三百三十九話 ※ 一致団結しました
「あのタクみんがおかしいでござる」
あのタクみんが、ふもとの街に買い物に出かけた隙に王女と大賢者と拙者の3人で集まって密談する。
※ ロッカ、サシャ、ヌルハチの3人は、タクミの味方ですが「あのタクミ」の弱点を調べるために仲間になったフリをしています。タクミと「あのタクミ」が入れ替わってることも知りません。
「そうね、ここ数日、明らかに家事のクオリティが下がってるわ。細かいところでミスも多い」
「もしかして、拙者たちが実はあのタクみんではなく、タクみんの味方ということに気がついたのでござるか?」
あのタクみんの弱点を探るため、家事やマッサージの量を増やしたことに気付き、わざと手を抜いているのでござろうか。
「いや、それは考えられぬの。気づいたにしては行動がお粗末すぎる。あれはただ、日々の家事に疲れておるだけじゃの」
「ふむ、ヌルハちぃになって監視している大賢者がいうなら間違いないでござるな、前みたいに家事を分担してあげるでござるか?」
完全に潰れてしまっては、弱点を探ることもできなくなるでござる。
「いえ、ここはいっそ、さらに家事を増やして完全に潰してしまったほうがいいんじゃない? もう弱点とか関係なしに、疲労で弱体化するんじゃない?」
「お、おお、さすがいき遅れ王女、恐ろしいことを考えるでござるな」
トーナメントが終わる頃までに、ひたすらこき使えば、あのタクみんはもはや戦える状態ではなくなってるはず、タクみんの勝利は間違いないでござる。
「それなら黒龍の王クロエや生贄皇后のリンデンたちを招いて大規模なパーティーを開いてみるのはどうじゃ? 料理だけでも相当な負担になるはずじゃ」
「ドラゴンと生贄たちを合わせると100を超えるでござるよ、あのタクみん、死んでしまうのではござらんか?」
あ、2人とも、それも仕方ないみたいな顔をしているでござる。確かに最終的にはどちらかしか生き残れないのでござるが……あのタクみん、ちょっとかわいそうでござるな。
「拙者、なんだか最近、あのタクみんがタクみんのように思えてきたのでござるよ。姿形が似てるだけではなく、なんだか性格も似てきたような、そんな気がするのでござる」※ タクみんです。
「ええ、そうね。私もそれは感じていたわ。もしかしたら最初のほうは無理して頑張ってたんじゃないかしら」
「ふむ、ヌルハチもたまに本物と錯覚してしまったわ。じゃが、ここで情に流されてはいかんぞ。我らのタクミは1人しかおらんのじゃからな」※ 本物です。
3人同時にこくり、と頷く。心を鬼にしてあのタクみん抹殺計画は着々と進行していったのでござる。
「ぜえぜえ、帰ってきたよ。モウ乳10リットルに米俵10キロ、ロッカのおやつも買ってきたよ」
「遅いでござるよ。往復1時間以内と言ったでござろう」
「む、無理だよっ、ワープできないんだからっ」
「ほんとでござるか? 何か得意技を隠してるのではござらんか?」
限界まで追い詰めれば何か能力に目覚めるのでは、と思ったでござるが、まったくその気配がないでござる。
「な、ないよ。なんにも使えないよ。料理以外は、ゲームがちょっと得意なだけかな」
「そんなのは聞いてないでござるよっ」
むぅ、見れば見るほど、あのタクみんは雑魚でござるな。ほっといてもタクみんが圧勝しそうな気がするのでござるが……
「まあいいでござる。明日、クロエ率いるドラゴンの仲間たちと、リンデン率いる生贄仲間たちの合同パーティーがあるでござる。ざっ、と100人分の料理を用意するでござるよ」
「え」
僕が? 1人で? みたいに自らを指さしている。
「もちろんでござる。ちゃんとテーブルや椅子も用意して最高のおもてなしをするでござるよ」
「あ、あわわわわわ」
本当に、あわわわ、と口に出した人間を初めて見たでござる。これで、あのタクみんは、心身共にボロボロになるはずでござるが……
「ちょ、ちょっとくらいなら手伝ってあげてもよいでござるよ」
「ほ、ほんとかっ、ありがとう、さすがロッカっ、大好きだよっ!!」
ずきゅーーん、と心臓になにかが撃ち込まれた音が鳴り響く。
「ん?」
「な、なんでもないでござるよっ」
くぅ、捨てられた子犬のような瞳で見つめるから、ついつい気持ちがゆらいでしまったでござる。こんなことでは本物のタクみんに申し訳が立たないでござるっ。※ 目の前にいます。
「まあ、これくらいのお手伝いなら、みんなも許してくれるでござるよ」
とりあえず、100人分の椅子だけは用意してあげるでござる。後は1人で……ん?
「な、なにをしておるのでござるか、大賢者。転移魔法でテーブルを運んでいるのではっ」
「う、うむ、まあ、さすがにあの仕事量では無理をいいすぎたか、と思っての。少しだけ手伝ってあげることにしたのじゃ」
うん、絶対捨てられ子犬フェイスに騙されたでござるな。
「ま、まさか、いき遅れ王女は手伝ってないでござるよな?」
「サシャなら大丈夫じゃろ。ああみえて断崖の王女と呼ばれるほどの……」
「タクミ〜、お芋はこれくらい煮込めばいい? あ、サラダの下ごしらえはやっておいたわよ」
「…………」
※ みんなで助け合いパーティーは無事終了しました。




