかもしれない。実際に彼らは民主党議員のメール情報を盗んでいたし、中国に至ってはそうした情報をどさくさに紛れて盗んだ挙句、よく似たものをコピーして市場に流すことが得意だ。情報機密の観点から、災害救助隊は同盟国である日本やカナダ、イギリスなどに限定させてもらっている。無論、支援物資は有難く使わせて貰っているがね」


1を言われたら10で言い返せ。

トーマス大統領自伝の本「お前が上司になった時の対処法」に書かれている相手がけんか腰に言ってきた時の対策法だ。


相手を正論で封じ、それでも色々と吹っ掛けてくるようであれば相手の弱点を取り上げて容赦なく言葉で叩き潰せ。

トーマス大統領は大統領選挙の時もそうやって党選挙や民主党との対決の際に相手の経歴などを調べて徹底的に叩き潰した。


「こいつは大麻マリファナをやって一回ムショにぶち込まれたことがある犯罪者だ。少なくとも俺はタバコも酒も一切やっていない。そして逮捕歴もない!こいつに比べたら俺は非の打ち所がないほど健全だ!」


「お前は俺のことを差別主義者レイシストだと言っているが、何でもかんでも差別主義者だと罵ったとしてもお前らがイラク新政府の立て直しをしっかりとしなかった上に、無理やり民主化革命を中東で支援したせいでイスラム過激派が世界中に台頭したんだ。イスラム教徒への迫害を強める結果を作った民主党こそ差別主義者だろう!」


「メキシコとの国境の町では常に犯罪が多発している、国境警備隊の殉職率が高いのもメキシコ人の麻薬組織と汚職まみれのメキシコ政府が厄介者をアメリカに押し付けていることが原因だ。おまけに民主党政権は不法移民を送還するどころか保護する法律まで出した。そんなことをするから不法移民が後を絶たないんだ!恥を知れ!」


一見罵声罵倒にも聞こえるが、トーマス大統領の言葉にも一理ある。

コメンテーターとして培ってきた話術と、経済界をのし上がったアメリカンドリームを実現した者だけにトーマス大統領は戦略よりも戦術を重視した。

特に、保守系財界や共和党支持者の多い中部や南部での選挙活動に力を注いで一般市民への支持を広げた。


分かり易い言葉。

分かりやすい主張。

そしてアメリカを再び偉大な国家にするというスローガン。

そうした地道な努力の結果、民主党は大統領選挙で敗北してトーマスが大統領になったのだ。


そんなトーマス大統領が直々に全世界に向けて重大発表を行うこともあり、ホワイトハウス前には大勢の報道陣が詰めかけている。

最もトーマス大統領はリベラル系メディアを嫌っており、記者会見場に入れたのは保守系メディアや大手海外メディアだけであった。


正午丁度。

トーマス大統領が記者たちの前に姿を現した。

いつもよりも上機嫌な表情で歩くトーマス大統領を見た記者たちは「何かトーマス大統領にとってとても良いことが起こったに違いない」と直感で判断する。

そしてその直感は間違いではなかった。

トーマス大統領は記者会見を始めると同時に記者会見場にいる記者たちの度肝を抜く発言を行ったのだ。


「現時刻…西暦20XX年6月15日正午をもってここに公表する。アメリカ合衆国はロサンゼルスに出現し大きな被害をもたらした巨大飛行型巨大生物の出現場所を特定した。その結果、出現場所が現在地球上で確認されている場所でないことが判明し、アメリカ合衆国は世界的権威の科学者などを集めて議論を重ねた結果、ロサンゼルスのある地域が異世界と物理的に接続していると結論付けた」


トーマス大統領は淡々と事実を述べた。

一斉に記者たちがどよめく。

ロサンゼルスに異世界に通じる場所を発見した事。

そして科学的なデータと共に、その場所が確認されている地球上のあらゆる場所でもないことを説明した上で、こうも述べた。

その言葉はもっと各国の政治的・経済的な意味で衝撃的であった。


「また、接続している異世界を捜索しているが現時点において文明圏や知的生命体の存在は確認されていない事と異世界とロサンゼルスが物理的に接していることを鑑みた結果、接続地域が()()()()()()()()()()()()()()()()()となるため、当該地域はアメリカ合衆国の延長線上にある土地である。従って責任を持って()()()()()()()()()()()()として管理することをこの場を持って宣言する」

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