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三百二十四話 無数✖️無限

 

 ロッカの頭に刺さった魔剣にカルナが入っていないなら、一体どこにいったのか?


 決まっている。怪しい奴はただ一人だ。


「ちょっと……」

「ん? どうしたのでござるか? タクみん?」

「ちょっと行ってくる。ピンクでなんとかドアを使って」


 黒塗りの辞書(ブラックアウト)の制約などにかまっていられない。

 一刻も早く、カルナを取り戻さないといけない。

 今後、どこにでもいけるドアを使えなくなるのはかなりの痛手だが、今はそれどころではなかった。


「おや、タクミ様、なにかお忘れ物ですか?」


 ノブを回して扉を開けると、タクミ村の武器屋に繋がっていた。


「ああ、ここにカルナがお邪魔しているはずだが……」

「へ? ま、まさか、カルナさんの魂が抜けたのですか?」


 わざとらしい。どうせ、お前が絡んでいるんだろうが。カルナと真逆の白い聖剣を送り込んで、俺とカルナが揉めるように仕組んだくせにっ!


「とぼけるなよ、ソネリオン。全部お前がやったんだろ? カルナはどこだ? まさか、もう最終破壊兵器の中に入れたんじゃないだろうな」

「い、いえいえいえいえ、違いますよっ、そういう計画を練ってはいたのですが、まだ第一段階でして……これからもっと揺さぶりをかけるはずだったのですよ。……本当にカルナさん、いなくなったのですか?」


 このチョビ髭っ、あくまでシラを切るつもりかっ。


「そっちがその気ならそれでいい。今日は引かないぞ。たとえすべての文字を使い切ったとしてもカルナは返してもらう」

「待ってくださいっ、疑うなら武器庫を全部見て下さいっ、最終破壊兵器すらまだ完成していませんっ、そんなことより、一刻も早くカルナさんの行方を追わないとっ!!」


 あ、あれ? ソネリオン本当に焦ってないか?

 長い付き合いだが、こんなに焦ってるチョビ髭を初めて見る。ソッちんと呼ばなくても無視しないし。


「ほ、本当に知らないのか?」

「はい、文字の力でもなんでも使って確かめて下さい。私は私で、カルナさんの位置を探ってみますっ」


 嘘か本当か見抜くのなど、文字を使えば簡単にできる。だが、そんなことする必要がないほどに、必死のソネリオンからは、全く嘘の気配がない。


「じゃあ、どこに? カルナはどこにいったんだ?」

「喋らないでっ、気が散りますっ、探る方法がないなら黙ってて下さいっ!」

「は、はい、すみません」


 カルナを取り戻すため、チョビ髭と一戦交えるつもりだったが、思わぬ事態になってしまった。

 本当に完全に行方不明じゃないかっ。どこにいったんだ、カルナはっ!?


「この世界にまったく気配がありません……まさか別界層? いや、それでも微かな気配は感じるはずです。それすら感じないということは……」

「ど、どういうことだ?」

「黙ってろ、といってるでしょうがっ!!」

「ご、ごめんなさぁいっ!!」


 チョビ髭の迫力に思わず後ずさる。


「はぁはぁはぁ、有り得ません。完全にカルナさんの気配はなくなっています。魂が消滅したか、あるいは……」

「……まさかっ、屋根裏宇宙バックヤードコスモかっ!?」


 ソネリオンの感知が届かないのは、もはやそこしか存在しない。しかし、一体カルナはどうやって?


「『あのお方』が呼び寄せたのか、カルナさん自身で向かったのか、はわかりません。ただ、今の私たちには手の届かない場所にいる、ということです」


 何故だ? 

『あのお方』に魔剣カルナが必要なのか?

 いや、カルナが俺に不信感を持っていたなら、たまたま家出した先が屋根裏宇宙バックヤードコスモで……いやいやいや、ないないない。


「俺が見た『あのお方』は屋根裏宇宙バックヤードコスモから何かできるような状態じゃなかった。カルナは自分で向かっていったんだ。魔剣から抜け出して……」

「無限に加速した時の果てにある誰も辿り着けない時間の監獄に、カルナさん単身で?」

「カルナはリンに時間魔法を教えてもらってた」


 家出なんかじゃない。そこまでして『あのお方』に会いに行く理由はただ一つだ。


「倒しにいったんだ、カルナは。たった1人で『あのお方』を」


 自分の存在意義を求めて。ずっと俺の側にいるために。


「ふぅ、それはかなり予想外ですね。侮っていましたよ、あなた達の絆を。帰ってきたら謝罪しなくてはいけませんね、カルナさんに」


 ソネリオンが武器庫の中から、物々しい魔装備を取り出して用意している。


「いいのか? お前は『あのお方』側なんだろ?」

「ええ、それでも私は魔装備を愛していますから」


 屋根裏宇宙バックヤードコスモまでカルナを迎えに行く。敵となり、戦うはずだったチョビ髭をたずさえて。


「レイア」

「はい、最大限までカットしてます。それでもまだ少し届いていません」


 まだ出会うには早過ぎるかもしれない。

 でも、カルナがそこにいるなら行くしかないんだ。


「大丈夫、あとは俺たちで」


 無数の魔装備と無限の文字が融合される。


 すべての時間を加速させ、遥かな未来をぶっ飛ばす。

 誰も辿り着けなかった屋根裏宇宙に、俺とチョビ髭が突入した。



コミックス4巻が、2025年12月25日に少年チャンピオンコミックスから発売されます! 小説版とはまた違ったオリジナル展開になりますので、ぜひぜひお手に取ってみて下さい。よろしくお願い致します。

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