表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
441/441

三百四十話 僕の代わりに戦ってくれる人

 

「僕とタクミ君はなにが違うんだろ」


 千里眼の水晶で洞窟の様子を伺っている。

 あの地獄のような家事の日々から、タクミ君は解放されていた。サシャやヌルハチ、あのずぼらなロッカですら、タクミ君を手伝っていた。

 ……あのタクミと呼ばれる僕には、ずっと情け容赦なかったのに。


「ソネリオンは、僕の何がダメなんだと思う?」

「……」


 チョビ髭が描かれたシャツに話しかけるが、やはり反応はない。魔剣カルナと同じで、かなり心を通わせないと脳話は出来ないみたいだ。※ ソッちんと呼ばないので返事しないだけです。


「あのタクミ、修行にいくぞ」

「え? ちょっと待ってよ、アリス、朝修行してから、まだ5分もたってないよ。せめて、朝ご飯食べてからに……」

「なにをいうか。あれは早朝の修行、いまからが本番の朝の修行だ。朝食はその後に決まっている」


 なんなのっ、その修行地獄っ!?


「ほ、本当にタクミ君は、こんなに修行してたのっ!? 文字の力だけで十分強いのにっ!!」

「当たり前だ、タクミは文字の力に頼らずとも、己の力のみで戦うため、日々修行に明け暮れていた。寝る間も惜しんで、いや寝てる間もイメージトレーニングをしていると言っていたな」


 うそだよっ、それ絶対騙されてるよっ、絶対ゴロゴロしてただけだよっ!!


「じゃ、じゃあ僕も今日はイメージトレーニングにしようかな。ちょっと身体疲れてるし……」

「却下だ。タクミはそのような泣き言はいっさい吐かなかった。ペナルティとして朝の修行は倍にする」

「ふぇっ!?」


 だ、だめだ。せっかく入れ替わって逃げてきたのに、こっちのほうがさらに地獄じゃないか。


「あ、あの、僕が修行で強くなったらアリスは困るんじゃないかな? タクミ君をやっつけてしまうかもしれないよ?」

「それこそ、ワタシの望むことだ。タクミは敵が強ければ強いほど喜び、それを乗り越えていくことを生き甲斐にしている」


 絶対してないわっ!!


 元が同じなんだから確信できるよ、タクミ君はそんなこと、1ミリだって望んでいないよっ!!


「や、やっぱり入れ替わるのやめて帰ろうかな。すぐバレちゃったし……」


 タクミ君と同じように、髭をはやして小説版に近づけたんだけど、アリスには一目で見破られてしまった。


「当たり前だ。タクミはお前のようにナヨナヨしていない。いつでも宇宙最強のオーラと自信に満ち溢れてる」


 うん、それ勘違いだよ。どうして僕には勘違いされる設定がなくなってるんだ?


「ここから帰るなら、せめてワタシの修行についてこれるぐらい強くなれ。それがタクミの宿敵として最低限の条件だ」

「いやだ、もう最後の戦い、僕の負けでいいよっ。タクミ君と同じようにゴロゴロしていたいよっ」

「タクミは生まれてから一度たりとて、休んだことなどない」

「嘘だぁあぁあぁーーー」


 首根っこをつかまれ、修行の場へと引きずられていく。


「まって、わかった、わかったから自分の足で歩かせてっ」

「昨日もそんなこと言って逃げたじゃないか」

「逃げないっ、約束するっ、神に誓って嘘つかないからっ」

「神って創造神? そんなのに誓ってどうするんだ? とっくにタクミが倒したのに」


 ちがうよっ、アンタが倒したんだよっ ……あれ? なんだ? ちょっとだけ記憶が戻ったような……


「全部、アリスがやってるんだよ。タクミ君は何もしてない。文字の力だって、外部から与えられたもので、タクミ君は一度も強くなんてなってないんだ」


 そうだ、僕がずっとそうだったんだ。たぶん「あのお方」なんて言われてランキング1位になってるのも、きっと他の誰かが頑張ったおかげなんだ。


「ふっ、お前はタクミと同じ姿なのに何もわかってない。むしろタクミは自分の手柄をワタシに譲っていたのだ。魔王も創造神も大聖霊も全部タクミ1人で倒してきたのに、ワタシが倒したように見せてくれていたんだよ」


 うん、もう洗脳レベルの勘違いだよ。もう何を言っても通じないよ。


「……どこまでが僕と同じだったんだろ? 僕にはもう、僕の代わりに戦ってくれる人はいないのかな?」


 ざざっ、と記憶にノイズが走る。


 女の子? 顔がノイズでわからない。名前も思い出せない。でも、それがアリスじゃないのだけはわかった。


 不意に視線を感じて、山頂に目を向ける。


 それはまるでノイズの向こう側のように。

 紅と蒼の双剣を持った女の子が僕を見て微笑んだ。





コミックス4巻が2025年12月25日に少年チャンピオンコミックスから発売されました! 小説版とはまた違ったオリジナル展開になりますので、ぜひぜひお手に取ってみて下さい。よろしくお願い致します。5巻へと続く連載も飽秋田書店様のチャンピオンクロスで絶賛再開中です! 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ