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六十八話 創造神の言葉

 

「いやぁ、ここはいつも綺麗なおねーちゃんがいっぱいいて羨ましいねえ」

「かわる? 俺とかわる? バッツ」

「い、いや、綺麗だけど、みんな怖いから遠慮しとくわ」


 洞窟の外ではまだレイアたちが謎のバトルを繰り広げている。いったいいつまで続くのだろうか。


「で、バッツ。今日やってきたのは、やっぱり例の件?」

「ああ、だいたいの真相はわかったよ。大方、タクミの予想通りだ」


 バッツに依頼して、今回の騒動の原因を調べてもらっていた。

 俺たちがパーティーを組んだ十年前から、すでに始まっていたリックの計画。その全貌がようやく明らかになっていく。


「まずはリックの出生地。古い文献や手記から、蛮族地帯、北方ノースカントリーの出身ということが明らかになった。生まれたのはざっと3000年前、大賢者ヌルハチと同世代だ」


 想像もつかないくらい壮大な同世代。100年くらいは微々たる誤差で済んでしまいそうだ。


「魔王と最初に出会ったのはヌルハチではなくて、リックだった。それが人類と魔族の長い戦いの始まりだったとされている。始まりの勇者リック。北方の伝説にはそう記されていたよ」

「やっぱり、そうだったのか。じゃあ最初の魔王崩壊サタンバーストで、世界を救おうとして、肉体が消滅した勇者って……」

「リックに間違いないだろう。どうやって魔王崩壊サタンバーストを止めて、なぜ肉体が消滅したのかはわからないが、そこからは魔王の精神体のような状態となり、魔装備に変わっていったんだろうな」


 リックがその顛末を語ることはないだろう。

 その頃に、魔王とリックがお互いにどんな感情を持っていたのかは、もう誰にもわからない。


「魔王と勇者、魔族と人類の戦いは、その後も続いていたみたいだが、魔王崩壊サタンバーストの後、明らかに魔王は力を使うことを躊躇い始めた。精神体となってヌルハチの中に入り、破壊衝動も抑えていたんだろう。魔族は人類に押され、主だった主要の魔族、ソロモン72柱の魔族がその頃に全滅している」


 魔王の大迷宮の前に刺さっていた大きな鉄の十字架の数と一致する。やはり、あれは墓標だったんだ。


「それでも、魔族と人類の争いは終わることはなかった。最も多く繁殖していたゴブリンを殲滅しても、古代から君臨していたドラゴンを辺境の地に追いやっても、人類は攻撃の手を休めない。リックは、いや魔王も、再び魔王崩壊サタンバーストが始まることを予見してたはずだ。そして、それがもう誰にも止められないということも」

「だからパーフェクトワールドなんてものを作ろうとしたのか」


 しかし、そこだけが今だによくわからない。


「リックは、パーフェクトワールドは自分で考えたんじゃなくて、この世界が誕生した時から伝わってきた創造神の言葉と言っていた。それって本当のことなのか?」

「すべての痛みを知る、最も弱い人間が我らの王とならなければいけない。そして、その最弱の人間は、我らより強くなければならない」

「それって、アザトースやリックが言っていた……」

「魔王が誕生した一万年前、まだ人類が存在していなかった創世記に、その言葉が世界の中心に刻まれていたらしい」


 え? それって本当にこの世界を作った創造神が書いたの? というか創造神なんて実際に存在するの? 妄想や御伽話じゃなくって?


「魔王本人からの情報だ。魔王以外、誰も存在しない地上に書かれていたんだ。世界を作る時にあらかじめ創造神が書き込んでいたとしか思えねえ」


 全部解決したかと思ってたけど、ちょっと嫌な予感がする。

 も、もう何も起こらないよね?


「創造神なんて信じたくねえが、色々調べているうちに、1人だけ怪しい奴を見つけることができた。最も情報を掴んだんじゃなくて、まったく情報が入ってこなかったんだ。オイラの情報収集から逃れられる奴なんて、この世界に存在すると思うか?」


 た、確かに、バッツにかかれば魔王の情報や黒幕の正体まで丸裸だ。でも一体、怪しい奴って誰なんだろうか。


「オイラはルシア王国から離れて、しばらくソイツのことを調べてみるよ」

「き、気をつけろよ、バッツ。本当に創造神だったら、何があるかわからない」

「はっ、オイラが任務に失敗したことが今まであったか? 心配すんじゃねえよ」


 うん、つい最近、ヨルを見逃して失敗してたよね? 大丈夫かな?


「あっ、そうだ、バッツ、もう一つだけ」

「ん?」

「俺、大武会優勝した時の記憶まったくないんだけど、あれ、最後どうなったのか、わかんない?」


 バッツはその場にいなかった。

 でも参加していたレイアやクロエ、ヌルハチやカルナに聞いても、何があったのか教えてくれない。

 もしかしてバッツなら、どこかで大武会決着の情報を仕入れているんじゃなかろうか。


「ああ、あれか。そういえばいいものをリックから借りてたんだ。ほら、これで全部見ることができるぞ」


 バッツが俺に拳大の大きさの水晶玉を渡してきた。

 なんだか、蛇の目に似た、黒い線が真ん中に一本入っているちょっと不気味な水晶だ。


「千里眼の水晶だ。遥か遠くのものを見たり、過去に起こった出来事を見ることができる魔装備だよ」


 え? これって、リックが俺に過去回想を見せたやつ? ほ、本当に借りて来た? 盗んでないよね?


「大武会のことを思い浮かべて手をかざしてみろ。自分が見たいところから始まるから」


 気づいた時には、そこはもう大武会のクライマックスだった。


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