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三百二十話 思ってたのと違う

 

『いやぁ、スパイと殺し屋の娘がエスパーやなんて、偽りの家族やのに最強やな』


 え? それ、そんな漫画だったけ?


「ほんと、びっくりしたでござる。頭がチェーンソーになるなんて想定外でござるよ」


 うん、もう他の漫画よんでるよね。しかも2人とも別々の漫画よんでるよね。いつまで続くのコミックフェスティバル。


「そういえばカルナはメンテナンスしてきたんだよな。あんまり見た目変わってないけど」

「はい、タクみん、ゼロ点でござる」

「へ?」

「女子がモデルチェンジしてきたのでござるっ! 変化に素早く気付いてとにかく褒めないといけないでござるよっ!!」


 う、うん、なんか髪型とかネイル変えてきたみたいなことになってるけど、ちょっと違うよね?


「あ、ああ、うん、カルナ、(さや)が黒光りしててカッコいいよ」

『今回、鞘は変わってへん。メンテナンスしたんは刀身とグリップのとこや』

「そ、そうだよねっ、いやぁ、鞘に隠れてても輝きが隠せないないよっ、惚れ惚れするなぁ」

『なんかタッくん、適当言うてない?』

「そ、そんなことないよっ、心の底から激しく思ってるよっ、ビューティほーだよっ! いやぁ、ソネリオンには感謝しないといけないなっ」


 なんて大変なんだ。女子のモデルチェンジ。


『そういえばソネリオン、なんか新しい魔装備入荷したって言うてたで。良かったら見に来てほしいって』

「いまのタクみんは文字の力で武器くらい簡単に作れるでござるよ。カルちんもいるし、別にそんなのいらないでござるな」


 いや、今は文字の力は制限されているし、優秀な魔装備なら死ぬほどゲットしたい。


「ま、まあ、確かにそんなにいらないけど、ソネリオンにはいつもお世話になってるし、挨拶がてら見に行ってみようかなぁ」


 あ、あれ? 自然に振る舞ったのに、2人がジト目で見つめてくるぞ。


『怪しいな、タッくん。浮気の気配が漂ってるで』

「スケベでござるか? またスケベ猛省中でござるのかっ!?」

「ちがうよっ、だいたい俺、魔装備に欲情しないよっ」

『え? タッくん、うちに欲情せえへんの?』


 やめてっ、どう答えたらいいかわからない質問しないでっ!


「と、とにかく、ちょっと見てくるだけだからっ、単なる挨拶だからっ、2人とも漫画読んでゆっくりしててっ!」


 逃げるように散らかった部屋を出て麓の村へ向かう。

 文字の力は使えないので徒歩でいくしかなかった。



「これはこれは、こんなに早く来ていただけるとは、やっぱりタクミ様の1番のパートナーは私ということで間違いありませんね」


 いい年したチョビ髭が頬を赤らめている。いつもなら激しくツッコミを入れるとこだが、一気に山を下って来たので、そんな体力は残っていない。


「悪いけど、あまり時間がないんだ。すぐに新しい魔装備を見せてくれないか、ソネリオン」

「……」

「み、見せてくれないか、ソッちん」

「かしこまりました、タクミ様」※1


 つ、疲れる。これで魔盾ビッグボムみたいなハズレ装備だったらタダじゃおかないぞ。※2


「お待たせ致しました、タクミ様」


 店の奥に一旦下がったソネリオンが、ガラガラと大きな台車を引いて戻ってくる。

 漆黒の布をかけられているので、どんなものなのかわからないが、これほど大きな魔装備は今までに見たことがない。


「これは武器なのか? ソネリオン」

「……」

「こ、これは武器なのか? ソッちん」


 シリアスなシーンなのにしつこいなっ。


「はい、タクミ様、この魔装備は今までのものとは次元が違います。最終破壊兵器とでもいいましょうか、使い方によっては、この世界そのものがなくなってしまいます」


 うん、思ってたのと違う。そんなの危なすぎて使えないから。


「ちょっとそういうのは望んでないんだけど……」

「それは意外ですね。現在タクミ様は界層を超えた戦いに身を投じておられるはず。敵の世界ごと破壊する兵器をお持ちなら、この先、かなり有利に戦えるのではございませんか?」

「い、いや、そうだけど。そんな敵の世界ごと攻撃するなんて怖いこと考えてないよっ」

「トーナメントに負ければ、どのみち相手の世界は消滅してしまうのに?」


 ゴゴゴゴゴ、とソネリオンのあたりから不気味な効果音が聞こえてくる。それは漆黒に覆われた魔装備から発せられているのか、それともソネリオン自体が放っているのか。


「なんで、お前はそんなことまで知ってるんだ?」


 球体王まんまるが定めたルールはトーナメントの出場者にしか知らされていないはずだ。

 ただの魔族のはずだった。

 魔装備を愛し、魔装備に愛された、ちょっとお茶目な武器屋のチョビ髭だと思っていた。だけど、この男は……


「お前も『あのお方』側の登場人物か。ソネリオン」


 さすがに今回ばかりはソッちんと呼ぶことは出来なかった。



※1 ソッチン呼びエピソードはたくさんありますが、その始まりは、第四部 転章 「百三十七話 武器商人の小さなお願い」に載っています。ぜひご覧になってみてください。


※2 魔盾ビックボムのエピソードは、第一部 四章 「二十三話 街の名は」に載っています。ぜひご覧になってみてください。

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