三百三十話 あのタクミ
新年あけましておめでとうございます。
更新が遅れてしまい申し訳ございません。
本年も「うちの弟子」をよろしくお願い致します。
『え? どういうことなん? 『あのお方』が漫画版? タッくん、何いうてるん?』
「うん、タッくん、何を言ってるの?」
『あのお方』がカルナと一緒に首をかしげている。くそ、なんで俺がコイツにまで説明しなきゃいけないんだっ。あとタッくんって呼ぶな。
「大雑把に説明すると、俺たちのいる世界はアザトースが作ったゲームのような世界だ。だけど、そのアザトースの世界ですら、作家という1人の人間が作り出した小説の世界なんだ」
『上には上がおるんやな』
「うん、その通りだ。その作家もまた、別の世界の誰かが作った世界の住人で、世界はどこまでも縦に連なっていく。それが無限界層と呼ばれる、この宇宙全体の構造だ」
そして今、俺たちはその世界をかけて無限界層一桁トーナメントで戦っている。
「だけど『あのお方』がいる世界は、その界層には属していない。縦ではなく横。俺たちの世界は作家と呼ばれる男が全ての物語を作っていたが、それを丸々、誰かが漫画の世界として作り直したんだ」
「ちょっと待ってくれ、どうして僕の世界が漫画版ってわかったんだ?」
「俺の部屋に誰かが漫画を置いていった。最初は3冊。最近、また最新刊が出たのか、4冊目も置かれていた。その絵柄が今のお前とまったく一緒だったんだよ」※
そこには魔王崩壊が解決するまでのエピソードが描かれてあった。非常に面白く、自分が主人公であるにも関わらず楽しませてもらったが……
「俺たちの小説版と漫画版のエピソードは変わっていた。小説版の世界ではリックがラスボスだったが、漫画版では魔王がラスボスになり、結末も大きく変わっている」
『そうですね。そこではタクミ様がタクミ村にいくエピソードもなくなって、私も登場していませんでした』
「え? そうなの? だからソッちん、『あのお方』側につこうとしたの?」
『そうですね、漫画版にも出させてもらうのを条件に、ネレスさんと取り引きをしました』
やはり、ネレスは『あのお方』と大きく関わっている。最も『あのお方』のほうは、何も覚えていないようだが……
「えっと、よくわからないけど、僕と君は元は同じだったってことだよね? じゃあ敵じゃなく、仲良くできるってことなのかな?」
「そうだったらいいけどね」
小説版と漫画版の世界は共有できない。
すでに小説版の世界は漫画版の影響で書き換えられている。
漫画版に影響されて小説版における第二部のラストは、漫画版のものに差し代わっていた。
俺もだんだんとリックがラスボスだったことや、大草原での戦いを忘れかけている。
「たぶん、最後はどちらかの世界しか残らない。無限界層が縦にしか連なってないのは、横にできたパラレルワールドがこの漫画版以外に存在しないからだ。より優れた平行世界しか残らない仕組みになっているんだよ」
「ひぃ、そんな残酷設定なのっ」
頭を抱える『あのお方』。どう見ても隙だらけで、簡単に倒せてしまいそうだけど……
『タッくんと同じでまったく力を感じひん。でも不思議と何をしても倒せる気がせえへんわ』
その能力はいまだ未知数。
主人公補正というやつだろうか。
勘違いや文字の力とは、また違った進化を遂げているように思えるが、それがなんなのか全くわからない。
魔法少女セラキュアの器にカルナを入れて、人格を変えたのも全て計算だったのなら、俺の仲間たちが全員、敵に回ることもあるってことだ。
「まあ、とりあえず今は戦わない。俺が無限界層一桁トーナメントを勝ち上がって優勝するまでは、仲良くしようじゃないか」
「えっ、いいのっ!? うわぁ、やっぱり僕は優しいなぁ、なんだか僕よりかっこよくて、ナイスガイって感じだよっ」
あんまり褒めないで。そもそも、真の目的は『あのお方』と戦うまでに、その能力を探って丸裸にするためなんだから。
「よかったら、うちに来ないか? ここは1人で寂しいだろう?」
「あ、ありがとう。ぜひそうさせてもらうよ」
『うわぁ、タッくん、どす黒いわぁ、うち、向こうの純粋なタッくん、応援してしまいそうやわぁ』
ちょっ、カルナっ、脳直で喋っても『あのお方』には聞こえちゃうだろっ。
「ん? どうかしたの?」
「え、いや、なんでもないよ、てか聞こえてない?」
「???」
『あのお方』には魔剣になったカルナの声は聞こえていない。いやそもそも、漫画版の世界にいた『あのお方』以外の登場人物は何処へ行ってしまったのか?
「よろしくね、えっと、タクミ君って呼んでもいいのかな?」
「うん、俺はあのタクミと呼ばせてもらうよ」
俺が名付けた愛称に漫画版の俺は、ちょっと嬉しそうに微笑んだ。
※ タクミが部屋で漫画を発見するエピソードは、第十部 序章 「三百十九話 タッチ」に載ってます。よければご覧になってみて下さい。
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